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2010年3月 2日 (火)

すべての議論の礎に:未来思考-10年先を読む「統計力」

著者の神永正博氏の本を読むのは、「学力低下は錯覚である」「不透明な時代を見抜く「統計思考力」」に続き、これで3冊目である。

今回の「未来思考」を含め、いずれの著書においても一貫しているのは、「データに立脚する」ということだ。どこのどういうデータに基づいたものか、どの本や論文の考えに依るものか、がきちんと明示してある。

本書は未来に関わる三つのテーマについて論じている。

  1. 少子化と結婚
  2. 都市と高齢化
  3. 仕事と経済

いずれも、驚くような結論は出てこない。平凡といえば平凡である。しかし、その平凡な未来像を、どれだけ確信をもって認識しているか自信がない人、その未来を前にして何ができるのかを考えたい人には、絶対にお薦めしたい。

 

プロローグで、著者はこう書いている。

本書は、議論のベースキャンプであることを目指して書かれています。日本の置かれている現状とその未来について、できるだけ確実な線をまとめました。奇抜で面白いけれど制度の低い予測の代わりに、地味でもできるだけ確度の高い予測を積み上げています。私は、心地よい嘘を聞かされるより、つらくても事実を知ることを選びます。事実を認めなければ、確かな一歩を踏み出すことはできないからです。

そう、ここには、非常に確度の高い未来が、しかも嘘のない形で、書かれている。 「すでに起こった未来」が、とても分かりやすく書かれている。

著者の「嘘のなさ」は2点ある。一つは、前段にも書いた、基礎となる資料やデータをきちんと明示しているところ。もう一つは、各分野の専門家の査読を受けているところである。たかだか(というと失礼だが)1,680円のソフトカバーの書籍で査読を依頼するところに著者の誠実さがあり、この本の信頼性がある。

議論のベースキャンプはできた。加えて著者は最後に、議論の心得まで示してくれている。

本書を書きながら思ったことは、「みんなが問題と言っていることは、本当に問題なのだろうか?」ということです。
(中略)
問題を考えるときの最大の罠は、問題にすべきでないことを問題にしてしまうこと、そして、問題にすべきことを問題にしないことにあるのです。

本書の内容ももちろんお薦めなのだが、何よりも議論に対する著者の態度をお薦めしたい。

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コメント

書評&RTありがとうございました! 3冊も読んでくださったんですね。査読はご協力いただいた先生方に感謝です。勢いで書いた方が読み物としては面白いのかもしれませんが、そういうものばかりだと、何が正しいのかわからなくなってしまうような気がしています。アクチュアリーのことをよく知らないので、いろいろ勉強させてください。

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