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2010年3月20日 (土)

アクチュアリー採用(する側の気持ち)-独断と偏見

[2010.3.21 質問追加]

(アクチュアリーの就活・転活については@actuary_mathさんのブログエントリも参考にして下さい。)

アクチュアリーとしての就活をする方々にとっては、「いったい会社は何を見ているのか?」ということがすごく気になっていると思う。そこで、自分の経験をもとに、アクチュアリー採用に特徴的ないくつかの点をQ&A形式でコメントする。

※当然ながら、これは自分の経験にもとづくものなので、あまり一般化しすぎないように。会社や面接官によって全然違うことがある。

Q. [追記]そもそもアクチュアリー採用って、何が違う?

A. 基本的に普通の採用と同じ。数学の試験を追加でするぐらい。数学の試験→(アクチュアリーによる)面接→(人事部による)面接、というのが一般的か。さらに(どのステップかはまちまちだが)SPIをやるところもある。

Q. アクチュアリー採用者向けに行う数学の試験は、何点ぐらい取れればいいか?

A. 会社によって違うだろうが、あらかじめ足切りを決めておくことはないと思う。不思議なもので、点数分布を作るとだいたい高い集団と低い集団の二つの山ができる。点の低い集団はその時点でアクチュアリーには向いていないと判断してさようなら。ボーダーラインの人間を切り捨てることは基本的になく、幅広めに面接する。

Q. そうは言っても、試験が難しすぎて全然自信がないのだが…

A. あまり気に病む必要なし。当然ながら採用時の数学の問題は、社内の人間が作る。問題作成者は過去に数学の試験を同じように受け、そこそこの点数を取った人間なので、彼/彼女らが自分を基準に難易度を設定する限り、問題は毎年難しくなっていく。

Q. [追記]面接では何を聞く?

A. 普通に「志望動機」「この会社を志望する理由」「アクチュアリーを志望する理由」「学生時代に打ち込んだこと」「自己PRをして下さい」「あなたの長所・短所」などなど。私は「大学で専攻している内容をシロウトにも分かるように説明して下さい」という質問をよくしていた。アクチュアリーになってからも非アクチュアリーに対して話をすることの方が多いため、非専門者への説明能力というのを個人的に重視していたから。

Q. 学部卒と院卒で差があるか?

A. こちらが意識しているつもりはないが、結果として差はある。私の知る限り、一般に院卒のほうが数学試験の点数もいいし、面接でも高評価が多い(ただし有意差があるかどうかは調べたことがない)。たぶん勉強してきた時間の長さと年の功だと思うが、学部か院かよりも個人の能力のバラツキのほうがよほど大きい。つまりダメな院卒もいくらでもいるし、優秀な学部卒もいくらでもいる。

ちなみにコレは、理系の大学院の話。文系の大学院卒は見たことがないが、金融工学専攻とかだったら下手な理系よりも数学できるだろうから問題ない気がする。

Q. じゃあ、学部で卒業するより院に行ったほうがいいか?

A. 個人的には就活をベースに考えて院に行くかどうかを決めるのはどうかと思うが、今の大学院事情を知らないので何とも言えない。ガッコウの先輩に聞いた方がいい。

Q. 東京の大学と地方の大学で差はあるか?

A. ない。ただ、東京のほうが情報が入りやすい・会社が多いせいか、東京の大学の学生のほうが面接慣れしている感を受ける。慣れていることが一概に有利とは言えないので、気にしても意味がない。

Q. 旧帝大じゃないのだが。

A. ほぼ無関係。優秀だと感じる度合いと学歴は何となく正の相関があるようには思うが(これまた有意差未検証)、東大出ていても絶対採りたくないと思う人間もいる。大学と大学院でガッコウが変わっているケースも多いので、最近はますます意味がない。

Q. 私はアクチュアリー試験をすでに何科目か合格しているので、数学の試験を免除してほしいのだが。

A. アクチュアリー試験をだまって受けたのなら、数学の試験もだまって受けなさい。

Q. 他社の面接の進捗状況の話をするのはどう評価されるか?

A. 私なら評価には直接結びつけない。他社から引っ張りだこでも採用したいと思わない人はいるし、逆もしかり。

Q. 面接時に聞いてはいけないことはあるか?

A. ないといえばないが、心証の悪い質問というのはある。例えば次のようなの。

  1. 「アクチュアリー試験の勉強をする時間はどれくらいありますか?」「アクチュアリー会の講座に出席できますか?」「試験前は休暇を取らせてもらえますか?」
    …一つ二つならいいが、延々とこういう質問ばかりされると、「こいつは何をするために入社するつもりなのか?」と思ってしまう。
  2. 「アクチュアリー採用で入社すると、アクチュアリー以外の仕事はしなくてもいいですか?」
    …こういう質問は、私なら「ああ、専門バカを目指してるのね、あなたは」と受け止める。アクチュアリー採用で入った人間が営業をやらされることはあまりないが、営業部門の人間と話をすることはいくらでもある。話をする ためには相手がどういう仕事をしているかに踏み込んで理解しているほうがいいことは言うまでもない。

Q. ぶっちゃけ、面接では何を基準にするか?

A. 自分の部下にする気になるかどうか。

案外意識されないかもしれないが、一般の新人と比べて、アクチュアリーの新人が配置される部署はそれほど多くない。そして、自分もアクチュアリーである以上、いつかはそういう「アクチュアリーの新人が配置される部署」に異動し、上下関係になる可能性が高い。このため、目の前で面接を受けている人物が自分の部下になることを現実問題として捉えざるを得ないのだ。

Q. アクチュアリー採用、どうやら落とされたらしい。一般採用も諦めたほうがいいか?

A. アクチュアリー採用と一般採用は別物と考えた方がいい。実際、「優秀だがアクチュアリー向きではない」という理由で落とすこともある。

Q. アクチュアリー採用で内々定もらった。何かしておくべきことは?

A. 他の会社にちゃんと断りの連絡を入れること。アクチュアリーは横のつながりがあるので、後足で砂をかけるような真似をすると、数カ月後にその人とアクチュアリー会の会議室でバッタリ…ということがマジにある。

Q. [追記]アクチュアリー採用で入って、アクチュアリーになれなかったら?

A. それを理由にクビになることはないだろうが、かなり肩身の狭い思いをすることは覚悟したほうがいい。「営業志望で入社して、営業成績が全然上げられなくても大丈夫ですか?」と質問することの愚かさは理解してもらえると思う。アクチュアリー採用で入っているということは、他の分野で活躍できるかどうかの適性は判断されずに入社している、ということだ。アクチュアリー試験の合格科目数が昇進の条件になっているところもある。

ちなみに、面接時にこういう「後ろ向き」の質問は歓迎されないと思った方がいい。私なら低評価だ。

Q. [追記]アクチュアリー採用で入って、アクチュアリー以外に路線変更はできるか?

A. おそらくどの会社もできると思うが、ハードルは高いだろう。繰り返しになるが、アクチュアリー採用の人はアクチュアリー以外の適性を買われたわけではないのだ。

アクチュアリーを必要とする部署は多いので、路線変更を考えるとしたら、アクチュアリーになってから考えることをおすすめする。なお、上の質問で「アクチュアリーの新人が配置される部署はそれほど多くない」と書いたことと矛盾しているように思われるかもしれないが、「アクチュアリーの新人を育成する機能を持った部署が多くない」ということであって、アクチュアリーになってしまえばいろいろと活躍の場は広がる。

追加質問、大歓迎です。コメントかtwitterで何なりと。

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コメント

来年度から大学(数学科です)の新三年生になる清水と申します。本ブログの記事を読ませていただき、来年の就職活動へ向けて大変参考にさせていただきました。以下、二点疑問に思ったことがありますので、お答えいただければ幸いです。

①この記事で書かれていること(数学の試験、面接のことなど)は生保、損保、年金業界すべてにほぼ当てはまることなのでしょうか?それとも、いわきさんはある特定の業界を意識してお書きになられたのでしょうか?私は年金業界に一番興味があり、信託銀行を中心に就活をしようと考えているので、このようなことを質問させていただきました。

②就活とは関係ありませんが、現代的な確率論を学ぶことは、直接的または間接的にアクチュアリーとしての仕事に役立つことはあるのでしょうか?私はこれまで学んだ数学の中で、ルベーグ積分が一番面白いと思ったので、現代的な確率論もその応用としてしっかり学ぼうと思っています。仕事に役立たなくても現代的な確率論を学ぶことに変わりはありませんが、実際どの程度現代的な理論が実務に生かされているのか興味があり、このような質問をさせていただきました。

以上二点、ご回答よろしくお願いいたします。

清水さん、ご質問ありがとうございます。

①冒頭に書いているとおり、これは私の経験に基づくものです。しかし、特定の業界のことを述べる形にならないようには意識しました。信託業界は私自身はあまり詳しくないので、信託銀行に就職された先輩をご存知ならば、その方に話をお聞きになるか、このブログエントリに同意するかどうかを聞いてみるのがいいのではないでしょうか。

②正直に言って「仕事に役立つ」というほど直接的に使う機会は多くないと思います。が、身につけておいて損はありません。実務に使うケースとしては、例えば保険の分野はいろいろなところでファイナンス分野との融合が起こっており、確率微分方程式をどんどん使うようになっています。そのような事態は10年前には想像もできませんでした。
先端理論が実務に適用されるようになるには一定の時間がかかるため、(今の)実務で役立つかどうかを基準に勉強内容を選んでいては、常に時代に立ち遅れることになります。確率論はどんな形であれアクチュアリーの基本ですので、継続的に勉強されることをおすすめします。

お忙しい中、丁寧なご返信をしていただき、ありがとうございました。

私には信託業界に就職された先輩がおりませんので、このブログの記事を読んでもらうことはできませんが、少なくとも今までは完全なるブラックボックスであったアクチュアリーの就活がどのようなものであるかをイメージすることができたので、大いに参考にさせていただきます。

現代的な確率論の方も、「現在使われないことが将来にも使われないことを意味しない」という点をご指摘いただき、まさにその通りだと思いました。現在の応用の程度を見て学ぶのではなく、将来の応用を意識して学んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。

年金アクチュアリーの方から「Q&Aの内容は年金にも概ね当てはまる」とのコメントをいただきました。
ただ、アクチュアリーになれなかった場合の取扱いは違うかもしれない(営業で活躍している人も意外と多い)とのことです。

皆さん

上記の私のブログに(1)(2)の答えをかいてみました。
(2)はいわきさんのお答えとほとんど変わらない(と思う)のですが(1)は損保業界では少し様子が違うようです。

生保・損保・信託の3業界の情報が揃いました。すばらしい!

アクチュアリーへの転職を考えて検索したらここにたどり着きました。

>アクチュアリー採用の人はアクチュアリー以外の適性を買われたわけではない
この点について質問です。
現在IT技術者として職務についているのですが
仮にアクチュアリーへ転向すると仮定して
過去の業務経歴が評価される機会はあるのでしょうか?

現在は、アクチュアリーになりたい気持ちで頭がいっぱいですが
本当にそれが正しいのか?を自分の頭で判断したいので
情報提供していただけると助かります。

shilvaさん、どうもです。

通常、一つのスキルだけで職務がこなせるケースはほとんどないと私は考えます。エントリ本文で「アクチュアリー採用で入社すると、アクチュアリー以外の仕事はしなくてもいいですか?」という質問にきわめて否定的な印象を受けると書いているのもそのためです。

このため、必要とされるのは「基幹スキル」と「周辺スキル」に分けられます。そして一般に、求められる「周辺スキル」は部署の異動とともに変わります。

アクチュアリーを目指すということは基幹スキルをアクチュアリーとするということでしょうから、周辺スキルの一つとして過去の業務経歴をアピールすることはもちろん考えられますが、あまり固定的に捉えるのはどうかと思います。特にその周辺スキルが「特定のプログラミング言語に関する知識」であったりする場合は。

逆に、周辺スキルが「プロジェクトマネジメントの経験」のようなものであれば汎用性が高いので、「基幹スキル」+「周辺スキル」での適用範囲も広いと捉えられると思います。ただそういう汎用性の高い経験は漠然としていてアピールするのが難しい、という欠点もあります。

あまりご希望の答えになっていないかもしれませんが、ご参考になれば。

ありがとうございます。
アクチュアリーが最適な選択肢であるかどうかもう少し突き詰めてみます。

業務経歴に関してもう一歩書きますと
対顧客の立場として某金融機関と深く関わった経験があります。
具体的なスキルというよりはその時の経験を通じて感じたこと考えたことが
アピールの材料になるかもしれないと考えてます。

他ブログにも同じような質問をしていたのですが
丁寧に答えていただきありがとうございました。

shilvaさん

業種によってものの考え方に大きな違いはあるので、金融機関の人々の発想に接したことがある、というのは有益な経験だと思います。

ただ金融機関の中の人にとってはその思考法が「当たり前」だったりするので、どうアピールするかは思案のしどころかもしれませんね。

現在同志社のM1で、留年一回しています。今年の数学試験は受かる見込みがあまりなくて、このままだと就活時で0科目持ちです。
この場合、就活でアクチュアリー採用はかなり難しいと考えていいのでしょうか?それとも、普通の就活と同じで、面接などの要素が重要になってくるのでしょうか?

基本的に普通の就活(がどういうものか、最近の状況はあまり知りませんが)と同じです。つまり、面接は重要です。
合格科目数は目安になる可能性はありますが、それ以上ではありません。
最近の就活状況はあまり存じませんが、気にしても仕方のないことは気にしないのが一番だと思います。

来年度に博士後期過程(生物学専攻、研究室はバイオインフォマティクス)二年(D2)になるものです。専攻とはほぼ関係ありませんが、アクチュアリーとして働くことを目指しております。現在1科目も取っておらず、今年は3科目を受ける予定です。以下、一点疑問があります。お答えいただけると幸いです。

(1) 上述したように、博士過程の学生です。「博士号を持つ人間の採用」について、何名かのアクチュアリーの方に伺う機会があったのですが、ほぼ一貫して「博士は厳しいのではないか」とのご意見でした(その方々がおっしゃった理由で一番多かったのは、①年齢 とのことでした)。
やはり、数学や金融工学を専攻していない博士は、採用に不利に働くのでしょうか?不利に働くとしたら、その理由はなんでしょうか?

お手数ですが、御回答いただけると幸いです。

アクチュアリーは専門職ですので、その専門性を高める勉強を大学や大学院で行っていれば、通常は有利になると考えられます。そうでないとすれば、アクチュアリーとしての専門性に関する勉強は社会人になってから始めることになるので、年齢が若いほうが早く始められます。
当然ながら実際には専門能力以外にも考慮する要素が数多くありますが、アクチュアリーとしての専門性がない状態では一般に年齢が高いほうが不利になると言えるのではないでしょうか。

上でコメントをしたものです。御回答ありがとうございます。
もう少し、情報を収集した上で、判断をしていきたいと思います。ありがとうございました。

初めまして。いつもブログを拝見しております。現在経済学部4年で経済学研究科への大学院進学を希望している者です。2つほど質問があります。

「アクチュアリーは専門職ですので、その専門性を高める勉強を大学や大学院で行っていれば、通常は有利になると考えられます。」とありますが、この「専門性を高める勉強」とは理学研究科や工学研究科などの研究室で保険数学を専攻しているということでしょうか。
経済学での統計(計量経済学など)あるいはデータマイニングなどの専攻というのはアクチュアリー採用において不利となるのでしょうか。

また、近年学生の段階で複数の科目に合格している方々が増えている印象があるのですが、採用において要求される科目数も増加傾向にあるのでしょうか。

私自身は統計に興味がありそれを活かせる職業としてアクチュアリーを志望しているのですが、学部時代を含めて数学をずっとされてきた方々に採用で勝てるのかという不安があります。お忙しい中だとは思いますが、よろしくお願いいたします。

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