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2010年5月

2010年5月30日 (日)

アクチュアリー2次試験について何か書いてみる

このブログを見て下さっている方から「アクチュアリー後期試験(2次試験)対策もしてほしい」とのご要望をいただいた。正直に言って「対策」をブログでやるのは無理だが、書けることを書いてみる。

ただし、私自身は試験委員などをやったことはないので、実際の採点の現場がどのようなものかは知らないし、アドバイスが正しいものかどうかは保証の限りではない。また、私自身が生保で2次試験を受けたため、生保以外について当てはまるのかどうかは分からない。

濃い鉛筆を使う

アクチュアリー試験は、1次試験はマークシートになったが、2次試験は論述が中心である。論述であれば、採点者が1人だけということはちょっと考えられない。偏った判定にならないようにするためにも、複数の人間で採点するだろう。

複数の人間で採点するとなると、答案はコピーをとるに決まっている。つまり、コピーしたときに字が読めなくなるような薄い字を書いてはそもそも採点してもらえないということだ。

昔、数学者の森毅がどこかで書いていたが、京大入試の数学の採点では受験者がちゃんと理解しているかどうか判断するために、消しゴムで消した跡まで見たりしていたそうだ。アクチュアリー試験でそこまでやっているかどうかは知らないが、わざわざ読みにくい答案を書いて採点者に挑戦する必要もないだろう。

なお言うまでもないが、「鉛筆」と書いているが「シャープペンシルではダメ」という意味ではない。

考えているものをはっきりさせる

「第三分野保険」と聞いて、どのような保険を思い浮かべるか。おそらく、人によって違うだろう。三大疾病保険を想像する人もいれば、医療保険を考える人もいるだろうし、介護保険をイメージするかもしれない。

だから、「第三分野保険の商品開発について」のような問題が出たときに「どのような保険を想定して解答しているのか」をはっきりさせないと、自分では三大疾病保険を思い浮かべながら書いたにもかかわらず、採点者は医療保険を念頭においており、うまく解答が伝わってない、といったことが起こることが考えられる。

最近はそういった漠然としたテーマでの出題はあまりないが、意識はしておいたほうがいいように思う。

例えば「標準より死亡率が低い被保険者を対象とした保険を複数列挙し、それぞれの違いを書く」というのをやってみるといいかもしれない。

書けばいいというものではない

私は試験委員はやったことがないが、後輩に対して想定問題を出したり、その採点(というか講評)をしたりというのは何度かやったことがある。

答案を見る以上、「おもしろい論述」が読みたい。少なくともつまらないものは読みたくない。といっても、別に抱腹絶倒のネタとか、斬新なアイデアなんてのは期待していない。普通に考えを述べたものであれば、「おお、そういう考え方もあるのか!」と、十分興味深いものになる。

しかし、ときどき事実だけを延々と書いている答案を見る。考えが書いていなければ、興味の持ちようがないし、講評のしようもない。ソルベンシーについての所見を問う問題で現行ソルベンシー・マージン比率の計算方法について長々と書かれても、おもしろいとは感じられない。

そういったことが一般的に2次試験の答案でどの程度あるのかは知らなかったのだが、アクチュアリージャーナル第66号(2008年8月)の「第2次試験に向けた勉強を進める上での留意事項」を見ると、やはり事実を羅列しただけの答案はそれなりにあるようだ。

まあ、2次試験は論述問題なので、とにかく記述量は多くなる。受験者の感想も「腱鞘炎になるかと思った」みたいな感想が多い。知っている内容を書かないことには採点者に「知っている」ことが伝わらないので、たくさん書くことは重要だ。それを「とにかく書きさえすればいい」と誤解する受験者が増えたので、試験委員会もわざわざ「留意事項」なるものを出したのだろう。

この「留意事項」は必読である。論述問題は個人での勉強が非常に難しいが、自分で解答案を書いた後で「留意事項」に書かれていることにちゃんと対応できているかどうかをチェックするだけでもかなり論述の力は上がるのではないかと思う。

追記

トラックバックしたが、actuary_mathさんがこれを見てエントリを上げてくださっている。かなり情報の充実したエントリなので、私がここでちょこっと書いたものよりはよほど参考になると思う。

ただスタンスの異なる部分があるので補足しておくと、

  1. 私の上エントリは基本的に論述問題向けのアドバイスだ。論述は個人の努力で克服しきれないものがあると思うからだ。知識ベースの話は「勝手に勉強しろ」としか言いようがない、というのが私のスタンスである。
  2. 知識ベースの話はactuary_mathさんがいろいろと提供して下さっているが、ニュースからの情報の取り込みはかなり慎重になる必要がある。アクチュアリーでない人が記事を書いているので、アクチュアリアルな部分が正確である保証がまったくない。
  3. また、海外情報も要注意。ソルベンシーIIなどは現在進行形なので、載っている情報が確定版とは限らない。CEIOPSのサイトなどは情報が多すぎるので、アクチュアリー試験対策として読むのはまったくオススメしない。(自己研鑽として読むなら話は別)

なお、上記の私のエントリについてはactuaryjpさんから「年金の2次試験にも該当」するとのコメントをいただいた。

2010年5月24日 (月)

ソルベンシー・マージン基準の改正(その2)

5月19日にソルベンシー・マージン基準の改正に関する保険業法改正が公布されていた。

メインは金融商品取引法の改正であって、金融危機を受けての市場整備や証券会社・ヘッジファンドへの規制強化だ。失礼ながら私の個人的に受けた感覚では保険業法改正はオマケみたいなものである。

改正の主旨は、連結ソルベンシー・マージン基準を導入するというもの。しかし、それがどのようなものになるかは、現時点ではさっぱり分からない。具体的な計算方法は、ほぼすべて施行規則や告示に定められることになるからだ。

ただ言えそうなのは、導入は2012年3月末になるだろうということ。今回の法律改正の大部分が「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とされているのに対し、保険業法の改正部分だけ「二年を超えない…」となっているからだ。

すでに公表されているとおり、2012年3月末にソルベンシー・マージン基準は大幅に変わることになっている。ソルベンシー・マージン基準なら年度末以外に導入するタイミングは考えにくいし、わざわざその1年前に導入する意義も薄かろう。

とはいえ、保険持株会社のソルベンシー・マージン基準は新規導入なので、そこがちょっと気になる。また、すでに決まっている改正基準のほうは、2011年3月末の値を公表することになっている。そうすると連結ソルベンシー・マージンも2011年3月末の試算値を公表できるようなスケジュールで内閣府令改正などが決まるのか…?

引き続き状況ウォッチが必要そうだ。保険業法法規集も改正しなきゃいけないし。

2010年5月 9日 (日)

在学中のアクチュアリー試験

twitterで@yammaniさんの

アクチュアリー数学入門の本が生協にあった。在学中に試験受けといたほうがいいかも

というtweetに、アクチュアリー正会員の人達がこぞって(私の知る限りの正会員が全員)反応しているのが面白い。しかも、賛成派と反対派(というより「オススメ派」と「非オススメ派」)に分かれている。

オススメ派は@actuaryjpさんと@actuary_mathさん。

在学中の受験を強くお勧め。RT @yammani アクチュアリー数学入門の本が生協にあった。在学中に試験受けといたほうがいいかも

今は大学3年から受験可能なので時間がある学生(特に学部3年or修士1年)のうちに1・2科目でも受かっておくほうが何かとよいです。(就活にも有利) QT @yammani アクチュアリー数学入門の本が生協にあった。在学中に試験受けといたほうがいいかも @actuaryjp

非オススメ派は@fukumayaさんと@mushiman2さんだ。

在学中は他のことするのがお勧め。要領よく試験に受かればいいものじゃくて学生時代にしかできない一見無駄に見えることに投資すべし @actuaryjp 在学中の受験を強くお勧め。RT @yammani アクチュアリー数学入門の本が生協にあった。在学中に試験受けといたほうがいいかも

むしろ、在学中にこんな試験に関心持つようではだめでしょう。RT @fukumaya: 在学中は他のことするのがお勧め。要領よく試験に受かればいいものじゃくて学生時代にしかできない一見無駄に見えることに投資すべし @actuaryjp 在学中の受験を強くお勧め。RT @yamman

私自身は「非オススメ派」である。仕事をしながらのほうが、試験科目の知識が業務と結びつけて理解できるという意味で「身になる」だろうと思うからだ。(こういうことを書くとたいてい@actuary_mathさんから「業務に全然役立たない科目もある」という反論を受けるのだが。)

また、私の個人的な経験も背景にある。私が就職活動をしていたときに、ある保険会社で「在学中にアクチュアリー試験の勉強はしないで下さい」と言われたのがとても強く印象に残っているからだ。理由は@fukumayaさんと同じく、「アクチュアリー試験の勉強は入社してからもできる。それよりは学生の間にしかできないことをやってもらいたい」というものだった。(現実問題としては、それ以前に卒業自体がヤバかったので、学生の間にしかできないことをやっている心の余裕はなかったのだが)

ただ、私が就職活動をしていたのはだいぶ昔なので、大学をモラトリアムとして捉える牧歌的な風情がまだまだ支配的だった。今の就職活動のシビアさを考えると、ノスタルジーだけで「受けるな」と軽々に言うこともできないな、とは思ってしまう。アクチュアリー採用で内定をもらうと、在学中の受験を推奨する会社も増えているようだ。

いずれにせよ、アクチュアリー試験自体は目標ではなく、アクチュアリーになるための手段でしかない。「だからさっさと試験を終わらせて、アクチュアリーとして活躍しよう」というのがオススメ派、「だから学生時代という貴重な時間を試験勉強なんかに振り向けるべきじゃない」というのが非オススメ派ということになる。

上記のように正会員の中でも意見が分かれるものなので、決め手はない。アクチュアリーを目指す学生の方々、後悔しないように自分で判断して下さい。

2010年5月 5日 (水)

ウソグラフと生命保険の原価

三重大学の奥村氏と言ってもピンとこないかもしれないが、TeXの奥村先生と言えば分かる人は多いのではないだろうか。そう、「LaTeX2e美文書作成入門」の著者の奥村晴彦氏である。

この奥村氏のブログでは、しばしば「ウソグラフ」に関する話題が出てくる。スケールの取り方を変えたりして、実際の数値よりも大げさに見せるようなグラフだ。中でも、例えばこんなふうに、0から始まっていない棒グラフで差異を誇張して見せるケースがしばしば見られる。そういう事例をもっと見たい方には、日本図表審査機構[JGRO]なんてサイトもある。

これらは「見かけ」をごまかしている例だが、では実際に数字をちゃんと示していたら正しい比較をしているのかというと、そうとも言えない。

いきなり話は変わるが、前回のエントリで坂本氏の「生命保険の原価」批判が分かりにくい、ということを書いた。ただそれは、「生命保険の原価」批判があたっていない、ということではない。

生命保険の原価なんて分からないから、気にしてもしょうがないのだ。

保険は確率を元にできている。よって極論を言えば、起こってみるまで確定はしない。いや、起こってみても、どのような確率だったのかは確定しないのだ。サイコロなら何回も振ってみることはできるが、生命保険で同じ人が何回も死んでみることはできない。仮にできたところで、それは違う年齢の、違う確率なのだ。

生命保険に使う確率は社会環境によっても変化する。今70歳の人の死亡率と、今30歳の人の40年後の死亡率が同じである保障はどこにもない。いや、同じであることはありえない。

このように死亡率があやふやである以上、厳密な意味での純保険料(生命保険の原価)もあやふやなのだ。坂本氏の言いたいことがそうなのだとしたら、その点については私も同意する。

さて、ではそんなあやふやな「生命保険の原価」をなぜわざわざ使うのか。「そのほうが安さを強調できるから」だ。それはあたかも、基点を0から始めない棒グラフを描くことに似ている。

保険料が10,000円の保険と7,000円の保険を比較するときに、「このうち原価は5,000円」と書いていると、5,000円と2,000円を比較しているような気になる。ほーら、保険料7,000円のほうが圧倒的に安いでしょ。付加保険料は半分以下ですよ。みたいな。

坂本氏は「生命保険の原価」を批判した文書の冒頭にこう書いている。

どうして生命保険ばっかり、皆が「原価」を気にするのでしょう。ちょっと不思議ですね。

そう、不思議なのだ。原価が分かったところで、原価で買えるわけもないのに。ましてや、原価なんて分からないのに。

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