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2010年5月 5日 (水)

ウソグラフと生命保険の原価

三重大学の奥村氏と言ってもピンとこないかもしれないが、TeXの奥村先生と言えば分かる人は多いのではないだろうか。そう、「LaTeX2e美文書作成入門」の著者の奥村晴彦氏である。

この奥村氏のブログでは、しばしば「ウソグラフ」に関する話題が出てくる。スケールの取り方を変えたりして、実際の数値よりも大げさに見せるようなグラフだ。中でも、例えばこんなふうに、0から始まっていない棒グラフで差異を誇張して見せるケースがしばしば見られる。そういう事例をもっと見たい方には、日本図表審査機構[JGRO]なんてサイトもある。

これらは「見かけ」をごまかしている例だが、では実際に数字をちゃんと示していたら正しい比較をしているのかというと、そうとも言えない。

いきなり話は変わるが、前回のエントリで坂本氏の「生命保険の原価」批判が分かりにくい、ということを書いた。ただそれは、「生命保険の原価」批判があたっていない、ということではない。

生命保険の原価なんて分からないから、気にしてもしょうがないのだ。

保険は確率を元にできている。よって極論を言えば、起こってみるまで確定はしない。いや、起こってみても、どのような確率だったのかは確定しないのだ。サイコロなら何回も振ってみることはできるが、生命保険で同じ人が何回も死んでみることはできない。仮にできたところで、それは違う年齢の、違う確率なのだ。

生命保険に使う確率は社会環境によっても変化する。今70歳の人の死亡率と、今30歳の人の40年後の死亡率が同じである保障はどこにもない。いや、同じであることはありえない。

このように死亡率があやふやである以上、厳密な意味での純保険料(生命保険の原価)もあやふやなのだ。坂本氏の言いたいことがそうなのだとしたら、その点については私も同意する。

さて、ではそんなあやふやな「生命保険の原価」をなぜわざわざ使うのか。「そのほうが安さを強調できるから」だ。それはあたかも、基点を0から始めない棒グラフを描くことに似ている。

保険料が10,000円の保険と7,000円の保険を比較するときに、「このうち原価は5,000円」と書いていると、5,000円と2,000円を比較しているような気になる。ほーら、保険料7,000円のほうが圧倒的に安いでしょ。付加保険料は半分以下ですよ。みたいな。

坂本氏は「生命保険の原価」を批判した文書の冒頭にこう書いている。

どうして生命保険ばっかり、皆が「原価」を気にするのでしょう。ちょっと不思議ですね。

そう、不思議なのだ。原価が分かったところで、原価で買えるわけもないのに。ましてや、原価なんて分からないのに。

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