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2010年6月20日 (日)

生命保険と自殺(2)

自殺についてtwitterで(正確には私のタイムラインで、だが)話題になっていたので私の以前のエントリを紹介したところ、いろいろと有益な意見をいただいた。それを受けて以前のエントリに若干の補足をしたい。

以前のエントリで紹介したに、「自殺実態白書」の中で生命保険契約と自殺の関係に触れた「自殺と契約制度」という節は、次のように締めくくられている。

これらの分析結果は、現在の連帯保証人制度や保険契約のあり方を再考する必要性を示している。

再考する必要性だけ示されていてどう再考すべきかが示されていないので、生命保険契約をどう見直せばいいのかについてちょっと考えてみる。

生命保険金が支払われることが自殺の誘因になっているのなら、生命保険金が支払われなければ自殺をすることもなかろう、というのは最も自然な考え方だ。つまり、自殺免責期間のさらなる延長である。これにはさらに二つの考え方があって、保険金取得目的の抑制と、それ以外に分けられる。

保険金取得目的の自殺の抑制については以前のエントリで述べたとおり、すでに自殺免責期間は3年にまで延長されており、生命保険会社各社はすでに対応済みと考えていいだろう。それ以外の「自殺を考えたときに生命保険に加入していることを思い出したので、家族の後の生活の心配をせずに自殺ができる」という一般論へは、自殺に関してまったく保険金を支払わないことでしか対応できないが、これには少々賛成しかねる。自死遺族へのダメージが大きすぎるからだ。

自殺率は男性のほうが高い。しかも45-65歳の自殺率のほうが、65歳以上よりも高い。そして、日本の公的制度は、男性が働き、女性が専業主婦であることを前提にできている(少なくとも、そのような形が最もトクをするように設計されている)。こう考えると、自死遺族で最もありうるのが、専業主婦の妻、中学生から大学生くらいまでの年齢の子供、という構成になる。これに中途採用のハードルの高さを考えると、妻が自活できるだけの就職先を見つけるのは厳しく、子供は学業を断念して働かざるを得ず、さらにスキルアップの機会も持てない。経済面でのバッファーがなければ貧困層に陥る可能性が高いと想像される。

よって、自殺率対策を生命保険の契約制度から考えるよりは、雇用機会の拡大を図るようなアプローチをとるほうがいいのではないだろうか。自死遺族の経済問題が克服されるという前提ならば、自殺免責を全保険期間にすることに、私は賛成できる。

追記

@chihointokyoさんから最後の「雇用機会の拡大」に関してtwitterでコメントをいただいた。@chihointokyoさんの指摘されるとおり、貧困層に働く機会がまったくないわけではない(というよりむしろ働いている)。ただ、日本の雇用環境の特徴として新卒の極端な重視があり、したがって自死遺児が学業を断念した場合、それを取り戻すチャンスがない。私のいう「雇用機会の拡大」とは、単に働けるようにすればいいということではなく、中途採用市場の充実などを通じてスキルと収入の向上の機会を増やし、貧困の固定化を減らす構造を導入することを指している。

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