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2010年7月 7日 (水)

年金受給権の税務取扱いに関する最高裁判決

おことわり:このエントリは、判決を受けて書いたものなので、実際の税務取扱いがどのようになるかは法令や通達の変更を見ないと分かりません。したがって、このエントリは実際の税務の取扱いを表すものではありません。

最高裁で国が敗訴というのは、やはり結構なニュースバリューがあると思われるようだ。

「年金型」生命保険金、所得税は二重課税(2010年7月6日 読売新聞)

収入保障保険というのがある。定期保険のバリエーションで、被保険者が死亡したときの死亡保険金が年金の形で支払われるというものだ。今回争われたのは、それが特約のになったもの。「生活保障特約」という名前がついている。

この保険、死亡したときに相続財産として課税対象となる。加えて、毎年の年金受取時に所得税がかかる。これが二重課税ではないか、というのが今回の訴訟であり、結論は「二重課税で違法」ということになった。

この判決を「ガメツい国税庁が独自の解釈で誤った税務解釈を適用して税金をぶん取ってきた」とする解説もあったりするが、ことはあまり自明ではない。実際、今回の訴訟は、一審で国が敗訴、二審で国が勝訴ときて、最高裁で国が再び敗訴した格好になっている。「誤った税務解釈」が明らかなら、こんなに二転三転しない。

ともかく、最高裁の結論はこうなっている。

  1. 相続時の年金受給権の評価額は、将来受け取る年金の相続時点の経済的価値と同一である。
  2. 将来受け取る年金の相続時点の経済的価値は、所得税の課税対象とならない。
  3. 年金を支払うときに保険会社が年金から所得税を源泉徴収する実務は妥当である。

普通に読んだら、最後の3.が意味不明だろう。「二重課税が否定されたから、相続税がかかった後は所得税はかからないんじゃないのか?」

ところが最高裁判決を見る限り、所得税は非課税にはならなさそうに思える。

上記の1.と2.はあくまでも相続時点の評価について言っている。年金として受け取るのは、相続より後の話だ。そこに一定のタイムラグがあるからには、タイムラグ分の運用収益が発生していてもおかしくないので、その部分には所得税がかかる。実際、収入保障保険では、年金受取をするよりも一括受取をするほうが、受取金額が小さくなってしまう。

アクチュアリー記号で書くと、死亡からn年後の年金受取額を1としたときには、死亡時(相続時点)の年金評価額はvnであって1より小さい。最高裁の言っているのは「vnに所得税をかけるな」ということにすぎないので、(1-vn)の部分には課税されると考えるべきだ。そして3.によると、その金額は源泉徴収されるので、差額は還付申告をしないと戻ってこない、ということになる。

今回の件は生命保険会社が何らかの支払いをするわけではないが、職員や代理店の教育、パンフや帳票や「ご契約のしおり」の変更などなど、実務的にはいろいろと大変だろう。

それにしても、原審からの判決文がすべてネットで(しかも最高裁判決に至っては判決当日に)入手できるとは、便利な世の中になったものだ&裁判所もいいサービスをしてくれる。せっかくなのでリンクを張っておく。

追記

ニッセイ基礎研究所の小林上席主任研究員がこの件について書かれている。

年金払い型死亡保障保険課税の最高裁判決

ここでは顧客・生保会社への影響として「いったん相続税が課税された後に支払われる年金についての課税の廃止」とされており、所得税が非課税になるかのように読める。やはり判決のレベルではどのように税務実務が変更になるかは完全に明らかではないので、注意が必要なようだ。

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