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2010年8月

2010年8月22日 (日)

時価会計って言うな

8月19日の日経に、「保険会計に時価評価全面導入 国際会計基準審議会が草案」という記事が載った。(例によって、個別記事へのリンクは損害賠償を請求されるかもしれないのでリンクは張らない)

内容は、保険契約に関する国際会計基準(IFRS 4)の公開草案(Exposure Draft)が7月30日に出たというもので、なぜこのタイミングでこの記事が出るのか、少々首をかしげる。

それ以上に気に入らないのが、「時価」という単語だ。そもそも保険の時価とは何だろうか。

一般に「時価」と呼ばれているものは、国際会計基準では「公正価値(fair value)」といい、おおむね次のように決まっている(金融商品の評価の場合)。

  • 市場価格があれば、その市場価格が公正価値(レベル1)
  • 市場価格がない場合は、類似商品の市場パラメータを使った推定値が公正価値(レベル2)

(金融危機などの特殊な市場環境の下では、類似商品も含めてほとんど取引が成立せず、まっとうな市場価格や市場パラメータが使えないため、さらにレベル3の公正価値というのもあるが、本題から外れるのでここでは触れない)

さて、保険負債の評価に関しては、これまで「現在出口価値」を用いるべきだ、という方向での議論がなされてきた。現在出口価値というのは、「仮に保険契約を売却するとしたらいくらになるか」を想定した金額、ということだ。この考え方なら上記のレベル1またはレベル2の公正価値評価に近い考え方であり、「時価」と呼ぶことの違和感は少ないかもしれない。

ところが、公開草案ではこの現在出口価値の考え方が消え、「保険会社がその契約を遂行することにより生じるキャッシュフローを用いたアプローチ」によることとなっており、「売買するとしたら」的なアプローチではなくなっている。「時価」という単語から自然に想定される定義からむしろ離れているにもかかわらず「時価評価全面導入」という見出しをつける日経の記事はどうなんだろうか。

もっとも、キャッシュフローの想定にあたっては観測される市場価格と整合的な見通しを反映することが求められているので、従来の定義と結果がまったく異なるということにはならないだろう。ファイナンスを勉強したことのある人なら、将来キャッシュフローの割引現在価値として金融商品の価値を求めることは自然だろうから、この定義は保険商品の価値評価の方法としては自然である。

いずれにせよ、安易に「時価」という単語を使うと、「市場価格」を指しているのか、「他金融商品の市場価格と整合的なモデルの評価額」を指しているのか、それとも別のものを指しているのか、まったく分からない。場合によっては保険負債の計算基礎率をロックフリーにすることを以て時価と言っていたりするので注意が必要だ。ちなみにロックフリーの反対語はロックインであり、保険負債の計算にあたって将来キャッシュフローの計算基礎率を契約時に固定すること。ロックフリーであっても基礎率が市場から得られる値と整合的でなければ時価と呼ぶのは適切ではない。(例えば、現在の標準利率を既契約にも遡及適用するのは、ロックフリーではあるが市場整合的ではない)

エンベディッド・バリューや欧州のソルベンシーIIなど、保険負債の評価は「市場整合性」が重要なキーワードになっている。ただ、市場で容易に観測できるものではないので、特にアクチュアリーは「時価」という単語を安易に使わないように注意しなければいけない、と私は思っている。

2010年8月16日 (月)

Kindle買ってみた

2ヶ月ほど前にスキャナと断裁機を買って、本を裁断してスキャナでパソコンに取り込み、PDF化することを始めた。いわゆる「自炊」というやつだ。

PDF化すると、今度はそれを持ち歩けるようにしたくなる。電子書籍を読むための主な選択肢はiPadかKindleということになるのだろうが、私はKindle(正確にはその大型版であるKindle DX)を買ってみた。

Kindleは日本語に対応していない。そもそもKindleを買おうとするとamazon.co.jpからamazon.comに飛ばされてしまうし、amazon.co.jpにはKindle Storeがない。つまり日本語の書籍は買えない。

ただ私の目的は自炊したPDFを読むことなので、そのようなことははっきり言って検討すべきことではなかった。さらに言えば、今のKindleはフォント埋め込みがなされていれば日本語のPDFが読める。つまり、「画像になったPDF」か「Webで手に入るPDF」ぐらいしか使わない前提なので、日本語の電子書籍が買えないとか読めないとかは問題ではなかったのだ。

さて、そのKindle DXについて、今まで使ってみたところの感想。

  • 本体は軽い。iPadはWi-Fi+3Gモデルだと730グラムあるが、Kindle DXは18.9オンス(536グラム)だ。ただそれでも電車の中で立ったまま片手で持ち続けるのは少々疲れる。
  • バッテリーの保ちは非常によい。ワイヤレス接続をオフにした状態だと公称2-3週間とされている。実際に試してはいないが、2-3日程度では全然バッテリーは減らない。
    画面は見やすいが、ときに字が薄くて読みにくいことがある。これはどちらかというとスキャンの質によっているところが大きいと思われ、特にカラーが混じった書籍の場合は全体的に(普通の黒い字も含めて)字が薄くなる傾向があるようだ。
  • ページ送りは、正直言って「もっさり」しており、パラパラとページをめくる感覚はまったくない。ページ送りキーを押すと画面の白黒が一瞬反転し、次のページが現れる。時間にすると1秒に満たないのだろうが、ページをめくるたびにどうにも「間」を感じる。
  • iPadと同じく、画面を横に倒すと表示内容が横向きになる。ただ、横になったことを感知してからの反応は、iPadと比べるとやや鈍い。
  • PDFを横向きの画面で見るのが難しい。A4の文書を縦に見ているときには、サイズ変更のメニューを呼びだすと「画面の大きさに合わせる」「150%」「200%」「300%」「実際の大きさ」という選択肢が出てくる。ところが画面を横にすると「画面のに合わせる」「150%」「200%」「300%」「実際の大きさ」というメニューになってしまう。「画面の大きさに合わせる」というメニューがないのだ。この結果、A4横の資料を横画面で読もうとしても、1ページが1画面に収まりきらない状態になってしまう。
  • 画面下部にあるキーボードは、キーが小さい上に固く、非常に使いにくい。QWERTY配列になってはいるものの、タッチタイピングは不可能だ。ただ、そもそも使用頻度が少ないので、このこと自体にあまり不満は感じない。

何やら書き始めると不満ばかりのようだが、実は言うほど不満に思っているわけではない。Kindleは「読む」ことに特化した製品であり、「読む」ということに関して最も重要な「軽い」「見やすい」という点に関してはおおむね不満はないからだ。試験的機能としてウェブブラウザやMP3プレーヤーが付いてはいるものの、白黒である上に日本語が見えないとあっては、ウェブブラウザなんて使う気にもならない。このような、ある意味「本に集中させる」機能は、易きに流れやすい私の性格にとっては非常に重要なのだ。

いま私がKindleに取り込んでいるのは、自炊した本(アクチュアリー会の会報別冊や定期刊行物が多い)と、ウェブで拾った資料などが主だ。当初は仕事で使いそうな資料をドカドカ入れておけば分厚いファイルをめくらずに済むようになるかと思ったが、セキュリティ上の問題があるのと、上で述べたようにページ送りが「もっさり」していることから、例えば打ち合わせなどの際にすばやく資料をめくって探すというのには向かないことが分かった。いちおう保険会社のアニュアルレポートなども取り込んではいるが、あまり使う場面はなさそうに思える。

いずれにせよ、まだいろいろと試行錯誤しているところなので、後日またエントリを上げてみたい。

2010年8月 2日 (月)

PGF

今日から、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命(PGF生命)が新契約の募集を始める。

PGF生命は、リーマン・ショックのあおりを受けて2008年10月に更生特例法を申請した大和生命が前身だ。2009年3月にプルデンシャル・グループのジブラルタ生命がスポンサーとなった。(なお、プルデンシャルという会社は米国系のプルデンシャルと英国系のプルデンシャルがあるが、ここで言うのは米国系のほう)

新契約の再開は更生特例法申請時以来なので、じつに1年10ヶ月ぶりということになる。

現在、プルデンシャルグループは日本で3社の生命保険会社を持っている。

  • プルデンシャル生命
  • ジブラルタ生命
  • PGF生命

プルデンシャル生命とジブラルタ生命は持株会社プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンの子会社であり、PGFはジブラルタ生命の子会社(持株会社から見れば孫会社)である。

PGF生命は銀行窓販専業会社とする旨が早くからアナウンスされていた。大和生命破綻のきっかけとなったリーマン・ショック以降、銀行窓販で主力商品だった変額年金が次々と販売停止になり、PGFはいったい何を売るのだろうと思っていたが、外貨建や積立利率変動型の保険を売るようだ。

また、PGFが銀行窓販を専業とすることから、プルデンシャル・グループの銀行窓販はPGFに集約されるのだろうと考えていたのだが、今のところはジブラルタ生命と委託契約を結んでいる銀行もまだあるようだ。

現時点ではPGFだけが持株会社の孫会社となっているということもあり、グループ内の構成はもうしばらく変化がありそうだ。

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