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2010年9月20日 (月)

かんぽと簡保の保険法

表題の「かんぽ」は「かんぽ生命保険株式会社」のことであり、「簡保」は「簡易生命保険」のことである。ただし、「かんぽ生命保険株式会社」が売っているのは「簡易生命保険」ではない。

「簡易生命保険」と「生命保険」は別のものだ。前者は郵政民営化前まで国(郵政省、総務省、あるいは日本郵政公社)が郵便局で販売していたもので、後者は保険業法上の生命保険会社が郵便局を代理店として販売するものである。「かんぽ生命保険株式会社」は日本生命や第一生命などと同じく、保険業法上の生命保険会社にすぎない。したがってかんぽ生命保険株式会社が販売する生命保険は、日本生命や第一生命のそれと法的な違いはない。ただしかんぽ生命保険株式会社の株式は、持株会社を通じて、国が100%所有している。

さて、以上の説明で違いがお分かりいただけたであろうか?

このようなことをくどくどと述べたのは、「保険法解説」(有斐閣2010)の中に引っかかる記述があったからだ。ちょっと長いが以下に引用する。(p138脚注13)

郵政民営化の前に販売されていた簡易生命保険は、国が保険者となる生命保険であるが、営利を目的とせず、相互保険でもないことから、改正前商法673条以下の規定は適用も準用もなく、簡易生命保険法によって自足的に規律されると解されていた。ところが、保険法は、狭義の保険契約にとどまらず、保険契約としての実質を有するすべての契約に適用されるものとされており、しかも、一定の規定は保険法施行前に締結された生命保険契約にも適用される(保険法附則4条)ことから、郵政民営化前に締結された簡易生命保険契約(以下「旧簡易生命保険契約」という)にも保険法の適用があるのかが問題となる。規定の文言だけをみれば、旧簡易生命保険契約にも保険法の適用があるかのごとくであるが、旧簡易生命保険契約は郵政民営化後も経過措置として簡易生命保険法の規律を受けるものとされている(「郵政民営化法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」附則16条)ことからすると、旧簡易生命保険契約は、保険法施行後も簡易生命保険法によって自足的に規律され、保険法の適用はないと考えるべきなのであろう。

要するに「簡易保険は保険法の適用はない」と言っているのだが、これはどうかと思う。

保険法第2条第1号では、保険契約を次のように定義している。

保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。

今回の保険法改正の検討の当初から、「共済契約を保険法の適用対象とするかどうか」が論点として挙げられていた。というのも、従来の保険法(商法の一部として規定されていた)においては、共済は対象外とされていたからだ。(これは旧保険法が商法の一部であったため、商行為ではない共済に適用しようがなかった、という事情もある。)

結果的には新しい保険法では「保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず」という断り書きを入れてまで、共済を対象とする旨を明確にすることとなった。つまり、新保険法の理念は「(消費者から見て)『保険のようなもの』を一括して扱おう」という考えに立っているのだ。

だとすると、簡易保険も『保険のようなもの』として新保険法の適用下にあるというのが自然な解釈に思われる。

簡易保険に保険法の適用がないという解釈は、冒頭のようなややこしい違いを消費者が前提として認識しなければならない、ということであり、消費者目線を旨とした今回の保険法改正の趣旨を大いに損なう杓子定規な解釈だと感じられてならない。

なお、今回は読んでいる途中でどうしても引っかかったのでケチをつける格好になったが、「保険法解説」自体はとても興味深く読める本である。900ページ以上もある本なのでまだ読了はしていないが、保険法の面白そうなトピックについては今後も挙げていきたい。

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コメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

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