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2010年9月12日 (日)

「もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら」

もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら ― タイトルそのままの本である。

似たコンセプトの書物は、今までもあった。ただそれらは、ひみつ道具が「技術的に可能かどうか」について述べたものが多かったと思う。この本は、「可能かどうかはともかく、実現したら社会がどう変わるか」を扱ったところが新しい。

この中には、10の「ひみつ道具」が出てくる。

  • タケコプター
  • ガールフレンドカタログメーカー
  • フエール銀行
  • アンキパン
  • カラオケメイツ
  • ほん訳こんにゃく
  • お医者さんカバン
  • ガリバートンネル
  • カッカホカホカ
  • どこでもドア

ここで違和感を持たれる方もいるだろう。「タケコプター」や「どこでもドア」はいいとして、「ガールフレンドカタログメーカー」や「カッカホカホカ」は、ひみつ道具としてはマイナーではないだろうか。もっとメジャーなものがあるのに。例えば「きせかえカメラ」が実現したら、こういうことになりそうだ… 「タイムふろしき」が実現したら、というのもいろいろ考えられそうだし…

また、中の道具の取り上げ方も、読んでいていろいろ気づいてくるところがある。私の場合はやはり保険に関する言及に関しては気になる。

例えばタケコプターの章では、タケコプターによる事故の急増によって生命保険が大きな影響を受ける、とされているが、そんなことはないだろう。そもそも死因のうち「不慮の事故」によるものは多くない(厚生労働省の平成21年人口動態統計によれば、20~59歳の死亡のうち、不慮の事故によるものは6.2%)。
ただし、損害保険のほうは影響が大きいかもしれない。「タケコプター保険」が今の自動車保険のような位置づけになるのなら、市場規模は相当なものになる。でもタケコプターのイメージは「気軽な乗り物」だから、自転車のほうがイメージが近いかもしれない。自転車保険は収支がよくないので損保会社はあまり販売に積極的でないと聞いたが…

本書の中では言及がないものの、生保に影響が大きいのは「お医者さんカバン」ではないか。いま入院が必要な病気のうち、「お医者さんカバン」の登場でカバーできるのはどれくらいだろうか。短期の入院というのは、ひょっとするとなくなるかもしれない。そうすると、短期入院保障の充実にシフトしてきた最近の状況とはまったく逆になってしまうのかも…

といったことを考え始めたら、おそらく著者の意図に見事にハマっている。著者は最後にこう述べている。

古語で「ゆかし」という言葉があります。「見たい」「聞きたい」「知りたい」といった「好奇心」を表す言葉です。…

この本は、「ゆかし」の精神を刺激します。実際にドラえもんのひみつ道具がいま、この世の中に実現したら、何が起きるのだろうか―読者のみなさんの好奇心と想像力を掻き立てることができたなら、とても嬉しく思います。

そう。好奇心と想像力を掻き立てられてしまったのだ。

この本は、「ふむふむ」とうなずきながら読むというより、「自分だったらどう考えるだろう」「違うひみつ道具だったらどんなことが考えられるだろう」と想像を膨らませながら読むのがいいように思う。自分の頭の奥底にある発想を目の前に取り出してくれる、「発想の四次元ポケット」のような本である。

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