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2010年10月10日 (日)

保険料率の細分化

actuaryjpさんのブログにこんなエントリが。

The Actuary:男女別保険料は合法?

保険料をどのような基準で細分化するかというのは、アクチュアリーが取り組む問題としては古くて新しい。

保険料の細分化に必要な要件はいくつかあるが、その中に「差異を設けることが社会的に容認されるかどうか」という点がある。actuaryjpさんの言うとおりアクチュアリーは規制やルールの動向に対応していかなければならないのだが、それらの規制やルールは社会的な環境の変化が背景にある。逆に言えば制度上許されているとしても社会的に受け入れられそうもないものもある。

もちろん、これらは保険の種類によって異なる。地域別料率は自動車保険の世界ではもはや普通のことになったが、生命保険で(少なくとも日本国内の)地域によって保険料が異なるケースはないと思う。だが、人口あたりの医療機関数は地域によって異なるだろうから、地域別医療保険料というのは考えられるかもしれない。

記事のとおり欧州では男女別保険料率が否定されたが、日本ではどうだろうか。一般に女性のほうが平均寿命が長いことは広く知られていると思うので、男女同一の料率を用いるとむしろ批判を受けたりするかもしれない。

こういった保険料率の細分化を考えるにあたって議論の余地があるのが、「被保険者が自分の意思で属性を変えられるものを細分化の対象とすべきか否か」という点がある。非喫煙者保険のように、自分の意思で健康になろうとして安い保険料率を選択できるようにすべし、というものだ。このような考え方を突き進めると、男女別料率は基本的に否定される。ただ、このような属性は自分の意思で変えられる分だけ、安定しないという特性がある。あなたの周りにも何回も禁煙している人がいるだろう。

米国では俗に Term War と言われる、定期保険の価格競争が起こったことがある。生命保険会社はより安い保険料を提供できる属性を競い合い、喫煙習慣、BMI、果ては趣味といった領域まで保険料設定の判断に用いた(例えばスキューバダイビングやパラグライダーなどを趣味にしていないことが要求された)。こういうものは「鶏が先か卵が先か」ではないが、細分化した保険が実際に世に出てみないと、それが社会的に受け入れられるかどうか分からないというジレンマがある。日本の自動車保険も、今や地域別料率はすっかり普通のことになった。

さて、料率細分化に関しても人種別料率は、おそらくほとんどの国で認められないと思われる。差別を助長、あるいは追認するものだからた。つまり、格差があることを認めることがタブー視される要因は料率細分化として否定されやすい。そうなると日本では世代間格差が最も大きいので、年齢別料率がそのうち否定されることになるのだろうか。科学的保険制度は年齢別料率の適用から始まったのだが、もしかするとこの日本からその逆流が起こるかもしれない。

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コメント

色々と考えさせられました。
保険料はやはり必要ですからね・・・

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