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2011年2月

2011年2月27日 (日)

連結ソルベンシー・マージン2

現在パブリック・コメントに付されている連結ソルベンシー・マージン基準の案を、保険関係法規集に反映してみた。(誤解されるといけないのでトップページからのリンクは張っていない)

さて、法令案の表現の中で一点、どうにもよく分からないところがある。

今回の連結ソルベンシー・マージン基準では、連結財務諸表をベースにはするものの、金融子会社については重要性の原則を適用しない、つまりどんなに小さな子会社であっても連結せよ、ということになっている。具体的な条文案は次のとおり(連結ソルベンシー・マージン告示案)。

第1条(連結の範囲)
保険会社の経営の健全性を判断するための基準として保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準(保険会社及びその子会社等(保険業法(平成7年法律第105号。以下「法」という。)第110条第2項に規定する子会社等をいう。以下同じ。)に係る法第130条各号に掲げる額を用いる場合に限る。)並びに保険持株会社及びその子会社等の経営の健全性を判断するための基準は、連結財務諸表に基づき算出するものとする。この場合において、連結財務諸表については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)に基づき作成することとする。ただし、保険会社又は保険持株会社が法第106条第1項第1号から第12号まで及び第14号又は第271条の22第1号から第12号まで及び第14号に掲げる会社を子会社としている場合における当該子会社(第3条第1項第2号イにおいて「金融子会社」という。)については、連結財務諸表規則第5条第2項の規定を適用しないものとする(当該規定を適用しないことが困難である場合を除く。)。

太字のところが上に書いたことに対応するのだが、最後のカッコ書きが気になった。

金融庁の説明する概要にはこう書いてある。

連結SM比率計算の対象範囲は、会計上の取り扱いに合わせる。ただし、今般の規制導入の経緯を踏まえ、金融子会社(銀行、証券等の子会社)については、常に連結SM比率計算の対象に含める(連結SM比率の分子であるマージンから資本控除とする取扱いも許容。)

たぶんこの最後のところと上の第1条が対応するはず。では資本控除とは実際どのようにするのかというところは、今回の連結ソルベンシー・マージン告示案の第3条に書かれている。

第3条(控除項目)
法第130条第1号に掲げる額(保険会社の経営の健全性を判断するための基準として保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を定めるために用いる保険会社及びその子会社等に係る額に限る。)又は法第271条の28の2第1号に掲げる額の計算にあたっては、次に掲げる額の合計額を控除するものとする。
一 (略)
二 保険会社及びその連結子法人等又は保険持株会社及びその連結子法人等が保有している次に掲げる者の資本調達手段(前号に該当するものを除く。)の額の合計額
イ 金融子会社であって、連結財務諸表規則第5条第1項各号の規定又は第1条ただし書の規定に該当するため、連結の範囲に含まれない者
ロ・ハ (略)

すでに見たとおり、第1条ただし書というのは「金融子会社は重要性の原則にかかわらず連結対象としろ」ということが書いてあるので、この規定ぶりでは重要性の原則に引っかかるような小さい金融子会社は、連結ソルベンシー・マージンの計算に含めようが含めまいが資本控除されてしまうという妙なことになっている。つまり、小さい金融子会社を(会計上は連結しないがソルベンシー・マージン計算の上で)連結した場合、資本は控除される一方で、リスク相当額だけは課されるということになってしまう。これでは、第1条で「規定を適用しないことが困難」ということにしたほうが有利になってしまう。

文言、見直したほうがいいのではないだろうか?

「物語(エピソード)で読み解くファイナンス入門」

著者の森平教授といえば、ファイナンス、特に保険とファイナンスの関係については権威である。アクチュアリーではないものの、アクチュアリー会の評議員もされていたと記憶している(いま名簿を見たら「朋友」とあった。なんだかよく分からないが)。

さてこの本はタイトルのとおり、ファイナンスの概念に関わるさまざまなエピソードが盛り込まれている。章立ては以下のとおり。

第1章 ポートフォリオ理論とは

第2章 時は金なり

第3章 リスクとリターンの話

第4章 証券化-紙切れに価値を吹きこむ

金融の中で最も基本的なのは複利の概念だ。本書の第2章では、ベンジャミン・フランクリンが遺した1000ポンドが200年後には(途中で一部引き出されて使われていたにもかかわらず)300万ドルに膨れ上がった話が載っている。ここで著者は複利の威力を述べている。

いま1万円を年8%の利子で1年間銀行預けるといくらになるでしょうか。誰でもわかるように、利子は1万円の8%分、つまり元本(1万円)と利子(800円)の合計で1万800円になって戻ってきます。

(中略)

このようにお金を預けつづけると、いくらになるでしょうか。

(中略)

フランクリンの死後200年以上が過ぎました。さて、この場合はどうなると思いますか。そのお金はいくらになったでしょうか。計算によると、実に700万倍
(正確には711万4倍)になりました。最初の1万円は、200年後に711億円にもなったのです。

計算間違いなんてとんでもありません。(1+0.08)の200乗を計算してみれば、間違いないことがわかります。

計算してみた。

(1+0.08)200=4838949.585

ちゃうやんけ!

実は著者のいう「711万4倍」」というのは200年ではなくて205年なのだが、こういう凡ミスはちょっとがっかりする。

とはいえ、中に出てくるエピソードはいろいろと興味深い。上記のベンジャミン・フランクリンの話、落語の「富久」、投資家としてのジョン・メイナード・ケインズ…さっと通読した後に再度つまみ読みをするような読み方が向いているかもしれない。

ただ、最後の証券化の章は本書267ページの中の32ページしかなく、しかも姉妹編の書である「物語(エピソード)で読み解くデリバティブ入門」を参照する内容ばかりでちょっと残念。しかも「物語(エピソード)で読み解くデリバティブ入門」の文庫版は未発売(3月2日発売予定)と来ているので、そちらが発売されてから両方一度に読む、というのもありかもしれない。

2011年2月20日 (日)

「法令読解ノート」

出版社がマイナーなためか、なかなかamazonに出てこなかったが、ようやく登載されたようなので紹介したい。(しかし在庫切れ・入荷未定…)

この本は、筆者が法学部の1年生を対象に行っていた講義をもとにした、「法令の読み方」の基礎知識をまとめたものである。どれくらい初心者を相手にしているかというのは、この本の「はしがき」によく現れている。

なぜ、大学でこのような「法令読解基本のき」のような授業が必要だと考えたのかということについてちょっとお話を申し上げておきたいと思います。

一つは、ある日の労働法の授業で、「そこに座っている男子学生の人、○○法の第○条の第1項を読んでもらえますか。」と、ある学生を指名したところ、その学生はしばらく「六法」をじーっと見ていて、やおら、「先生、第1項がありません。」と言ったわけです。それを聞いて、私は本当に驚きました。

これを読んで私は大笑いしたのだが、どこが面白いのか分からなかった人はこの本を読む意味がある。分かった人も、大学で法学部以外に所属していた人にはおすすめできると思う。

実は私は、保険関係法規集とかいうサイトのメンテナンスをしているくせに、法令の体系についてちゃんと勉強したことがない。まあ、業法のような「プロ仕様」の法令は「分かりやすくしよう」という意識があまりないのか、「第1条の2の2第1項第1号ハ(1)(iv)」みたいに、本書の中で「重要文化財級の条文」と言われるようなマニアックな細分化に出会うこともある。

それでもやはり体系化されたものを読んでみると知らないことがあるものだ。恥ずかしながら「共通見出し」という概念を知らず、「見出しのない条文もあるんだな」ぐらいにしか思っていなかった。また、附則の使われ方も十分理解していたとはいえなかった。

仕事上で使うかどうかは別にしても、社会生活の中にあって法令と無縁ではいられない。だったら、法学部生でなくとも、その読み方をちゃんと理解しておいたほうがいいのではないだろうか。

この本の表紙には「今さら聞けない法令のい・ろ・は」とある。その通り、法律に携わる人間にとっては、本当に「いろは」を学ぶくらいアタリマエのことばかりが書かれているのだろう。そしてアタリマエのことを勉強するのは恥ずかしいことではない。アタリマエのことを勉強せずにいることが恥ずかしいのだ。


さて、これで保険関係法規集のページもいろいろと改めないといけないところが出てきてしまった…

2011年2月12日 (土)

アクチュアリー試験:受験科目数

来週水曜日、2月16日はアクチュアリー試験の結果発表日だ。

結果が分かってから上げると微妙なエントリになってしまうので、今のうちに書いておく。

アクチュアリー試験の基礎科目5科目のうち何科目を受けるべきか、ということがときどき話題になるが、「アクチュアリー試験数学の研究」のactuary_mathさんのエントリをはじめとして、2科目程度を受験するように薦める人が多い。

あまのじゃくな意見の多様性を重んじる私としては、あえて異論を呈し、「とりあえず全部受けてみろ」と言ってみたい。

基本となる考えは「受けていない科目は、受からない」というものだ。

日本でアクチュアリー正会員の数は2010年3月末で1,257人と、公認会計士(約2.0万人)や証券アナリスト(約2.4万人)と比べて1ケタ少ない。正会員の数が少ないということは、試験問題の作成に携わる人数が少ないということになる。

少人数で作成しているため、年によって出題の難易度のブレが大きくなる。試験を受ける側からすると「当たりはずれ」が大きいということになるだろう。

もうお分かりだと思うが、「当たり」の年にその科目を受験していなければ、「当たり」のメリットを享受することはできないのだ。受験申込をしなかった科目が急に易化して地団駄を踏むのがイヤなら、全科目を申し込むべきである。

多科目を受験することのもう一つのメリットは、相乗効果が見込めるということだ。

基礎科目はどれもアクチュアリーになるための試験なので、それぞれの内容がまったく独立しているということはない。多かれ少なかれ、他の科目と勉強する領域が重なることがある。つまり科目Aの勉強をしていたら一部は同時に科目Bの勉強にもなっているわけで、それなのに科目Bを受験しません、というのはいかにももったいない。さらにそのとき科目Bの出題が易しくなっていたら…

ダメもとで申し込んでみても、無駄になるのは受験料ぐらいだ。ならば、とりあえず申し込んでみよう。

(注)
読んでお分かりのとおり、これは「計画的な勉強をしない」「試験結果を運に任せる」いいかげんなアクチュアリーの戯言なので、話半分に受け取ってください。

2011年2月11日 (金)

自炊Tips

早いものでKindle DXを買って半年近くになる。自炊した本も100冊以上になったので、だいぶ自分なりのやり方ができてきたし、ここにまとめておく。

スキャナーは富士通のScanSnap S1500、裁断機はプラスの断裁機PK-513L。どちらも自炊の定番といっていいだろう。

ただ、最近は書籍の裁断サービスも増えてきたので、裁断機は不要かもしれない。私のは少し刃こぼれしているらしく、切断面に1~2本のスジが入ってしまう。

スキャン時の設定は、基本的に読み取りモードを「白黒」にしている。本の中身にグレーの図表などが使われていたら、「グレー」でもう一度スキャンする。さらに表紙は「カラー」でスキャンして、後でPDF結合する。

つまり、

  • 表紙カラー、本文白黒
  • 表紙カラー、本文グレー(グレーのページがある場合)

の2種類のPDFを作ることになる。

Scansnap1

KindleでグレースケールのPDFを読むと、私には文字が薄くて非常に読みづらい。そこでKindle用に白黒のものを作る。

一方で、グレースケールのものを白黒PDFにすると、グレーの部分が非常に汚く見える(白黒コピーを想像してもらうとイメージできるだろう)ので、ディスプレイなどで見るときのためにグレーでスキャンしたものを別途作ることにした。いずれにせよ、ScanSnapのカラーモードを「自動」にすると、ページによって白黒・グレーが替わって読みづらくなるので、個人的にはおすすめしない。

さて、PDFができたらページ番号を調整する。あらかじめScansnapの「読み取りモードオプション」の中の「白紙ページを自動的に削除します」のチェックをオフにしておくと、ページ番号の調整が楽になる。

細かい調整をしだすとキリがないが、こんな雑な調整でもおおむね不満なく読めている。もっとも、この調整はもっぱら書籍用であって、マンガのような画像情報の場合には話が違ってくるかもしれない。

2011年2月 6日 (日)

連結ソルベンシー・マージン

1月28日に、連結ソルベンシー・マージン基準に関する保険業法施行規則・関連告示改正のパブリック・コメントが公表された。法律が改正された時点ではいったいどういう計算をするのかさっぱり分からなかったが、これでだいぶ目鼻や輪郭が見えてきた。

施行は平成24年(2012年)3月31日で、新基準のソルベンシー・マージンが施行されるのと同じタイミング。これは以前のエントリでも予想していたとおりで、特にサプライズはない。

内容については、これまでのソルベンシー・マージン基準の規定を「連結」と読み替えればいいような感じだ。特に資産運用リスクなどは、従来のソルベンシー・マージン基準の規定をほぼ連結財務諸表上の資産に関して適用するような形になっている。

単体と異なる点は、主に次のようなところだろうか。

  • 傘下の少額短期保険業者の一般保険リスクだけは保険会社とは別に計算するようになっている
  • 巨大災害リスクに関して、外国損保子会社の規定が新たに設けられている
  • 子会社について他の法令で同様の規制があるものについては、そちらの規制によるリスク量を代替適用することができる
  • 経営管理リスクについて他の法令で同様の規制があった場合、大きいほうに値を合わせる

少額短期の分離計算は理由が分からない。最後にリスクカテゴリごとのリスク量を統合して全体のリスク相当額を計算するときの都合だろうか。(最後の計算では、生保の保険リスクと損保の一般保険リスクは無相関、少額短期の一般保険リスクは単純和になっている。)

巨大災害リスクは日本のものを外国に当てはめてはダメなのは明らかだが、残念ながら損保畑に疎い私には、今回の案が妥当なものかどうかが分からない。「内部モデルの使用も可」とされているので、法令の計算方法がどうしても実態に合わなければ内部モデルにするのだろう。

他の法令による規制の代替適用については、例えば海外の保険子会社や、銀行子会社などが考えられる。ただ、「同様の規制」というのがいったいどのようなものを指すのかがよく分からない。欧州のソルベンシーIIは99.5%VaRに相当するリスク量だが、連結ソルベンシー・マージン比率計算時には95%VaR相当に修正するのだろうか?

ちなみに、この連結ソルベンシー・マージン基準が適用される会社は、「保険持株会社及び保険会社を頂点とする全ての保険グループ」とされている。多くの保険会社は子会社を持っていると思われるので「保険会社を頂点とする全ての保険グループ」に該当してしまい、この規制の対象になるのではないだろうか。

しかも、特に国内保険会社で、連結会計のシステム化が不十分なところがあるような気がする(単体が非常に大きく、かつ連結対象会社が少ないため。電器や自動車のようなメーカーだと数百社を連結することになるので、システム化しないとどうにもならない)。

法令の確定は早くとも今年3月末ごろだろう。その時期はすでに決算繁忙期に入っているので、実務上の検討にとりかかれるのは5月末か6月初旬ぐらいからか。うーん、連結ソルベンシー・マージン計算用のシステム修正があったら、全社間に合うのだろうか?

破綻生保の行方

米プルデンシャルグループによる買収が決定していたAIGエジソン・AIGスターの2社だが、2月1日に株式取得が完了したとの発表がなされた(プレスリリース[PDF])。これら2社はジブラルタ生命の子会社となり、2012年1~3月にジブラルタ・AIGエジソン・AIGスターの3社を合併させる計画という。

AIGエジソンとAIGスターはもともと、破綻した東邦生命と千代田生命をそれぞれ母体とする生保である。戦後、これまでに破綻した生保は全部で8社だが、それらの破綻後の変遷を見てみよう。

  • 日産生命[1997年破綻]→あおば生命→プルデンシャル生命に吸収
  • 東邦生命[1999年破綻]→GEエジソン生命→AIGエジソン生命→ジブラルタ生命の子会社
  • 第百生命[2000年破綻]→マニュライフ生命
  • 大正生命[2000年破綻]→あざみ生命→大和生命→プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル生命
  • 千代田生命[2000年破綻]→AIGスター生命→ジブラルタ生命の子会社
  • 協栄生命[2000年破綻]→ジブラルタ生命
  • 東京生命[2000年破綻]→T&Dフィナンシャル生命
  • 大和生命[2008年破綻]→プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル生命

ということで、破綻8社のうち6社までがプルデンシャルグループ傘下に入ることになった。

生保が破綻した場合、保険金が削減される・破綻後数年間は解約時に早期解約控除がかかるなど、特殊な事情がいろいろと発生する。破綻生保の運営というのにも特殊なノウハウが必要なのかもしれない。だとすると、破綻生保の運営をまとめて引き受けるというのは、割と効率が見込めるのかもしれない。

加えて追い風になるかもしれないのが、以前エントリにも挙げた金融庁アクションプランだ。その中に、次のようなものがある。

  • 保険会社におけるグループ経営の円滑を図る制度整備(業務の代理・事務の代行に係る手続負担の軽減)
    現在は保険会社グループ内で一つの会社に保険事務を集中させるといった場合に、認可が必要になっている。これを届出制に緩和しようというもの。保険業法第98条第2項を改正することになるので、法案を国会に上げる必要がある。工程表上は平成22年度内。

プルデンシャルグループの計画では、プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル生命(PGF生命)は銀行窓販専用の保険会社とする方向になっており、合併の対象からは外れている。ただ、PGF生命の保有契約には旧大和生命契約があるため、事務部門は銀行窓販商品以外に、伝統的な保険商品の事務にも習熟しなければならない。上記の制度整備がなされれば、普通の生保商品の事務をジブラルタ生命に集約し、PGF生命は銀行窓販商品の事務に集中することができる。

届出制になってしまうと外部資料では分からなくなってしまうのだが、いろいろな歴史の生保を数多く傘下に抱えたプルデンシャルがどのような運営を行っていくのか、注目される。

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