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2011年6月 5日 (日)

責任準備金を英語で言うと

保険会社の貸借対照表(バランスシート)を見ると、多くの会社で最大の金額になっているのは「責任準備金」という勘定科目だ。

さて、日本の保険会社の内容を英語で紹介するとしたときに、この「責任準備金」をどのように訳すだろうか。

私がまず思いつくのは"policy reserve"だが、面倒なことに、「責任準備金」「支払備金」「契約者配当準備金」をまとめた勘定科目として「保険契約準備金」というのがある。"policy reserve"というのは保険契約準備金の英訳として使うのがいいんじゃないか?

実際にはどのようになっているのか、いくつかの会社の英語版アニュアルレポートから抜き出してみる。

日本生命

保険契約準備金:Policy reserves and other reserves

支払備金:Reserve for outstanding claims

責任準備金:Policy reserves

契約者配当準備金:Reserve for dividends to policyholders

第一生命

保険契約準備金:Policy reserves and others

支払備金:Reserves for outstanding claims

責任準備金:Policy reserves

社員配当準備金:Reserve for policyholder dividends

住友生命

保険契約準備金:Policy reserves

支払備金:Reserves for outstanding claims

責任準備金:Policy reserves

社員配当準備金:Policyholders' dividend reserves

T&Dホールディングス

保険契約準備金:Policy reserves

支払備金:Reserve for outstanding claims

責任準備金:Policy reserve

契約者配当準備金:Reserve for policyholder dividends

ソニー生命

保険契約準備金:Policy reserves and others

支払備金:Reserve for outstanding claims

責任準備金:Policy reserves

契約者配当準備金:Reserve for policyholders' dividends

富国生命

保険契約準備金:Policy reserves

支払備金:Reserve for outstanding claims

責任準備金:Policy reserve

社員配当準備金:Reserve for dividends to policyholders

やはり「保険契約準備金」「責任準備金」ともに policy reserve(s) とするものが多いようだ。紛らわしさをなくすために保険契約準備金のほうに "and other (reserves)" などと追記している会社もある。

なお、「契約者配当準備金」だったり「社員配当準備金」だったりするのは株式会社か相互会社かの違いによる。保険契約者の配当であって株主配当ではないことが重要なので、"policyholder"の単語はどの会社にも付いている。

次に損保。こちらは保険契約準備金に配当準備金が含まれない。

東京海上ホールディングス

保険契約準備金:Insurance liabilities

支払備金:Outstanding claims

責任準備金:Underwriting reserves

NKSJホールディングス

保険契約準備金:Underwriting funds

支払備金:Reserve for outstanding losses and claims

責任準備金:Underwriting reserves

MS&ADインシュアランスグループホールディングス

保険契約準備金:Underwriting funds

支払備金:Outstanding claims

責任準備金:Underwriting reserve

生保では使われていなかった"underwriting"という単語が使われているのが分かる。

あと、アニュアルレポートなどでは見たことがないが、"policy liability"という表現も聞くこともある。変わったところでは以前、"liability reserve"というのを聞いた。確かに「責任」は liability だし「準備金」は reserve ではあるのだが、会計の場面で liability と聞けば間違いなく「負債」という訳語を思い浮かべるので、"liability reserve"は「負債準備金」という表現が思い浮かんでどうにも落ち着かない。

そうやって英語表現から逆に考えると、そもそもの「責任準備金」という単語に「保険」の意味合いがまったく含まれていないのが気になってくる。今の「責任準備金」という勘定科目こそ「保険契約準備金」という名称にすべきだったのではないだろうか。

同じように「支払備金」という勘定科目も、読んで内容が分かるとは言えないように思う。英語の outstanding claims から考えると「未払保険金」と呼ぶのが一番分かりやすいのだが。

まあ、「責任準備金」も「支払備金」も、その世界で仕事をしている人間にとっては何の違和感もないのだが、こうやって他言語を介したりしてちょっと見方を変えると、慣れきっていることが意外そアタリマエじゃなかったりするかも。

P.S.

保険業法施行規則第69条では、生保の責任準備金の要素は「保険料積立金」「未経過保険料」「払戻積立金」「危険準備金」の4つに分かれる。これらがどのように英語で表現されているかも、分かる範囲で調べてみた。

日本生命

保険料積立金:Insurance reserve funds

未経過保険料:Unearned premiums

払戻積立金:Refund reserve

危険準備金:Contingency reserve

T&Dホールディングス

保険料積立金:Premium reserve (other than unearned premiums)

未経過保険料:Unearned premium reserve

払戻積立金:Repayment reserve

危険準備金:Contingency reserve

ソニー生命

保険料積立金:Premium reserve

未経過保険料:Unearned premiums

払戻積立金:Refund reserve

危険準備金:Contingency reserve

まあ、未経過保険料と危険準備金の訳し方はだいたい決まっているようだ。

P.S.2

Twitterで @daitakeda さんから有益なコメントをいただいた。

@s_iwk さん、「責任準備金を英語で言うと」 http://bit.ly/myj48j 、興味深く拝読しました。釈迦に説法を承知で、外資生保と某損保での決算実務経験から少々コメントさせていただきます。

1つは policy reserve(s) ですが、狭義には保険料積立金を指すものと思われます。生保の責準は保険料積立金が大宗を占めるため、 policy reserve(s) という表記が一般的かと理解しております。

他方、短期保険中心の損保では未経過保険料 unearned premiums が責任準備金の過半を占めるため、 policy reserve(s) ではなく underwriting reserve(s) としている面があると思います。

なおご承知かもしれませんが、米国基準では旧 FAS 60 の影響により責準を (liability/ies for) future policy benefits としている表記が多いです。支払備金との対比としてわかりやすいと思ます。

このご意見に対していくつかコメントしておきたい。

  • policy reserve(s) と言ったときには、保険料積立金だけでなく、当年度未経過保険料まで含むのが私のイメージである(この点は @daitakeda さんにも「含み得る」と同意いただいた)。ただし前納未経過保険料なども含めて、危険準備金以外の責任準備金を policy reserve と呼んでも、私の経験上は問題が生じたことがない。
  • 損保で underwriting reserve という表現を使っているのは、未経過保険料が太宗を占めるということもさることながら、 underwriting という単語を使うことそのものが損保らしい、というのが私の感想である。生保では underwriting という単語は actuarial term と受け止められにくい、という感覚を私は持っている。

もともと英訳される前提の単語ではないので、人によって認識が異なるという事実が分かることそれ自体が有益だと私は考えている。「私のイメージは違う」というご意見があれば、ぜひお寄せいただきたい。

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