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2011年8月 7日 (日)

書評:IFRSに異議あり

この本の奥付を見ると、「二〇一一年五月一八日 一刷」とある。金融庁から自見大臣談話「IFRS適用に関する検討について」が発表されたのが6月21日なので、その点ではこの本の主張は陳腐化している。

ただ、この本は「IFRS強制適用になぜ反対するのか」についての主張がまとまっており、いま読んでも価値のあるものだと思う。が、いくつか主張に矛盾を抱えている。

本書の主張は端的に言うと「IFRSは本質的な欠陥を抱えており、強制適用ではなく選択適用とすべき」というもの。こう要約してしまうと「?」と思うのだが、「本質的な欠陥」があるものを選択適用であれ適用可能とするのは、わが国の会計の信頼をなくすことになるのではないだろうか?

例えばIFRSは会計処理の原則だけを示す「プリンシプル・ベース(原則主義)」であり、細目にわたって会計ルールを定める、日本基準や米国基準のような「ルール・ベース(細則主義)」とは異なるとされる。本書ではこのことが恣意的な会計処理を招くことになると批判しているのだが、そもそもルール・ベースの網の目をくぐるような恣意的な会計処理がエンロンやワールドコムにおいて批判されたんじゃなかったっけ?それに会社が恣意的な会計処理を行わないように会計監査があるんじゃなかったっけ?

また、資産負債アプローチや公正価値評価についても、現在のIFRSの各基準と概念フレームワークが完全には整合的になっていない(概念フレームワークより前にすでにできていた基準があるため)ことや、金融危機を受けて公正価値概念も変化をみせるなど、IASBが現実に使用される会計として妥協しつつある点を無視して、IASBが概念フレームワークを金科玉条とする原理主義であるかのように述べるのはどうかと思う。(とはいえ、10年ほど前にあった「ジョイント・ワーキング・グループ」の議論はまさに原理主義だったし、レベル3公正価値のように妥協点としてもそれはないだろ、というものもあるので、安易なアドプションをすることによって自国の会計基準設定をコントロールする権限を失うことには私も賛成はしない。)

本書の中でも引用されているが、複数の会計基準が併存することにより、会計基準間の健全な競争が促され、ひいては投資家の利益になる、という斎藤静樹教授(明治学院大学教授、東京大学名誉教授、ASBJ初代委員長)の主張は私も首肯するところ大である。ただ、だからこそむやみにIFRSをdisるのではなく、適切に批判をしてもらいたいと思うのである。

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