« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

2011年8月

2011年8月27日 (土)

平成23事務年度 保険会社等向け監督方針

8月26日、平成23事務年度の監督方針と検査基本方針が公表された。その中で保険会社等向け監督方針に関してみてみよう。

目次というか、大項目は次のとおり。

  1. 金融資本市場を取り巻く環境と今後の金融監督の基本的考え方
  2. リスク管理の高度化の促進
  3. 顧客保護と利用者利便の向上
  4. 保険会社等の属性に応じた監督対応

環境と基本的方針を最初に掲げるのは当然のことだとすると、実質的に監督上の今年の最重要テーマは2.の「リスク管理の高度化の促進」ということになる。

「リスク管理の高度化の促進」は

  1. (1) 統合的なリスク管理の促進
  2. (2) ソルベンシー評価の見直し等

の2項目から構成されていて、後者は、「ソルベンシー・マージンの新基準および連結ソルベンシー・マージン基準の円滑な導入」「経済価値ベースのソルベンシー規制の検討」「中期的な保険監督会計のあり方についての検討」が挙げられている。

保険監督会計について(IFRS適用延期にも関わらず)国際会計基準に対するトーンが弱まっていないのが「ん?」と思わせるところはあるが、まあ内容としては想定された範囲だろう。

気になるのは前者の「(1)統合的なリスク管理の促進」のほうだ。全般に、個々の保険会社が自社の特性に応じた取り組みをするよう促す、というトーンが伺える。

自分たちでちゃんとリスク管理するようにする、というのは当然といえば当然なのだが、さてこれを経済価値ベースのソルベンシー規制の検討と結びつけた場合、「新しいソルベンシー規制では内部モデルによるリスク計量が使用可能か?」という論点が出てくる。

以前「資本規制のバージョンアップ」というエントリでも書いたが、保険会社のリスクを知るための情報を一番多く持っているのはその保険会社自身である。したがって、保険会社が自身の特性を考慮した内部リスクモデルを持っているのなら、それを使うのがリスク計量としては最もよいことになる。

銀行の自己資本比率規制ではすでに行われている(いわゆる「先進的手法」というやつだ)内部モデルの代替使用は、これまでのソルベンシー・マージン基準ではほとんど導入されていなかった。ソルベンシー規制を抜本的に見直す流れの中でどうなるのか、非常に注目される。

それにしても、「4.保険会社等の属性に応じた監督対応」中の「(4)認可特定保険業者等への対応」について、「申請者等からの相談に丁寧に対応し…認可申請を円滑に処理することに努める。」「資金繰りや業務の適切性等に関し、丁寧な指導・監督を行っていく。」と、妙に腰の低い文言なのがなんとも。主務官庁は実質的には他の官庁だから、気を使ってるんだろうなあ…

2011年8月 7日 (日)

書評:IFRSに異議あり

この本の奥付を見ると、「二〇一一年五月一八日 一刷」とある。金融庁から自見大臣談話「IFRS適用に関する検討について」が発表されたのが6月21日なので、その点ではこの本の主張は陳腐化している。

ただ、この本は「IFRS強制適用になぜ反対するのか」についての主張がまとまっており、いま読んでも価値のあるものだと思う。が、いくつか主張に矛盾を抱えている。

本書の主張は端的に言うと「IFRSは本質的な欠陥を抱えており、強制適用ではなく選択適用とすべき」というもの。こう要約してしまうと「?」と思うのだが、「本質的な欠陥」があるものを選択適用であれ適用可能とするのは、わが国の会計の信頼をなくすことになるのではないだろうか?

例えばIFRSは会計処理の原則だけを示す「プリンシプル・ベース(原則主義)」であり、細目にわたって会計ルールを定める、日本基準や米国基準のような「ルール・ベース(細則主義)」とは異なるとされる。本書ではこのことが恣意的な会計処理を招くことになると批判しているのだが、そもそもルール・ベースの網の目をくぐるような恣意的な会計処理がエンロンやワールドコムにおいて批判されたんじゃなかったっけ?それに会社が恣意的な会計処理を行わないように会計監査があるんじゃなかったっけ?

また、資産負債アプローチや公正価値評価についても、現在のIFRSの各基準と概念フレームワークが完全には整合的になっていない(概念フレームワークより前にすでにできていた基準があるため)ことや、金融危機を受けて公正価値概念も変化をみせるなど、IASBが現実に使用される会計として妥協しつつある点を無視して、IASBが概念フレームワークを金科玉条とする原理主義であるかのように述べるのはどうかと思う。(とはいえ、10年ほど前にあった「ジョイント・ワーキング・グループ」の議論はまさに原理主義だったし、レベル3公正価値のように妥協点としてもそれはないだろ、というものもあるので、安易なアドプションをすることによって自国の会計基準設定をコントロールする権限を失うことには私も賛成はしない。)

本書の中でも引用されているが、複数の会計基準が併存することにより、会計基準間の健全な競争が促され、ひいては投資家の利益になる、という斎藤静樹教授(明治学院大学教授、東京大学名誉教授、ASBJ初代委員長)の主張は私も首肯するところ大である。ただ、だからこそむやみにIFRSをdisるのではなく、適切に批判をしてもらいたいと思うのである。

« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

フォト
無料ブログはココログ
2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック