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2011年10月

2011年10月22日 (土)

東日本大震災での免責認めず?

何やら妙な判決が出ている。

東日本大震災によって震度5強の揺れが起こった地域のマンションで水漏れが発生したが、損害保険会社は地震免責を理由に支払いを拒否。マンション住民が裁判を起こし、損害保険会社が敗訴(支払いを命じられた)とのこと。

小林裁判官は「免責条項の地震とは、戦争や噴火などと同程度に巨大かつ異常な自然現象で、広範囲に同時多発的に大規模な災害が生ずる事態を予定した規定」 と指摘。今回は、マンションがある杉並区付近では最大でも震度5強程度だったとして、「免責条項の地震にはあたらない」と判断した。
(東京新聞)

さて、では「免責条項の地震」がどのように書かれているか確認してみようと思い、訴えられた東京海上日動のサイトから約款を見てみた。
(ただし、報道では訴訟の対象となった保険がはっきりしない。「個人財産総合保険」と思われるが販売停止になっていてサイト上で約款が見られないため、後継商品の「トータルアシスト住まいの保険」の約款を見ている。)

当社は、下表のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
(中略)
地震もしくは噴火またはこれらによる津波。(後略)

どこにも地震の規模に関する言及はないのだが…裁判官はなぜ勝手に条件を付け加えているのだろうか。

仮に裁判官の言うとおり「戦争や噴火などと同程度に巨大かつ異常な自然現象」としての地震しか免責できないとしても、東日本大震災はモロに当てはまるのではないだろうか。「(訴訟の起こった)その地域は震度5強で、巨大かつ異常とは言えない」というのは、同一の地震に関して「被害の大きかったところは免責にしていいから、被害の小さいところは払いなさい」と言っていることになる。

それは保障のあり方としておかしくないか?

そもそも震度5強が巨大じゃないという解釈もすごいと思うが、今後の動向が気になる判決である。

なお繰り返しになるが、以上は判決文を見ない状態で、報道だけに基づいて、かつ訴訟の対象となった保険商品の約款が明確でないままに書いている、という点にはご留意いただきたい。

書評:ラストマネー

ドラマ「ラストマネー」もあと1話。第5話と第6話について書こうと思ったが、あんまり保険のテクニカルな話題は出てこないし、今さら
「定食屋で大声で個人情報漏らしまくり」とか、
「開催中にペーペーが乱入できる役員会議室って何?」とか、
「役員会で専務が真ん中に座ってるけど、社長はどこ行ったの?」とか、
そういうことを挙げてもしょうがないので、小説のほうを取り上げる。

この小説は「原作本」ではなく、テレビドラマ以前の主人公・向島が描かれている。ストーリーは4話。

  • ケース1 両親殺傷事件で残された二つの保険金
  • ケース2 事故か? 自殺か? 婚約者ビル転落死の真相
  • ケース3 疑惑の保険金殺人
  • ケース4 家族に残す愛の生命保険金

ケース1~3は2005年の話、ケース4は2011年の話だ。2005年…ドラマを見ている方には分かる、「あの事件」がどうやって起こったのかが語られている。

テレビドラマのほうはいろいろとネタにしてきたが、もともとドラマとしては面白いし、映像になっていない分だけ逆にアラが出てこない(ただ、調査結果を定食屋で話すシーンは出てくる)。

奥付を見ると、保険考証・法律考証・警察考証・医療考証をそれぞれ専門家が行なっていることから、生命保険についての知識を深めることにもなるのではないだろうか(少なくとも私が読んでいて取扱いに違和感を覚えるところはなかった)。

特に最後のケース4は、ここに書くとネタバレになるので書かないが、「そう来るか!」と感心してしまった。確かに普通は知らないよな…

テレビドラマを見ていてもいなくても、どちらが先でも、おもしろく(というと語弊があるのだが)読める本である。

2011年10月10日 (月)

書評:トリプルA 小説 格付会社

この小説の主人公は3人いる。和協銀行から格付会社に転じた乾慎介、格付会社マーシャルズのアナリストの水野良子、日比谷生命の格付担当、沢野寛司。

と、名前を挙げてお気付きのとおり、モデルになった会社がすぐ分かる。和協銀行は協和銀行、日比谷生命は第一生命、マーシャルズはムーディーズ。他の会社名もすぐ分かるものがほとんどで、実名の会社も数多く出てくる。フィクションではあるが、時代の流れは事実に沿っている。

格付けの本質は、次の内容に現れている。乾が和協銀行から格付会社に転職しようとするときの、格付会社に勤める堀川との面接での会話だ。

「いいか、投資家は少しでも多く金利を払って欲しい。発行体とアレンジャーは、少しでも払いたくない」
「はい」
「となると、発行体とアレンジャーは、果たして何をするだろうか?」
質問というより、自問するような口調だった。
乾が答えをひねり出す前に、堀川は、自分から口を開いた。
「彼らが考えることは二つ。複雑な金融技術を用いて、投資家を判断不能にすること。もう一つは、リスクとリターンの関係をカモフラージュすること。……発行体とアレンジャーは、常にこの二つの誘惑に駆られている」
「あ……はい」
「格付会社がオペレートしている(業務を行なっている)のは、こういう相反する欲望が渦巻く環境なのだ」
堀川は英語まじりでいった。もともとは、日系大手証券会社であるN証券の社員で、ニューヨークの証券現地法人で勤務した経験がある。
「リスクとリターンの関係をカモフラージュするために、アレンジャーと発行体は何をするか?」
再び自問するような口調。
「彼らは、格付会社を使うのだ」
堀川は、喝破するようにいった。
「う、ううーん……」
乾は、思わずうなる。
「いいかね? 馬鹿な格付会社が、最先端の金融技術で複雑化されたストラクチャーの中に隠されているリスクを見抜けなかったり、あるいは、商売欲しさに高 い格付けをつけたりすると、最後に困るのは、債券を買った投資家なのだ。なぜなら、発行体は資金さえ調達できれば、あとは何のリスクも負わない、アレン ジャーは、債券を完売してしまえば、何のリスクも負わない、格付会社は、債券がデフォルトになっても、格付けは一つの意見の表明にすぎないと裁判所が認め ているので、何の賠償責任も負わない」
乾はうなずく。
「さっき、格付けは、投資家のために存在するといったが、文字どおり、我々は、投資家の利益を守るために仕事をしているのだ」

物語は、この「投資家の利益を守るため」の格付けから徐々に離れていく。証券化商品の拡大とともに、金融機関は自分たちでリスクをとらない商品を次々と開発し、したがって審査はどんどん甘くなる。サブプライムローンが広がっていく。それらの商品に対する格付けも、トリプルA(マーシャルズではAaa)のトランシェがずるずると広げられていく…

黒木亮氏の小説は読みだすと止まらなくなる。普段見えない「格付会社」というテーマも相まって、おすすめである。

2011年10月 9日 (日)

ラストマネー(第4話)

全7話のこのドラマ、この回で半分。物語も第1章の終わりということで、本編は大いに盛り上がっている。

が、このエントリでは相変わらず枝葉末節の話を。

第4回は告知義務違反がテーマ。清和生命の保険に加入してからわずか1週間で入院し、ステージIVの膵臓ガンと診断された山之内信夫(ただし山之内本人にはガンと伝えず、胃潰瘍と言ってある)。主人公の向島は、保険の加入時点で山之内が病気を知っていたのではないかと疑う。

疑問に思ったのは、「山之内氏はいったいどういう保険に入っているのか?」だ。

ドラマの中では、告知義務違反でなければ5000万円が支払われるような話になっている。ガンにかかったら保険金が出る、といえばガン保険だろう。三大疾病保険だったり五大疾病保険だったり七大疾病保険だったりするかもしれない。

が、これらの商品の多くは、加入から90日以内にガンと診断された場合には保険金が支払われない(これを「待ち期間」とか「不担保期間」という)。したがってそのような保険であれば、加入後たった1週間でのガン罹患による給付請求とか、査定するまでもなく不支払いとなる。

ただ、会社や商品によっては、「乳ガンだけ」加入から90日以内は支払いません、としているものもある。乳ガンはしこりの有無によって自分である程度診断できるので、ガンになったことを知った上で加入するリスクがあるためだ。ひょっとすると、清和生命の売っているのはそういう保障内容なのかもしれない。

ただそれにしても、本人がガンと知らない中でガン保険に意図的に加入するというのもおかしい。仮に入っていたとしても、山之内本人がガンと知らないのだから、請求しようがない(ドラマでは山之内の妻が、本人から給付金の請求をせっつかれている、と語るシーンがある)。

すると、胃潰瘍でも支払われるような給付、ということになるので、普通の入院給付金なのだろうか。山之内の妻も「給付金はまだでしょうか?」とわざわざ言ってるし。しかしそれでは給付金額は数十万円だ。ストーリーは別に数十万円が緊急に必要、という状況には見えなかったのだが…

結局、もっともらしいのは以下のような想定だろうか。

  • 山之内は自分が余命いくばくもないことを知った上で保険に加入した。
  • ただ、自分が死んだ時に保険金がちゃんと支払われるかどうか不安になったので、入院給付金の請求を通じて、告知義務違反がバレているかどうかを確かめることにした。

でもそもそも、死亡保険金5000万円って、告知書で加入できる金額か? ふつう、医師の診査が必要じゃないか?

うーむ、清和生命の事業方法書が見てみたい…

2011年10月 8日 (土)

ラストマネー(第3話)

さてドラマ「ラストマネー」も第3回。今回は愛人が保険金受取人になって、焼死した夫の保険金を受け取る話。

まず愛人を保険金受取人に変更できるのか。保険金受取人の変更は被保険者の同意がなければダメなのだが(保険法第45条)、今回のケースでは保険契約者=被保険者=夫、ということで、この点は問題ない。保険契約者が保険会社に保険金変更の意思表示をすれば(必要書類を提出すれば)保険金受取人の変更は成立する。

ドラマはもう一つ、契約の有無の確認の話が同時並行で進む。契約者不明、担当者不明、保険証券も存在せず、保険金受取人だけが分かっている契約を探すという話だ。

こういう話が実際にあるのかどうかは知らないが、ドラマで言っているように、保険料の横領が考えられるので、まあ調査の対象にはなるのかもしれない(たとえそうだとしても、普通は保険契約者が言ってくるものだが)。ただ、話を持ってくる先が「査定部」というのがおかしい。

保険契約は普通「入口」と「出口」がある。「入口」は保険に加入するとき、「出口」は支払請求のときの話だ。当然「査定部」は出口の部署に属するので、そのような部署に入口の問題が持ち込まれることはちょっと考えにくい。

まあともかく、主人公の向島と新人の大野は、その「入口」の状況を確認するため営業部に向かう。これがまたおかしい。

通常、契約にあたって記入した申込書は、支店(会社によっては支部とか営業部という)から、契約加入管理の部署に直接送られる。これは営業職員の手を離れた書類は契約管理事務を行う部門がチェックする(営業関係の人間を介在させない)ことで不正を防止する側面がある。通常、支店から営業部を経由するなどということはない。
ところがドラマでは、営業部の人間が机の上の書類をガサガサ探して、申込書類を出してくる。しかもそれを営業部で処理しているようなのだ。

これは…架空契約、作りたい放題ではないのか。

清和生命、大丈夫なのか…まあ大丈夫だったらドラマにならないのだが。

P.S.

ちなみに毎回、枝葉末節にしばかりツッコミを入れるのは、ミステリー仕立てのこのドラマでネタバレを避けようとすると、こういうことしか書けないからです。

(追記)

今回の話では愛人に保険金受取人を変更するところが肝腎なので、「そもそもそんなことができるのか」という疑問が出るだろう。

と思って調べてみたら、「文研保険事例研究会レポート」というものの中に、こういうのがあった。

不倫相手を保険金受取人とした指定の公序良俗違反による無効(PDF)

ドラマの中では、妻と離婚してからの受取人変更なので、公序良俗違反に問うのは難しいように思う。保険法でも、受取人変更に際して保険会社の承諾は必要とされていない。

ただしこの保険法の規定は任意規定なので、約款で制限をかけている会社があるかもしれない。

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