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2011年11月

2011年11月26日 (土)

書評:IFRS保険契約(追記あり)

現在、国際会計基準で用いられている保険契約に係る基準(IFRS4)は暫定基準である。

この本、非常によくまとまっていて、なおかつUS GAAP、ソルベンシーII、MCEVとの比較もされており、その点ではとても有用である。

ただ、雑な記述が多く、誤解を招くのではないかと思うところがいくつかある。

一部の共通経費を除き大概の増分キャッシュ・フローは保険契約単位で把握することが可能であり、既に長期の保険契約の評価として定着しているEVの計算においても保険契約単位で計算が行われている。(P114;太字は筆者)

「モデルポイント法」って知ってる? 日本の大手生保などだと保険契約単位が数千万のオーダーになる(特約をバラすと数億)ので、似たような契約をまとめてキャッシュフローを生成することは普通に行われていると思うのだが。

法人所得税についてはキャッシュ・アウトフローには見込まれない。(中略)

この点はソルベンシーIIと同様の取扱いであるが、MCEVの取扱いとは異なる。MCEVは株主価値の測定を目的として計算されるものであり、取引ベースの税金はもとより法人所得税も控除して配当可能利益の来たい現在価値を評価しなければならないからである。(P117)

不正確。ソルベンシーIIの「技術的準備金(technical provision)」とは確かに同様の取扱いだが、ソルベンシーII全体の取扱いは法人税を考慮する。これは「求めようとしているものが何か」を考えれば分かる。IFRS4は「保険契約負債」を、ソルベンシーIIとMCEVは「保険会社の純資産」を求めようとするものだから、後者は当然に法人税控除後でなければならない。

ここに限らず、IFRS4、ソルベンシーII(のうち技術的準備金とSCRがそれぞれ)、そしてMCEVが何を求めようとしているのかを、わざとかどうかは知らないがあいまいにしているふしがある。そのスタンスはいろいろと誤解の元になるように思うのだが。

また細かいところではあるが、オプション・保証の評価に関してP123に概念図も不正確。動的解約率について、現在の解約率をベースに、金利の上昇に対して追加的な解約が発生するかのように描いているが、そんなことはない。現時点でアウト・オブ・ザ・マネーの契約であれば、現在の解約率にも動的解約要素が含まれているし、イン・ザ・マネーの契約であれば、少々金利が上昇しても解約率の上昇は起こらないかもしれない。

MCEVを適用する原則を定めたCRO Forumは、その原則のなかで、資本コスト率を2.5%~4.5%の範囲で定めるべきと規定している。(P151)

いやいやウソ書いたらアカンでしょ。MCEV原則を定めているのはCFO Forumであって、CRO Forumではない。後半は半分合っていて、CRO Forumが資本コスト率として2.5%~4.5%を提言しているのは本当。だが、これも「定めるべきと規定」といった強制力はない。

と、いろいろツッコミを入れてはいるものの、IFRS 4 フェーズIIについて言及してる書物は少ないため、貴重な1冊である。勉強するための書としては悪くない。ただ、鵜呑みにしないように。

IFRS 4 フェーズIIについて言及している貴重なもう1冊。しかし、値段が、値段が…

(追記)

「IFRS保険契約」(このエントリの一番上の本ね)に、すごい表現をもう一つ見つけてしまった。しかも図入り。

また条件付テール期待値(CTE)は確率分布の先端とVaR99.5%のポイントとの中点でありCTE99.5%と呼ばれる。(P136)

ちゅ、中点?たいていの連続型の確率密度分布は定義域が+∞まであると思うんだけど、そのときはどう定義するんだ…

本当の定義は「VaR99.5%点を超える部分の平均」。そもそも名称に「期待値」って入ってるんだから。

2011年11月23日 (水)

契約者貸付

貯蓄性のある生命保険では、解約返戻金を担保にしてお金を借りることができる。これを「契約者貸付」という。

契約者貸付の利率は金利情勢によって異なるが、通常、予定利率より高く設定される。予定利率より低く設定すると逆ざやになってしまうので、これは当然のことだ。

さて、そうすると、契約者貸付によってお金を引き出して、返済せずにほったらかしていた場合、利息がふくらんで、いつか解約返戻金を上回ってしまう。要は担保割れになるということで、このとき、保険契約は失効する。これを「オーバーローン失効」という。

さて、生命保険協会が定期的に公表している苦情・相談案件集「ボイス・リポート」に、このオーバーローン失効に関する申し立てが載っていた。

[事案23-39]貸金業法適用請求
・平成23年9月10日裁定終了
<事案の概要>
オーバーローンにより契約が失効したことを受け、貸金業法に規定する登録を受けたうえで契約者貸付制度の確立を求め申立てがあったもの。
<申立人の主張>
昭和62年に加入した終身保険が失効したことに関連し、以下の3点につき要求する。
(1) 契約者貸付は、貸金業法第2条1項に定義する「金銭の貸付を業として行うもの」に当たり、同項2号に定義する「貸金業を行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの」に該当しないから、貸金業法第3条の登録を受けたうえで、同法および関連法律に基づく契約者貸付制度を確立すること。(請求1)
(2) 本件契約は、平成21年7月末で保険料払込期間満了となっているが、保険料の立替金が返済されていないとして立替金残高があることになっている。一方では払込満了とし、他方では払込が満了していないでは矛盾し、道理に合わない。保険料立替金残高はないものとすること。(請求2)
(3) 契約者貸付については、約款上「貸付金の元利合計が解約返還金額を超過した場合、保険契約は効力を失います」とあるが、保険法第57条(重大事由による解除)に保険者の解除権が規定され、「当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由」には該当しないので、申立契約を失効させ、解除することはできない。(請求3)

なんだこれは?特に(1)。保険会社を貸金業者として扱えという申し立てをして、いったいどうしようというのか。

ともかく、申立人の言っていることを確認してみようと、貸金業法を見てみる。

第2条(定義)
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 (略)
二 貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの
三~五 (略)

で、次に保険業法。

第97条(業務の範囲等)
保険会社は、第3条第2項の免許の種類に従い、保険の引受けを行うことができる。
2 保険会社は、保険料として収受した金銭その他の資産の運用を行うには、有価証券の取得その他の内閣府令で定める方法によらなければならない。

では内閣府令(保険業法施行規則)にはどう書いているか。

第条(資産の運用方法の制限)
法第97条第2項に規定する内閣府令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
一~四 (略)
五 金銭の貸付け(コールローンを含む。)
六~十三 (略)

ということで、保険会社は「貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者」に該当するので、貸金業法適用対象外。以上。

申立人の請求2・請求3も本来対応関係にないものを無理に対応づけているので、「本件申立内容は認められない」との結論となっている。

ところで今回改めて気付いたのが、貸付業務自体は保険会社の本来業務とはいえ、業法レベルでなく、(一段低いというと語弊があるが)施行規則レベルで定められているということだ。業法では「有価証券の取得」が定められているので、法律は本来の保険会社の資産運用として有価証券投資をメインに据えている、ということになる。

もちろん銀行の場合は貸付がメインに書かれているし、有価証券投資も法律レベルになっている。

銀行法第10条(業務の範囲)
銀行は、次に掲げる業務を営むことができる。
一 預金又は定期積金等の受入れ
二 資金の貸付け又は手形の割引
三 為替取引
2. 銀行は、前項各号に掲げる業務のほか、次に掲げる業務その他の銀行業に付随する業務を営むことができる。
一 債務の保証又は手形の引受け
二 有価証券(第5号に規定する証書をもつて表示される金銭債権に該当するもの及び短期社債等を除く。第5号の2及び第6号において同じ。)の売買(有価証券関連デリバティブ取引に該当するものを除く。)又は有価証券関連デリバティブ取引(投資の目的をもつてするもの又は書面取次ぎ行為に限る。)
三~十七 (略)
3.~10. (略)

実際の運用の場面での保険会社と銀行の違いはどちらかというと負債特性から語られることが多いが、意外なところで違いを発見した次第。

2011年11月17日 (木)

書評:この1冊ですべてわかる 会計の基本

「1冊で基本がすべてわかる」などと謳っているものは、しばしば初歩しか載っていないものだったり、基礎的なことが無味乾燥に羅列してあったりする。しかしこの本は違うのだ。


まず、初歩だけにとどまっている本ではないことは、目次で一目瞭然。

  • 第1章 会計とは
  • 第2章 財務会計
  • 第3章 連結決算
  • 第4章 税務会計
  • 第5章 内部統制
  • 第6章 IFRS(国際財務報告基準)
  • 第7章 企業価値
  • 第8章 財務分析
  • 第9章 予算管理
  • 第10章 原価計算
  • 第11章 コスト・マネジメント
  • 第12章 組織再編

ふつうは会計の入門書と位置づけられるものに財務会計や管理会計を入れたりはしない。でも、この本はそこまでカバーしている。

そして、これだけの範囲をカバーしつつ「無味乾燥なものにならない」というのは、イメージで捉えやすくしていることが大きい。

同じ著者による会計の初心者向けの本には次のようなものがある。


これらに共通して(当然本書にも)出てくるのが「会計ブロック」という考え方だ。これらの本のどれかを読んでいただくと分かるが、とっかかりの悪かった「資産」「負債」「資本」「収益」「費用」といった単語が、あたかもテトリスのブロックのようにビジュアルに思い浮かんでくる。

この「会計ブロック」をはじめとして、この著者はとにかく「例え」がうまい。

本書では、内部統制が「うがい」に例えられる。「は?」と思った人は本書を見てみてほしい。そのことで、「単に押すハンコが増えるだけ」というイメージの内部統制が、具体的に捉えられるようになる。

それでいて「基本」であることを外しておらず、各章の最後には、さらに理解を深めるための推薦図書が書かれている。(当初は全部読んでみようと思ったが、合わせると50冊近くになるので私は断念したが。)

あえて難をいえば、IFRSのくだりが資産負債アプローチであるかのような書き方になっているところ(それも説明の簡明さを考えるとやむを得ないかも)と、推薦図書の難易度にバラツキが大きいところか。

しかしとにかく良書である。会計実務を行う者は具体的な会計処理が描かれた詳細な地図が必要だろうが、全体像を知りたい人向けの「会計の世界地図」としてこの本を捉えればいいのではないだろうか。

2011年11月14日 (月)

なごり雪

イルカさんの「なごり雪」の替え歌。

出資を待つ君の横で僕は、
時計を気にしてる、
季節外れのprosを刷ってる、
バミューダでやるissueはこれが 最後ねと、
寂しそうに君がつぶやく、
ワラントも行使の時を知り、
ふざけすぎた、報酬の後で、
今春が来て、PLはきれいになった、
去年よりずっときれいになった

だれか2番以降作って下さい。

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