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2011年12月

2011年12月31日 (土)

本年もありがとうございました

2011年も、残すところあと数時間となりました。

今年は何といっても東日本大震災、そしてそれに続く福島第一原発の事故が最大のニュースでしたが、その中でネットが(良くも悪くも)非常に大きい役割を果たしたと思います。

私個人にとっても、今年はブログやtwitterを通じて、たくさんの方々とお会いできた1年でした。そしてお会いした方からもお会いできていない方からも、ネットがなければ得られなかったであろう多くのものが得られました。

来年は自分にとってもっと実り多き1年でありますように、そしてみなさんにとっても実り多き1年でありますように、さらにみなさんの「実り」の一つとして私が役立つことができれば、と思います。

よいお年を。

2011年12月23日 (金)

自炊業者提訴

有名作家が自炊代行業者を提訴したというのがニュースになっている。

東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図

プレスリリース:書籍スキャン事業者への提訴のご報告 (PDF)

この件に関してはいろいろと意見が出ている。ネットでは(私の見る限り)今回の提訴が電子書籍の進展に逆行するものだとして、批判的な意見が多いように見受けられる。

しかしどうも、提訴された内容と議論されている内容にずれが感じられる。
最初は報道のされ方のせいかと思ったが、原告が(知ってか知らずか)そのように議論を方向づけているようだ。

訴状を見ているわけではないので正確なところは分からないが、提訴された内容について次のように書かれている(太字は引用者)。

スキャン代行業者に対して著作権者がとうとうアクションを起こした――浅田次郎氏、大沢在昌氏、永井豪氏、林真理子氏、東野圭吾氏、弘兼憲史氏、武論尊氏 の7名を原告とし、スキャン代行業者2社に対し原告作品の複製権を侵害しないよう行為の差し止めを求める提訴が12月20日に東京地方裁判所に提起され た。

訴状で被告となっているのは、「スキャンボックス」を提供する愛宕と、「スキャン×BANK」 を提供するスキャン×BANKの2社。全事業の差し止め請求ではなく、あくまで訴状にある原告作品群に対する複製行為の差し止め請求となる損害賠償の請求は行われていないが、訴訟費用は被告の負担とする旨が訴状に記されている(訴訟物の価額が1120万円となっていることを付け加えておく)。

 「対象となる作品は訴状にリストされたもので、すべてではないが、気持ちとしては作家についての全作品という認識」(同事案の弁護団の一人、久保利英明氏)

つまり、

  • 原告の作品のうち訴状にリストされたものについて、
  • 自炊代行業としての複製を行わないように

訴訟が提起されている、と考えられる。

差し止め請求は自炊代行業についてのものであって、自炊を行うことそれ自体については今回の提訴の対象とはなっていない。

が、原告たる作家は、提訴後の記者会見で、提訴された内容にとどまらないコメントをいろいろと出している。いくつか拾ってみた。

大沢在昌氏「電子書籍については、作家ごとに考えが違う。ここにいる作家の中にも電子書籍化を許諾していない方もいらっしゃる。私の著作は一部電子書籍化されているが、片っ端から電子書籍化していいと考えているのではなく、デバイスの普及や利益の問題などを考えて取り組む必要がある。作家が電子版を許可されない一番大きな憂慮はやはり海賊版の問題。正直言って、紙の出版社はいままで電子書籍事業に乗り気ではなかった。本というのは紙でできているから本なのだという考えから電子書籍に抵抗を持つ方は出版社の中にも作家にもいる。しかし一方で、電子書籍の利便性や市場が広がっていく中で、出版社や作家がそれと無関係でいれるのかといえばそうではないだろう。それに対して積極的に関係して利益を追求していくことを考えていく必要はある。電子書籍事業が業界全体にとってプラスに働くために絶対に海賊版の普及を食い止めなければならない。その最も大きなきっかけとなりかねないのがスキャン事業であり、だからこそ重要だと考えている」(eBook User

大沢氏が問題視しているのは違法コピーあるいは海賊版であることが分かる。自炊代行業者が、裁断後の本の処分やスキャンデータの消去を適切に行わなければ、自炊代行業者を通じて違法コピーが流出するといった事態は考えられるだろう。

東野圭吾氏「売ってないから盗むのか! こんな言い分は通らない。私は電子書籍が普及しても、こうした違法スキャン業者はなくならないと個人的に思っている」(eBook User

自炊代行=違法スキャン=違法コピー、というのは、ちょっと短絡的に過ぎるように思う。売っていないからスキャンしているのだが、それを「盗む」と言われてはなあ、という感じである。

弘兼憲史氏「利便性を優先すると制作側にダメージがあることを知ってほしい」(EXドロイド

言葉が省略されすぎていて真意がよく分からないが、まあ海賊版懸念ということで大沢氏と同じ主張か。

浅田次郎氏「裁断された本は正視に堪えない。業者が増え、今提訴しなければならないと思った」(YOMIURI ONLINE

この浅田氏のコメントは、明らかに自分で自炊(馬から落馬みたいな言い方だが)している者も敵視している。提起している訴訟の内容を理解していないのではないか。

結局、最後の浅田氏のコメントを除いて、スキャンデータの拡散による違法コピーあるいは海賊版を懸念しているらしい。しかしそれは自炊「代行業者」に限らず、自炊をしている個人でも可能だ。

冒頭にリンクを示したプレスリリースの末尾にはこうある。

本訴を通じて、あるべき電子書籍の流通とルールの姿について、議論と理解が進むことを願っています。

議論が進んだらどうなるか。

もともと電子書籍やスキャンデータ(もっと広くクラウドデータと言ってもいい)の複製権の問題は現行の著作権法の解釈でどうにかなる話ではなく、その意味では立法に委ねざるをえない話である。

まったくの素人意見だが、おそらくこの訴訟自体は原告勝訴となるだろう。こわいのは、その原告の真意が上記のとおり自炊「代行」に限らないこと、そして立法する者の中心たる政権与党が、ヘンなところで機を見るに敏な人々だということだ。

どうなることやら。

2011年12月17日 (土)

保険金不払い問題の収束

金融庁から生命保険会社10社に対して2008年7月に発出されていた、保険金不払いに関する業務改善命令が、ようやく収束を迎えた。

業務改善命令を発出した生命保険会社10社の改善状況について

「保険金不払い問題」という表現が人口に膾炙しているのでここでもそれを使うが、「不払い」と一括りにしてしまうと本質を見誤る。いわゆる「不払い」は、内容としては3つに分けられる。

不適切不払い

本来保険金等を支払うべきであったにもかかわらず、支払いがなされていなかったもの。

支払漏れ

保険金等の請求に必要な診断書等に入院、手術に関する情報の見落とし又は見誤り等により、本来、支払われるべき保険金等が支払われていなかったもの。

請求案内漏れ

診断書等に記載された内容から、請求を受けた保険金等以外にも支払える可能性がある保険金等があったにもかかわらず、契約者等へ請求が可能な保険金等があることを案内していなかったことから、他に支払可能であった保険金等が支払われていなかったもの。

「不適切不払い」と「支払漏れ」の違いがちょっと分かりにくいが、「不適切不払い」は故意、「支払漏れ」は事務ミス、と考えるのがおおむね当てはまると思う。(「請求案内漏れ」については後述する)

生命保険会社10社に出されていた業務改善命令は「支払漏れ」と「請求案内漏れ」に関するもので、「不適切不払い」は含まれない。つまり、法令に違反した行為を罰する命令というよりは、支払のミスをなくすための改善取り組みを求める命令だった。

この結果として、各社(あるいは業界全体)がさまざまな対応を行うようになった。例えば次のようなものだ。(すべての会社が対応しているわけではない)

  • 入院給付金などの請求に対して、結果的に支払わないと会社が判断したときに、入院診断書の発行費用を返金する
  • 支払わないという判断に契約者が納得できない場合、無料で弁護士に相談できる
  • 診断書の電子化のためのシステム導入を行う病院に対して、導入費用の補助を行う

しかしこれらにもまして大きな変化を与えたのは「請求案内漏れ」に対する意識の変化だと思う。

現在の保険の多くは、主契約にさまざまな特約がついており、それぞれ給付内容が違っている。ガンで入院したので入院給付金の請求をしようと思って保険証券を見たら、三大疾病保障特約でも保険金が支払われる、ということがあったりする。

これまでは、入院給付金の請求があったら入院給付金を支払い、三大疾病保険金の請求があったら三大疾病保険金を支払っていた。逆に言えば、入院給付金の請求だけでは三大疾病保険金は支払われなかった。

「請求案内漏れ」は、この点に対する改善命令だった。会社としては三大疾病保険金を支払う必要があることが認識できるので、支払う必要性を認識できるように体制を構築しなさい、ということだ。

私がこの「請求案内漏れ」を大きな変化だと思うのは、それまでは「請求があって初めて支払う」という受身の姿勢だったものを、支払う必要があるものが他にないかを保険会社が判断する、という能動的な姿勢に転換する、大げさに言えばパラダイム転換を促すものだったと考えるからだ。

そしてそれは、今回の東日本大震災で生かされたと思う。

震災に関するさまざまな特別取扱いの中で、いくつかの会社が入院給付金について特別取扱いを行なっている。以下は日本生命の例だ。

7.入院給付金のお取扱いについて

災害救助法適用地域(※)の被災のご契約者の方々を対象として、入院給付金を以下のとおりお取扱いいたします。

(1)このたびの地震によりケガで入院された場合
被災地の状況をふまえ、このたびの地震によりケガで入院されたお客様が、給付金請求に必要な診断書のお取寄せができない場合には、病院または診療所の発行した領収証等をご提出いただくことで入院給付金をお支払いいたします。
なお、被災地等の事情により直ちに入院することができず、一定期間経過後に入院された場合は、お申出をいただくことにより、ケガをされた日から入院を開始したものとして入院給付金をお支払いいたします。

(2)必要な入院治療を受けられなかった場合(ケガ、病気の場合を含む)
被災地では、病院が満床である等の理由により、本来入院による治療が必要なお客様が、当初の予定より早い退院を余儀なくされるケースや、入院できず自宅・避難所等で療養されるケースが想定されます。このような場合には、本来必要な入院期間について医師の証明書等をご提出いただくことで、当該期間についても入院されたものとして入院給付金をお支払いいたします。

(※)大量の帰宅困難者が発生したこと等に伴い災害救助法が適用された東京都やその他一部地域を除く。

震災の規模から考えればこのような対応は当然、という話もあるが、「入院していなくても入院給付金を支払う」という考え方は、請求案内漏れへの対応がなければ発想として出て来なかったのではないか、と私は思っている。

「不払いはなくならない」「保険会社の体質は変わっていない」という意見も見られるが、変わっているのですよ。


業務改善命令が発出された当時の保険課長による本。不払い問題を切り口にした行政システムの分析が中心テーマなので、不払い問題そのものを理解するには、(一般に入手可能かどうかは知らないが)日本保険・年金リスク学会(JARIP)の「リスクと保険」第5号(2009年3月)所収の「保険金不適切不払い・支払漏れとその行政対応」(保井俊之)のほうがよい(同時期のアクチュアリージャーナルにも収められている)。

2011年12月15日 (木)

書評:金融リスク管理の現場


三井住友銀行で長らくリスク管理に携わってきた著者の熱い思いが凝縮されたような本である。

タイトルどおり、まさにリスク管理をやっている者が「あるある!」とうなずいてしまうような内容が数多く含まれている。

例えば、規制資本のためのリスク計量が高度化した結果、逆に規制に沿っていればそれでよしとする意識になってしまうとか、自社のリスクリミットの枠内に収まるようなストレスシナリオしか作らなくなってしまうとか。

筆者はそれらにビシビシと鞭を入れ、さらに最近の資本規制の流れそのものについても、実体経済への影響(金融機関が金融機関としての役割を果たせなくなるという懸念)から疑問を呈している。

少々残念な点を挙げると、会計についての理解が浅いように思われる記述が見られる(時価会計の反対語は発生主義会計か?)ことと、最後に近づくにつれ筆者の檄がどうにも「上から目線」に思えてしまうことだ。

特にストレスシナリオの設定については「想定される最悪を考えろ」と言われるが、これが相当に難しい。現下の金融環境では、とめどなく、それこそ経済ホラー小説でも書けそうな最悪シナリオをいくらでも想定できてしまう。加えて日本では震災という物理的ダメージも、最悪シナリオを上書きする事象として存在する。リスク管理担当者にとっては「考えろと言われても…」というのが正直なところだろう。

ということで、この本に答えや指針を期待すると、やや肩すかしを食うように思う。しかし、自分たちのリスク管理に何が欠けているのか、何が必要かを考えるきっかけを与えてくれる本と言えるだろう。

2011年12月 7日 (水)

書評:戦後生命保険システムの改革


面白い!

とこの本を評する人間もあまりいないと思う。はっきり言って、中身は論文なのだから。

しかし、戦前~戦後の生命保険システムの変遷のダイナミズムに、ついつい読みふけってしまった。

さて、本書の目次は以下のとおり。

  • 序章 問題意識・方法・本書の構成
  • 第1章 戦時経済と保険監督行政
  • 第2章 戦後再建期の生命保険産業
  • 第3章 戦後生保システムの定着
  • 第4章 戦後生保システムにおける変質
  • 第5章 生命保険産業の効率性と規模の経済性
  • 第6章 戦後生保システムの変革の可能性

当初商工省管轄下であった保険行政は、戦時体制への移行とともに大蔵省に移管される。そしていわゆる1940年体制の下で画一化が進み、戦後の護送船団へとつながっていく。

「1940年体制」「護送船団」といった言い方は、あたかも行政が旗を振って進めたかのような印象がある。しかし必ずしも行政主導とは限らず、むしろ業界が選択した部分もあったことが語られている。

そして戦後の日本における生保経営の最大の特徴である、大量の女性営業職員による販売である。「新版 生命保険入門」では、女性営業職員による運営が戦争未亡人の雇用によるものであるという説を「俗説」としているが、その出典はどうやらこの本にありそうだ。本書は次のように言う。

ある生保の当時の男性販売統括者へのヒアリングを行った際の証言から判断すると、女性営業職員が増大し始めたのは昭和30年代になってからであった。(中略)他方、戦争未亡人説については、戦争未亡人が経済的自立をはかって生命保険会社の営業職員となった事例は確かにあったであろうが、生命保険産業の維持存続さえ難しかった戦後期に、営業職員として大量採用されたとは考えにくいように思われる。

実際、敗戦を経て、生命保険会社が大量に保有していた(特に外地の)債券は軒並み紙くずと化したため、生保は一定額以上の保険金を一旦棚上げにして、さらに第二会社を作って再建をしなければならなかった。そこで大量採用をする余力があったかと言えば確かに疑問ではあるが、裏付けとなる統計がないのが残念である。

ともかく、料率の画一化が(行政・業界いずれの思惑によるものかはさておき)できあがって以降は、商品に差がないことから「数は力」と化した。営業職員を大量に採用した会社が、業績・収益等の面で優位に立ち、それがますます固定化されるという状況が50年以上続いた。少なくとも業法改正の1996年より前、「大手3社」「大手5社」「大手8社」という表現は、生保に関してはあらゆる指標で同じ序列になっていた。

本書は1997年の出版なので、これ以降、バブル期になって中小生保に序列の変質が起こっている(変額保険や個人年金や一時払養老による)ところで分析は終わっており、その後そういった会社がどのような末路を辿ったのかは書かれていない。それだけに、その後を知ってから読むことに感慨深いものがある。

繰り返しになるが、本書は新保険業法施行直後の出版である。そのため最後の章では、新保険業法の施行によって開かれる新しい世界への期待感が書かれている。

新保険業法は、前述したようにバブルの影響で後退したと批判されているが、将来の価格競争の導入を見据えて、そのための公正なルール作りとシステミックリスクを極力ふせぐような安定性を模索する意図がそこに見てとれることは確かである。この転換点が本当に戦後保険システムの変革に結実するか否かは、業法の運用に関して予想以上に大きな裁量権を与えられた監督官庁の方針に大いに依存している。われわれは、戦後生命保険システムにおける企業競争の基本ルールが存続してゆくのか否かを引き続き検討していく必要がある。

さて、15年経った今、本書に語られた期待は実現できているのだろうか?

2011年12月 4日 (日)

メモ:第三分野責任準備金

法令だけでは分かりにくいので、当時の検討経緯も含めたリンクをまとめておく。
(どちらかというと自分が使うためのただのリンク集です)

検討経緯

検討チーム設置(2005年2月)

第三分野の責任準備金積立ルール・事後検証等に関する検討チームについて

検討チームの報告書(2005年7月)

「第三分野の責任準備金積立ルール・事後検証等について」の公表について

パブリックコメントに付された法令案(2006年2月)

保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)等の公表について(第三分野の責任準備金等ルール整備関係)

パブリックコメントの結果(2006年3月)

「保険業法施行規則等改正案(第三分野の責任準備金等ルール整備関係)の公表に対する意見募集の結果」及び「見直し後の規則等改正案」の公表について

関係法令

危険準備金関係:平成10年大蔵省告示第231号

負債十分性テスト関係:平成12年金融監督庁・大蔵省告示第22号

商品開発時に第三分野基礎率の計理人確認を求める規定:保険業法施行規則第6条第1項第11号

基礎率変更権の留保に求められる基準:保険業法施行規則第11条第7号イ

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