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2011年12月15日 (木)

書評:金融リスク管理の現場


三井住友銀行で長らくリスク管理に携わってきた著者の熱い思いが凝縮されたような本である。

タイトルどおり、まさにリスク管理をやっている者が「あるある!」とうなずいてしまうような内容が数多く含まれている。

例えば、規制資本のためのリスク計量が高度化した結果、逆に規制に沿っていればそれでよしとする意識になってしまうとか、自社のリスクリミットの枠内に収まるようなストレスシナリオしか作らなくなってしまうとか。

筆者はそれらにビシビシと鞭を入れ、さらに最近の資本規制の流れそのものについても、実体経済への影響(金融機関が金融機関としての役割を果たせなくなるという懸念)から疑問を呈している。

少々残念な点を挙げると、会計についての理解が浅いように思われる記述が見られる(時価会計の反対語は発生主義会計か?)ことと、最後に近づくにつれ筆者の檄がどうにも「上から目線」に思えてしまうことだ。

特にストレスシナリオの設定については「想定される最悪を考えろ」と言われるが、これが相当に難しい。現下の金融環境では、とめどなく、それこそ経済ホラー小説でも書けそうな最悪シナリオをいくらでも想定できてしまう。加えて日本では震災という物理的ダメージも、最悪シナリオを上書きする事象として存在する。リスク管理担当者にとっては「考えろと言われても…」というのが正直なところだろう。

ということで、この本に答えや指針を期待すると、やや肩すかしを食うように思う。しかし、自分たちのリスク管理に何が欠けているのか、何が必要かを考えるきっかけを与えてくれる本と言えるだろう。

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