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2012年3月

2012年3月24日 (土)

保険会社の名前

NKSJグループ傘下の株式会社損害保険ジャパンと日本興亜損害保険株式会社が2014年度上期に合併し、「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」となることが発表されました。

損保ジャパンと日本興亜損保の合併に関する基本合意について (PDF)

ジャパンと日本が被ってるじゃないか、という話題はさておいて、保険会社の社名について触れます。

保険業法によって、保険会社に対しては用いるべき名前が規定されています。

保険業法第7条第1項
保険会社は、その商号又は名称中に、生命保険会社又は損害保険会社であることを示す文字として内閣府令で定めるものを使用しなければならない。

具体的には、生命保険会社については「生命保険」という文字を、損害保険会社については

  • 火災保険
  • 海上保険
  • 傷害保険
  • 自動車保険
  • 再保険
  • 損害保険

のいずれかを用いなければならない、とされています。

で、調べてみました。

現在、日本の損害保険会社(外国損害保険行免許を持つ会社を除く。)は28社ありますが、その名称の内訳は次のようになっています。

  • 火災保険:4社
  • 海上保険:6社
  • 傷害保険:0社
  • 自動車保険:0社
  • 再保険:2社
  • 損害保険:16社

「損害保険」を使っている会社が最も多くなっています。これは、新設の会社や、合併で新社名となった会社が軒並み「損害保険」を使っていることによるものです。

「海上保険」が6社ありますが、これらはすべて「○○火災海上保険株式会社」の形の名称となっていますので、海上保険を専門としているわけではありません。

逆に「○○海上火災保険」の形の名称は、現在は三井住友海上火災保険株式会社のみとなっています。東京海上グループの中核損保の商号は「東京海上日動火災保険株式会社」ですので、保険業法上の規制に対応する文字は「火災保険」ということになります。

「傷害保険」「自動車保険」を使った会社は1社もありませんが、「傷害」「自動車」と用いた会社なら、それぞれ「ジェイアイ傷害火災保険株式会社」「セゾン自動車火災保険株式会社」があります。

また、「株式会社○○」(いわゆる「前株」)という商号か「○○株式会社」(いわゆる「後株」)という商号か、という点では、前株の損害保険会社は現在「株式会社損害保険ジャパン」だけです。したがって今回の合併によって、前株の損害保険会社は(ほかに新設や商号変更がない限り)存在しなくなります。

さて、今回のNKSJグループ内の合併でできる会社名は「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」ですが、このように「損害保険○○株式会社」と、「損害保険」(など損害保険会社を表す文字)と「株式会社」が離れている会社は、現在のところ存在していません。

一方、生命保険会社のほうは、1社を除いてすべて「○○生命保険株式会社」または「○○生命保険相互会社」の形の商号になっています。例外の1社とは「株式会社かんぽ生命保険」で、唯一の前株商号の生命保険会社です。

保険会社のように商号に制約のある会社の場合、並び順をあえて変えることで違和感をもたせて記憶に残ることを狙うか、自然な順序で覚えやすくするか、商号変更などの際には担当者はいろいろ考えたのかな、などと想像します。

そうそう、以上のことは保険会社の名前の話なのでみなさんにはあまり関係のないことでしょうが、保険業法は、次のようにも規定しています。

保険業法第7条第2項
保険会社でない者は、その商号又は名称中に保険会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

この規定には過料100万円以下という罰則もあります。保険代理店のみなさん、ご存知とは思いますが、法人成りの際に、法人名にうっかり「生命保険」や「損害保険」と入れたりなさらぬように。

2012年3月18日 (日)

保険滞納訴訟・最高裁判決

以前の書評エントリでもちょっと触れましたが、保険料を払い込まずに失効したのは消費者契約法に反し無効、とされた東京高裁の判決(2009年9月30日)の上告審判決が、3月16日に出ていました(判決文PDF)。

原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

ということで、上告人であるソニー生命の勝訴ということになります。

東京高裁判決のときには会社名を含めて比較的大きく報道されていたのですが、最高裁で逆転しても全然報道がないですね…

訴訟となった事案をみてみましょう。

契約者(=被保険者)は2004年8月に医療保険に、2005年3月に定期保険に加入しています。そして、この2件の契約が、2007年2月に失効しました。

実はこれらの契約はその前にも2005年9月と2005年12月の2度、失効しています。このときは復活の手続きをとることにより、契約が継続しました。

契約者は今回も復活の手続きをとろうとしたのですが、復活の際には契約時と同じく医的診査が必要になります。契約者は2006年に大腿部の一部が壊死しており、今回の復活は認められませんでした。

そこで「無催告で失効する約款の規定は公序良俗違反で無効」との訴えを起こした、というわけです。

さて、以下は私の私見です。

訴訟の対象となった契約がこのような経緯をたどっていることから、契約者は保険契約がいつ失効するか、復活のための条件は何かということに関して、十分に理解していたものと考えられます(実際、過去に2回、失効→復活を行なっていますから)。

従って今回の訴訟は「約款にそんな規定があるなんて知らなかった!ひどい!」というタイプのものではなく、ダメもとで消費者契約法を持ち出した、という感じがしてなりません。

高裁判決のニュースは、業界的には「ありえねー!」的な驚きをもって受け止められましたが、経緯をよくよく見てみるとなおさらその気持ちが強くなります。その意味では今回の最高裁判決は当然と思います。

むしろ驚いたのは、最高裁判決が全員一致でなく、反対意見があったことです(しかも裁判長が!)

反対意見の趣旨は、

  • 失効までの猶予期間が1ヶ月というのは短すぎる
    (督促通知がなされてからは2週間しかない)
  • 保険料振替貸付の制度は本件には意味がない
  • 保険料払い込みの督促通知がなされることが保証されていない
    (ちなみに本件では督促通知はなされています)

という理由から、次のように結論づけています。

本訴訟を契機に,保険会社において,契約の解除のために通常行われているような催告が至難ということであるとしても,少なくとも,督促通知を行うべきことを約款上に明記するなどこれを法的に義務付けるようにすべきである。その場合,督促通知の内容,体裁は,例えば,猶予期間を経過すれば失効する(「失効することがある」ではなく)旨を他の字より太文字で,かつ,その箇所に
太い赤下線を施すなど,保険契約者の注意を喚起するに十分な記載をするような方向での取組を進めることを期待したい。外国の立法例では,催告ないしは書留郵便による督促を法的に義務付けているものもあるようであり,そのことよりすれば,上記のようなことは,保険会社に対して難きを強いるものとは到底思えないところである。

うん、まあ、言うのは自由なのですが、あまり実効性が上がる気はしないですね。

義務付けられているかどうかに関係なく、実態として、各社とも保険料払い込みの督促はしっかりやっているはずです。いわゆる不払い問題でも失効契約の解約返戻金は話題になりましたし、そもそも保有契約が減少傾向にある中では、今ある契約をつなぎとめるための努力をするのは当然ですから。

あとはまあ、猶予期間を多少延長することも考えられなくはないですが、例えば猶予期間を2ヶ月にすると、3ヶ月分の保険料の払い込みが必要になります。つまり猶予期間を延ばしても、後で払い込む負担が大きくなるだけの話なので、それによって大きく改善することはないように思います。

反対意見ではこうも言っています。

だが,保険約款の消費者契約法10条該当性を論ずる局面では,ひとり企業にとっての経済合理性等から考えられるべきではなく,たとえコスト減が制限され,それが全体の契約者等の負担にはね返るような事態になるとしても,個々の消費者としての保険契約者の目線や立場でも議論が進められるべきであろう。

うーん、この件は「全体の契約者等の負担にはね返るような事態」になってまで保護すべきものなのでしょうか。

「保険料を払わない人も保障するために保険料を上げます」と言ったら、「まず払わない奴に払わせるのが先だろゴルァ」と怒られると思うのですが…

いずれにせよ、これが多数意見でなくてよかったな、というのが正直なところです。

2012年3月13日 (火)

資産運用比率規制の撤廃

情報がやや遅くなってしまいましたが、2月29日に金融庁からパブリックコメントが出ています。

「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について

内容は以前のエントリでご紹介したとおり、「金融庁アクションプラン」の一環として行われるもので、いわゆる3-3-2規制を撤廃するものです。当時の私は「保険業法施行規則の改正だけで済むのか?」と書いていましたが、第48条と第140条を削除するだけで済ませてますね…

これによって保険業法第97条の2第1項の「内閣府令で定めるところにより計算した額」というのが空振り規定となります。

株式の上限3割・外貨建資産の上限3割・不動産の上限2割の3-3-2規制は撤廃されますが、保険業法第97条の2(および保険業法施行規則第48条の3)に規定する同一人規制は残ることになります。これは集中リスクを排除する観点から存置、ということなのでしょうね。

それにしても「金融庁アクションプラン」の一環として以前から決まっていたこととはいえ、AIJ関係でにぎやかなタイミングで出たのはちょっと微妙ですね。年金資産の運用規制の緩和も、1997年の5-3-3-2規制(安全性の高い資産5割以上、株式3割以下、外貨建資産3割以下、不動産等2割以下)の撤廃から始まったのですから…

しかし、個人的にはこの規制撤廃には賛成です。運用手段を規制することが必ずしもリスクの抑制にはならないし、むしろ何か起こった時には運用の自由度が高いほうがリスク回避の行動も取りやすいと思います。何より「規制上こうせざるを得なかった」と、規制を言い訳にすることができないので、自己責任原則が貫徹します。

逆にこう考えると、AIJ問題で規制強化を唱える人は、むしろ自分達が責任を取らない言い訳を探しているかのようにも感じます…
(AIJについては実態解明が途上ですので、これ以上はコメントしません)

2012年3月 4日 (日)

受ける、とる、なる

アクチュアリーが「儲かる資格」として注目されているようです。

まめ速:後輩にもっとも儲かる資格を聞かれた

第1位だそうで。名誉なことです(皮肉)。

さて、ネットを見てみると、「アクチュアリー」という単語はいくつかの使われ方をしています。

  • アクチュアリーを「うける」
  • アクチュアリーを「とる」
  • アクチュアリーに「なる」

最初の「うける」は、アクチュアリーの資格試験を受験する、ということですね。なんとなくですが、アクチュアリー試験を受けない人間に限って「アクチュアリー受ける」という表現を使っているような印象があります。「アクチュアリー受ける」という表現は、司法試験を受けることを「弁護士受ける」と言っているみたいで(それは弁護士事務所の就職面接を受けるということかな?)、個人的にはどうにも落ち着かない響きがあります。

アクチュアリーを「とる」は、当然ながら資格としてのアクチュアリーを取るということで、日本においては日本アクチュアリー会の正会員となることを一般的に指すように思われます。この表現は聞いても「うける」のような違和感は覚えませんが、学生の方々がよく使うような印象があります。

アクチュアリーに「なる」というのは、資格を取得することに加えて、アクチュアリーとして保険会社や信託銀行で勤務することも指す印象があります。まあ、どちらかというと順番は逆で、保険会社や信託銀行にアクチュアリー採用として入社・入行する(あるいはその方向で就職活動している)というのが先にあって、その上で資格取得のための勉強をするということでしょうが。

こう考えてみると、個人的には「とる」と「なる」の認識が比較的近く、「なる」が一番違和感がないのですが、それはよくないことなのかもしれません。「アクチュアリーになる」が一番違和感がないということは、アクチュアリーという資格と職業が密接に結びついているということで、職種を超えた広がりをもっていないことになるからです。

例えば証券アナリストという資格は、さまざまな金融機関の人が持っている資格です。当然、その中にはアナリストでない人も山ほどいて、アナリストを「とる」とアナリストに「なる」の間には明確な違いが存在します。

「儲かる資格」という認識のされ方は、私自身はあまり好きではないのですが、アクチュアリーに対する認識が広がって、「とる」の裾野が拡大すると思えば、あながち否定すべきものではないのかもしれません。

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