保険会社の名前
NKSJグループ傘下の株式会社損害保険ジャパンと日本興亜損害保険株式会社が2014年度上期に合併し、「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」となることが発表されました。
損保ジャパンと日本興亜損保の合併に関する基本合意について (PDF)
ジャパンと日本が被ってるじゃないか、という話題はさておいて、保険会社の社名について触れます。
保険業法によって、保険会社に対しては用いるべき名前が規定されています。
保険業法第7条第1項
保険会社は、その商号又は名称中に、生命保険会社又は損害保険会社であることを示す文字として内閣府令で定めるものを使用しなければならない。
具体的には、生命保険会社については「生命保険」という文字を、損害保険会社については
- 火災保険
- 海上保険
- 傷害保険
- 自動車保険
- 再保険
- 損害保険
のいずれかを用いなければならない、とされています。
で、調べてみました。
現在、日本の損害保険会社(外国損害保険行免許を持つ会社を除く。)は28社ありますが、その名称の内訳は次のようになっています。
- 火災保険:4社
- 海上保険:6社
- 傷害保険:0社
- 自動車保険:0社
- 再保険:2社
- 損害保険:16社
「損害保険」を使っている会社が最も多くなっています。これは、新設の会社や、合併で新社名となった会社が軒並み「損害保険」を使っていることによるものです。
「海上保険」が6社ありますが、これらはすべて「○○火災海上保険株式会社」の形の名称となっていますので、海上保険を専門としているわけではありません。
逆に「○○海上火災保険」の形の名称は、現在は三井住友海上火災保険株式会社のみとなっています。東京海上グループの中核損保の商号は「東京海上日動火災保険株式会社」ですので、保険業法上の規制に対応する文字は「火災保険」ということになります。
「傷害保険」「自動車保険」を使った会社は1社もありませんが、「傷害」「自動車」と用いた会社なら、それぞれ「ジェイアイ傷害火災保険株式会社」「セゾン自動車火災保険株式会社」があります。
また、「株式会社○○」(いわゆる「前株」)という商号か「○○株式会社」(いわゆる「後株」)という商号か、という点では、前株の損害保険会社は現在「株式会社損害保険ジャパン」だけです。したがって今回の合併によって、前株の損害保険会社は(ほかに新設や商号変更がない限り)存在しなくなります。
さて、今回のNKSJグループ内の合併でできる会社名は「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」ですが、このように「損害保険○○株式会社」と、「損害保険」(など損害保険会社を表す文字)と「株式会社」が離れている会社は、現在のところ存在していません。
一方、生命保険会社のほうは、1社を除いてすべて「○○生命保険株式会社」または「○○生命保険相互会社」の形の商号になっています。例外の1社とは「株式会社かんぽ生命保険」で、唯一の前株商号の生命保険会社です。
保険会社のように商号に制約のある会社の場合、並び順をあえて変えることで違和感をもたせて記憶に残ることを狙うか、自然な順序で覚えやすくするか、商号変更などの際には担当者はいろいろ考えたのかな、などと想像します。
そうそう、以上のことは保険会社の名前の話なのでみなさんにはあまり関係のないことでしょうが、保険業法は、次のようにも規定しています。
保険業法第7条第2項
保険会社でない者は、その商号又は名称中に保険会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
この規定には過料100万円以下という罰則もあります。保険代理店のみなさん、ご存知とは思いますが、法人成りの際に、法人名にうっかり「生命保険」や「損害保険」と入れたりなさらぬように。
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コメント
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とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: ビジネスマナーの会社組織 | 2012年4月10日 (火) 10時51分
参考になりました。ありがとうございました。
投稿: | 2020年9月 4日 (金) 15時24分