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2012年3月18日 (日)

保険滞納訴訟・最高裁判決

以前の書評エントリでもちょっと触れましたが、保険料を払い込まずに失効したのは消費者契約法に反し無効、とされた東京高裁の判決(2009年9月30日)の上告審判決が、3月16日に出ていました(判決文PDF)。

原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

ということで、上告人であるソニー生命の勝訴ということになります。

東京高裁判決のときには会社名を含めて比較的大きく報道されていたのですが、最高裁で逆転しても全然報道がないですね…

訴訟となった事案をみてみましょう。

契約者(=被保険者)は2004年8月に医療保険に、2005年3月に定期保険に加入しています。そして、この2件の契約が、2007年2月に失効しました。

実はこれらの契約はその前にも2005年9月と2005年12月の2度、失効しています。このときは復活の手続きをとることにより、契約が継続しました。

契約者は今回も復活の手続きをとろうとしたのですが、復活の際には契約時と同じく医的診査が必要になります。契約者は2006年に大腿部の一部が壊死しており、今回の復活は認められませんでした。

そこで「無催告で失効する約款の規定は公序良俗違反で無効」との訴えを起こした、というわけです。

さて、以下は私の私見です。

訴訟の対象となった契約がこのような経緯をたどっていることから、契約者は保険契約がいつ失効するか、復活のための条件は何かということに関して、十分に理解していたものと考えられます(実際、過去に2回、失効→復活を行なっていますから)。

従って今回の訴訟は「約款にそんな規定があるなんて知らなかった!ひどい!」というタイプのものではなく、ダメもとで消費者契約法を持ち出した、という感じがしてなりません。

高裁判決のニュースは、業界的には「ありえねー!」的な驚きをもって受け止められましたが、経緯をよくよく見てみるとなおさらその気持ちが強くなります。その意味では今回の最高裁判決は当然と思います。

むしろ驚いたのは、最高裁判決が全員一致でなく、反対意見があったことです(しかも裁判長が!)

反対意見の趣旨は、

  • 失効までの猶予期間が1ヶ月というのは短すぎる
    (督促通知がなされてからは2週間しかない)
  • 保険料振替貸付の制度は本件には意味がない
  • 保険料払い込みの督促通知がなされることが保証されていない
    (ちなみに本件では督促通知はなされています)

という理由から、次のように結論づけています。

本訴訟を契機に,保険会社において,契約の解除のために通常行われているような催告が至難ということであるとしても,少なくとも,督促通知を行うべきことを約款上に明記するなどこれを法的に義務付けるようにすべきである。その場合,督促通知の内容,体裁は,例えば,猶予期間を経過すれば失効する(「失効することがある」ではなく)旨を他の字より太文字で,かつ,その箇所に
太い赤下線を施すなど,保険契約者の注意を喚起するに十分な記載をするような方向での取組を進めることを期待したい。外国の立法例では,催告ないしは書留郵便による督促を法的に義務付けているものもあるようであり,そのことよりすれば,上記のようなことは,保険会社に対して難きを強いるものとは到底思えないところである。

うん、まあ、言うのは自由なのですが、あまり実効性が上がる気はしないですね。

義務付けられているかどうかに関係なく、実態として、各社とも保険料払い込みの督促はしっかりやっているはずです。いわゆる不払い問題でも失効契約の解約返戻金は話題になりましたし、そもそも保有契約が減少傾向にある中では、今ある契約をつなぎとめるための努力をするのは当然ですから。

あとはまあ、猶予期間を多少延長することも考えられなくはないですが、例えば猶予期間を2ヶ月にすると、3ヶ月分の保険料の払い込みが必要になります。つまり猶予期間を延ばしても、後で払い込む負担が大きくなるだけの話なので、それによって大きく改善することはないように思います。

反対意見ではこうも言っています。

だが,保険約款の消費者契約法10条該当性を論ずる局面では,ひとり企業にとっての経済合理性等から考えられるべきではなく,たとえコスト減が制限され,それが全体の契約者等の負担にはね返るような事態になるとしても,個々の消費者としての保険契約者の目線や立場でも議論が進められるべきであろう。

うーん、この件は「全体の契約者等の負担にはね返るような事態」になってまで保護すべきものなのでしょうか。

「保険料を払わない人も保障するために保険料を上げます」と言ったら、「まず払わない奴に払わせるのが先だろゴルァ」と怒られると思うのですが…

いずれにせよ、これが多数意見でなくてよかったな、というのが正直なところです。

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