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2012年7月

2012年7月22日 (日)

更新:保険関係法規集

保険関係法規集を更新しました。

今回は7月19日公布の保険業法施行令・保険業法施行規則その他の改正を反映したもので、3月31日付で公布された「保険業法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第23号)を受けるものになります。7月20日から施行。

内容の主なものは保険会社のグループ経営に関する規制の緩和です。

保険業法では保険会社が持つことのできる子会社を限定している(第106条)ことから、日本の保険会社が外国の保険会社を買収するような場合、保険業法で許されない子会社を売却してからでないと買収ができないこととなり、事業展開の妨げとなることがありました。

今回の改正はこれを緩和し、買収の場合には保険業法で許されない子会社についても5年に限り継続保有を認めることとしたものです(事情により延長も可能)。

また、保険契約の移転において、その手続き中、移転元の会社は移転対象の契約と同種の保険を販売することが禁止されていましたが、この禁止規定が撤廃されました。ただし販売を継続する場合は、契約した直後に別の保険会社に移転してしまうこととなるため、保険契約者に対してその旨の承諾を求めることとなっています。

以下は保険会社の今回の法令改正に関係する資料のリンクです。

少額短期保険業に関する改正内容については平成25年4月1日施行なので、また後日。

2012年7月12日 (木)

生命保険信託

このブログをご覧になった方から質問をいただきました。要旨だけ書きます。

「生命保険信託」というものがあると聞きましたが、生命保険会社か信託銀行のどちらかが破綻したら保障はどうなるのでしょうか。

まずお断りしておきますが、私はこのようなご質問に責任を持ってお答えできる立場にはありませんので、実際に行われる場合には専門家へのご確認をお忘れなくおねがいします。

さて、挙げておられるのはプルデンシャル生命と中央三井信託(現三井住友信託)の「生命保険信託」のことです。

日本初、業種の枠を超え「生命保険信託」を共同開発 (PDF)

安心サポート信託(生命保険信託型)

これは、保険金受取人が幼かったり心身に障害を持っていたりして、受け取った死亡保険金をうまく使うことができないと考えられるときに、保険金受取人を信託銀行にして、本来の受取人がうまく保険金を活用できるように信託銀行がいろいろと対応してくれる、というものです。

本来の受取人に十分な能力がないときに代わりに誰かに対応してもらう方法としては、信託以外にも親権者や後見人を立てる方法がありますが、その場合、親権者や後見人が保険金を持ち逃げする(あるいは本来の受取人のために使わない)リスクがあります。

信託の場合、保険金の所有権は信託銀行にあるため、そのようなリスクがありません。実際、上記のプルデンシャル生命のプレスリリースにおいても、親権者や後見人が財産交付の指図をする(つまり親権者や後見人の存在が前提とされている)のですが、保険金の所有権は彼らにはないため、持ち逃げはできません。

では質問の件ですが、生命保険会社が破綻した場合と、信託銀行が破綻した場合に分けて考えましょう。

生命保険会社が破綻した場合

死亡保険金を受け取る前に生命保険会社が破綻した場合が問題になります。このときは、保険業法などで、破綻時点の責任準備金等の90%まで補償されます(ただし運用実績連動型保険の特定特別勘定部分を除く。また予定利率3%以上の高予定利率契約の補償率は90%を下回ることがある)。

何のことやらさっぱり、でしょうが、「90%補償」は保険金額のことではありません。したがって、保険金1000万円の保険に入っている場合であっても、900万円が保証されているわけではない、という点はぜひご理解ください。

生命保険信託において特に注意が必要と思われるのは、信託を行うに際して最低保険金額が定められていることです。プルデンシャル生命と三井住友信託の場合、原則として3,000万円以上とされています。保険会社の破綻によって保険金が削減された結果、この最低保険金額を下回り、結果として信託が行われない可能性はあります。

信託銀行が破綻した場合

信託銀行は、信託財産を分別管理することが法律で規定されています。したがって信託銀行が倒産しても、債権者は信託財産を差し押さえることができません。したがって信託銀行が破綻した場合であっても、生命保険信託により信託された死亡保険金は保全されます。

ただし、信託された死亡保険金の管理・運用を行う者がいなくなってしまうため、その後の信託事務がどうなるかはよく分かりません。他の信託銀行が承継し、信託事務を行うのではないかと想像されますが、その点が明確に確認できるような記載は見つかりませんでした。

さて、ここからは余談になりますが、実は生命保険信託は信託銀行と組まなくても、生命保険会社だけで行うことができます(保険業法中では「保険金信託」と言っています)。

保険業法第99条(業務の範囲等)
3. 生命保険会社は、第97条及び前条の規定により行う業務のほか、第97条の業務の遂行を妨げない限度において、信託業法の規定にかかわらず、その支払う保険金について、信託の引受けを行う業務(以下「保険金信託業務」という。)を行うことができる。

ただ実際には、保険金信託業務を行っている生命保険会社は存在しないと思います(この条項は旧保険業法においても存在しましたが、やはり実際にやっている会社はなかったと思います)。餅は餅屋、信託は信託会社ということなのでしょう。

以前に紹介した小説版「ラストマネー」の中でも、若くして多額の保険金を受け取った結果、自堕落な生活に陥る登場人物が出てきました。生命保険に加入する以上、万が一のときの保険金がムダにならないようにと願うのは自然なことに思えます。そう考えると、生命保険信託というのは一つの有効な答えになりうると思うのですが…理解が広まって、うまく活用される場面が広がるといいですね。

信託についてはこのあたりの本でのにわか勉強ですが、奥が深そうです。

2012年7月 7日 (土)

社員総代会と基金

7月3日、相互会社形態の保険会社で社員総代会が開催されました。

その中で、日本生命、明治安田生命、住友生命の3社が基金の増額を決議しました。

生保3社が基金積み増し 総代会で決議

基金というのは株式会社の資本金に相当しますが、最近は、基金は証券化されて発行されることが多くなっています。例えば日本生命のアニュアルレポート(去年のものですが)の「基金拠出者の状況」を見ると、拠出者は

  • 日本生命2009基金特定目的会社
  • 日本生命2005基金特定目的会社
  • 日本生命2008基金特定目的会社
  • 日本生命2010基金特定目的会社

と、すべて特定目的会社になっています。

ここまで読んで「?」と思われた方もいるかもしれません。

「相互会社の基金は株式会社の資本金に相当する」と書きましたが、株式会社において株式を証券化するという話を聞いたことはありません。

そう、基金は有価証券ではないので、わざわざ証券化する必要があるのです。

基金は拠出を受けてから一定期間後に返済(保険業法上の用語では「償却」)されます。その意味では劣後債務です。有価証券でないことから、むしろ劣後ローンに近いものといえます。B/Sの純資産の部に計上されるので、劣後性は最も高いことになります。

さらに保険業法上、次のような制約があります。

第56条(基金償却積立金の積立て)
基金を償却するときは、その償却する金額に相当する金額を、基金償却積立金として積み立てなければならない。(以下略)

つまり100億の基金を取り入れたら、返済するときには100億の内部留保をしなければならないということです(したがって返済直前には200億が必要になります)。

したがって基金の内容を表すように表現すると「内部留保特約付き最劣後金銭消費貸借契約」ということになります。

相互会社にとって債務ということは拠出者にとって資産ですから、証券化に際しては、この基金を裏付資産として証券を発行します。一般の証券化は資産保有者の信用力から資産を切り離すのが目的であることが多いので、そもそもの目的が異なっているところに違和感をおぼえる人がいるかもしれません。

最後に参考として証券化した基金の目論見書のリンクを張っておきます(販売は終了しています)。日本生命の例ですが、他の基金証券化もスキーム等はほぼ同様だと思います。

日本生命2011基金特定目的会社

EDINETの有価証券届出書なども参照ください。

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