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2012年7月12日 (木)

生命保険信託

このブログをご覧になった方から質問をいただきました。要旨だけ書きます。

「生命保険信託」というものがあると聞きましたが、生命保険会社か信託銀行のどちらかが破綻したら保障はどうなるのでしょうか。

まずお断りしておきますが、私はこのようなご質問に責任を持ってお答えできる立場にはありませんので、実際に行われる場合には専門家へのご確認をお忘れなくおねがいします。

さて、挙げておられるのはプルデンシャル生命と中央三井信託(現三井住友信託)の「生命保険信託」のことです。

日本初、業種の枠を超え「生命保険信託」を共同開発 (PDF)

安心サポート信託(生命保険信託型)

これは、保険金受取人が幼かったり心身に障害を持っていたりして、受け取った死亡保険金をうまく使うことができないと考えられるときに、保険金受取人を信託銀行にして、本来の受取人がうまく保険金を活用できるように信託銀行がいろいろと対応してくれる、というものです。

本来の受取人に十分な能力がないときに代わりに誰かに対応してもらう方法としては、信託以外にも親権者や後見人を立てる方法がありますが、その場合、親権者や後見人が保険金を持ち逃げする(あるいは本来の受取人のために使わない)リスクがあります。

信託の場合、保険金の所有権は信託銀行にあるため、そのようなリスクがありません。実際、上記のプルデンシャル生命のプレスリリースにおいても、親権者や後見人が財産交付の指図をする(つまり親権者や後見人の存在が前提とされている)のですが、保険金の所有権は彼らにはないため、持ち逃げはできません。

では質問の件ですが、生命保険会社が破綻した場合と、信託銀行が破綻した場合に分けて考えましょう。

生命保険会社が破綻した場合

死亡保険金を受け取る前に生命保険会社が破綻した場合が問題になります。このときは、保険業法などで、破綻時点の責任準備金等の90%まで補償されます(ただし運用実績連動型保険の特定特別勘定部分を除く。また予定利率3%以上の高予定利率契約の補償率は90%を下回ることがある)。

何のことやらさっぱり、でしょうが、「90%補償」は保険金額のことではありません。したがって、保険金1000万円の保険に入っている場合であっても、900万円が保証されているわけではない、という点はぜひご理解ください。

生命保険信託において特に注意が必要と思われるのは、信託を行うに際して最低保険金額が定められていることです。プルデンシャル生命と三井住友信託の場合、原則として3,000万円以上とされています。保険会社の破綻によって保険金が削減された結果、この最低保険金額を下回り、結果として信託が行われない可能性はあります。

信託銀行が破綻した場合

信託銀行は、信託財産を分別管理することが法律で規定されています。したがって信託銀行が倒産しても、債権者は信託財産を差し押さえることができません。したがって信託銀行が破綻した場合であっても、生命保険信託により信託された死亡保険金は保全されます。

ただし、信託された死亡保険金の管理・運用を行う者がいなくなってしまうため、その後の信託事務がどうなるかはよく分かりません。他の信託銀行が承継し、信託事務を行うのではないかと想像されますが、その点が明確に確認できるような記載は見つかりませんでした。

さて、ここからは余談になりますが、実は生命保険信託は信託銀行と組まなくても、生命保険会社だけで行うことができます(保険業法中では「保険金信託」と言っています)。

保険業法第99条(業務の範囲等)
3. 生命保険会社は、第97条及び前条の規定により行う業務のほか、第97条の業務の遂行を妨げない限度において、信託業法の規定にかかわらず、その支払う保険金について、信託の引受けを行う業務(以下「保険金信託業務」という。)を行うことができる。

ただ実際には、保険金信託業務を行っている生命保険会社は存在しないと思います(この条項は旧保険業法においても存在しましたが、やはり実際にやっている会社はなかったと思います)。餅は餅屋、信託は信託会社ということなのでしょう。

以前に紹介した小説版「ラストマネー」の中でも、若くして多額の保険金を受け取った結果、自堕落な生活に陥る登場人物が出てきました。生命保険に加入する以上、万が一のときの保険金がムダにならないようにと願うのは自然なことに思えます。そう考えると、生命保険信託というのは一つの有効な答えになりうると思うのですが…理解が広まって、うまく活用される場面が広がるといいですね。

信託についてはこのあたりの本でのにわか勉強ですが、奥が深そうです。

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コメント

さっそく記事に取り上げていただきまして感謝感激です。
わかりやすくて大変勉強になりました。
参考本もぜひ読んでみたいと思っています。
ありがとうございました!

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