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2013年5月

2013年5月29日 (水)

続・生保決算

前回のエントリ「生保決算」に対して、「国内生保内勤」さんから以下のような質問をいただきました。ちょっと回答が長くなりそうだったので別エントリにしてみました。

はじめまして。私はとある生保に入社し、地方勤務し始めて数年の内勤職員です。

私は普段本社の方の話を直接聞くことがほとんどなく、ぜひ本社で数理をやっている方に国内生保の経営についてお聞きしたいことが2つありまして、

1つは円安と外債配当の関係ですが、生保は外債投資にあたり元本の大部分ないし全部(住友?)にヘッジをかけていますが、配当に対してはある程度オープンであり円安はプラスだという話を記事で見ました。これは株の増配や国債の金利水準の変化に比べると些末な影響でしょうか?

2つ目は保険料収入に関してですが、私はここ数年の決算を見ていると保有・新規ともに第三分野ANPの進展は限界が近づいているのかなという気がしていますが、内部からだとまだまだ次のタマ(商品)はいくらでもあるくらいの楽観的な考えなのでしょうか?

最初にお断りしますが、私は生保の「中の人」ではないです。ので、お答えできる内容も限定的であることをご承知ください。

では円安について。どの程度の影響になるか、実際に計算してみましょう。

為替レートは2012年3月末の82.19円/ドルから、2013年3月末には94.05円/ドルとなり、約14%の円安となっています。ただしこれは期末どうしを比較したものなので、利息配当金収入に関しては年間平均をとる必要があります。円安は12月以降に大幅に進んでいるため、年度平均だと5%ぐらいになります。

生命保険協会の統計によると、(1年古いですが)2011年度の外国証券利息配当金は生保43社計で約1.57兆円。これらがすべてヘッジされていないとすると、2011年度から2012年度にかけて平均で5%円安が進んだわけですから、その影響は1.57兆円の5%、約800億円になります。これは43社合計の経常利益(2.58兆円)を約3%押し上げることになります。

これに対して金利低下が利息収入に与える影響は、債券の入れ替えがどの程度起こるかに依存するため簡単には計算できませんが、ざっくり見積もってみましょう。10年国債のみを保有し、残存年数は1年、2年、…、10年が均等にあるものとします。つまり1年間に保有債券の1/10が入れ替わるとします。

10年金利の水準は2012年3月末と2013年3月末を比べるとほぼ半減していますが、これも年平均にならすと25%程度の低下になります。2011年度の公社債利息が約3兆円なので、この1/10が入れ替わり、入れ替わったものの利息が25%減るとすると、影響額は約750億円になります。

つまり、金利低下による国内債券の減収分を、外国証券の円安効果でほぼ補っていることになります。その意味では小さいとはいえない金額ですね。ただし、外国債券のクーポンがまったくヘッジされていないと仮定して、ですが。

なお、株式配当の影響ですが、株価は上がっているものの、増配を打ち出している会社はそう多くはないと思いますので、影響額の試算はパス。

次に第三分野ですが、私は中の人ではないので「次のタマ」がいくらでもあるかどうかは知りませんが、とりあえずは客観的なデータで見てみましょう。全社合計の第三分野の新契約年換算保険料の対前年増減の推移は以下のようになっています。(出典:インシュアランス統計号)

  • 2006年度 ▲15.9%
  • 2007年度 ▲1.2%
  • 2008年度 +5.8%
  • 2009年度 +6.0%
  • 2010年度 +2.2%
  • 2011年度 +2.3%

うーん、鈍化しているようなそうでもないような…?第三分野は給付が多様ですので、業界全体の数値をもって論じるのはうまくいかないのかもしれません。

いかがでしょうか。あまり答えになっていない部分もありますが、ご参考にしていただければ。

2013年5月28日 (火)

生保決算

5月24日、2012年度の主要生保の決算発表がありました。

生命保険協会の協会長を輪番で行なっている日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命が一般に「大手4社」と言われますが、このうち第一生命は上場会社のため、いわゆる「45日ルール」に則って5月15日にすでに決算発表を行なっていますが、それ以外の3社が24日に発表を行いました。その他の多くの生命保険会社も24日に決算発表を行なっています。

報道での扱いを見てみましょう。

円安・株高が、運用収益の改善→逆ざや改善、含み益の増加→財務基盤強化、の両面で好決算につながっていると評されている論調が多いようです。

ただ、逆ざやはインカム収益をベースに計算するので、株に関しては増配しないと逆ざや改善には効きません。ただ、株式投信のような資産だと、株高が投信配当の増加に直結するので、逆ざやの改善に効果があることになります。いっぽう円安は外国債券の配当の増加につながる逆ざや改善には直接貢献するのですが、為替をヘッジしない外国証券を持っていることが前提になります。為替リスクは非常に高いので、ヘッジせずに保有している量がそれほど大きくはないと思うんですけどね。

それにしても産経ニュース、

アフラックは大幅減益が響き、2年ぶりに逆ざやとなった。

というのはあまりにもでしょう。これは一般事業会社で言えば「最終赤字が響き、経常赤字となった」と言っているようなものです。逆だろ。

さて、含み益増加のほうは、金利低下→国内債券の含み益増加、株高→国内株式の含み益増加、円安→外国証券の含み益増加、と、経済環境がすべて含み益の増加につながっています。これを受けて、各社のソルベンシー・マージン比率も上昇しています。

ただしこれはあまり歓迎できる環境ではありません。特に金利低下は将来の逆ざや増加につながるため、基本的に生命保険会社にとっては悪影響となります。ソルベンシー・マージンでは将来の逆ざや増加がほとんど評価の対象とならないため、このあたりは別途エンベディッド・バリューなどを見る必要があるでしょう。

次に保険料収入です。こちらは集計方法にもよりますが、「伸び悩んだ」「減少した」といった論調ですね。

国内生保グループの2012年3月期連結決算は、保険料等収入が銀行窓販の減少などで前の期と比べて3.8%減の19兆7191億円となった
(Bloomberg)

15グループ合計の保険料収入は前の期に比べて1.8%の微増にとどまった
(日本経済新聞)

保険料収入に関して最近顕著な傾向は「銀行窓販の販売量次第」ということです。銀行窓販で販売される保険は、貯蓄性の高い一時払いの保険がほとんどのため、保険料収入に与える影響がとても大きくなっています。しかも銀行は販売力が非常に強い、ときています。したがって、貯蓄性のよい(=利回りの高い)保険が極端に売れすぎてしまうことになります。「利回りが高い」ということは、生命保険会社にとっては「逆ざやになりやすい」ということですから、販売量をうまくコントロールしないと、大きなリスクを抱えることになります。

このため、生命保険会社は、銀行窓販商品が売れ過ぎると利回りを少し落とした商品に改定する、ということを行なっています。2012年度の金利は基本的に低下傾向だったため、利回りを落としてきていた、ということになります。その意味では、保険料収入の伸び悩みは、生命保険会社のリスクコントロールが奏功したとも解釈できます。

なお、保険料収入の動向を少子高齢化と結びつける向きもありますが、これはほとんどこじつけとしか言いようがありません。中長期的な構造変化が単年度決算にそううまく現れるわけがない。

今回の2012年度決算では、2013年4月4日からの日銀の異次元緩和の影響は直接には含まれていないため、現在の金融政策の影響という意味でむしろ注目すべきは、8月15日前後に公表される第一四半期のほうかもしれません。

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