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2014年3月

2014年3月 4日 (火)

保険会社向けの総合的な監督指針が改正されました

先日のエントリで取り上げた「保険会社向けの総合的な監督指針」等の改正ですが、「2014年1月末にも適用」との日経予想から遅れることちょうど1ヶ月、2月28日に公表されました。

やはりというべきか、かなりのコメントが寄せられていますね。「80の個人及び団体から延べ156件のコメント」とのことです。で、その「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(PDF)を見てみると…

おもしろすぎます。

いくつか抜粋してみましょう。(太線はブログ主によるものです)

今回の改正により、各種リスク管理が統合的リスク管理の下に位置付けられるようになった。このこと自体は正しい方向であると認識しているが、統合的リスク管理部門は経営陣が担うことのほぼすべてを行うべきかのように読めないこともない。我が国の組織風土においては、このような読み方をすることにより、会社の経営に少しでも問題があれば、それは全て統合的リスク管理部門の取り組みが不十分なためであり、統合的リスク管理部門は経営のあり方を根本的に変えることこそが役割である、経営を変えられなければ統合的リスク管理部門の存在意義はないと、統合的リスク管理部門に対して空想的な目標を押し付け、経営陣よりもずっと上位に位置付けるような誤解をするようなケースも想定される。このような誤解を避けるためにも、監督指針の記載の明確化を求めたい。

「経営の全責任をウチに押しつけないでくれ!」という統合リスク管理部門の悲痛な叫びが聞こえるようです。

各保険会社とも、監督指針や検査マニュアルに押される形で統合的リスク管理態勢の整備に向けた取り組みを進めている。しかしながら、業界全体では、経営のサポートの弱さ、部門間の政治争い、専門的知見の浅さ等から、なかなか思うように進んでおらず、リソースの浪費とも思われる状況が続いているように思われる。このような会社では、一見、検討を着実に進めているかのように見える、いわばコンプライアンス的対応を行っているように思われる。当局においては、監督指針に基づき、このような状況を適切に指摘する必要がある。このようなコンプライアンス的対応には、次のようなものが挙げられる。(1)いつまでも経済価値ベースのバランスシートの報告にとどまっている、(2)他社情報の収集を重視している、(3)実質的に統合的リスク管理部門だけで取り組みを進めている。(2)については、やってる感が出せること、経営陣が常に他社の動向を気にすること、非開示情報を掴むことが権力の源泉になるという思い込みがあること等の理由から特に重視される傾向があるが、実際の取り組みを行ったことがある者には、このような情報はそれほど必要性が高くないことを知っているはずである。このようなコンプライアンス的取り組みを指摘する視点を監督指針に加えるべきではないか。

保険業界は業界内他社の動向を気にする人が非常に多いですが、コメント者はそれが気に入らないんでしょうねえ…

今般の監督指針の改正と既に改正済の検査マニュアルにおいて、貴庁が保険会社に対して統合的リスク管理態勢の整備を求める姿勢は極めて明確なものとなっている。しかしながら、保険会社によっては、その整備に向けた取り組みはマチマチである。社長をトップに専務や常務クラスをメンバーとして検討を進める会社もあれば、担当役員をトップに各部長クラスをメンバーに検討している会社もある。統合的リスク管理が経営そのものであれば、どのような取り組み体制が必要かは明らかであると思うが、本気になれない会社は現場レベルに検討を投げただけというのが現実ではないか。当局におかれては、このような取り組み体制も検証のポイントとしては如何か。

統合的リスク管理に関する充実した内容が追加されることとなった。しかしながら、我が国においては、統合的リスク管理の取り組みは、本来的に行われるべき経営レベルではなく、現場レベルで投げられ、経営からのサポートが得られない、より悪いケースでは他部門から足を引っ張られるというケースすらあるように見受けられる。ついては、統合的リスク管理の整備に関する監督を行うにおいては、単に統合的リスク管理整備に関してどのような資料が取締役会に報告されているかではなく、それがどのような主導、協力の下で行われているかに着目することが重要と考える。

経営のサポートもなく、他部門にはイヤな顔をされるリスク管理部門の悲哀が感じられて涙が止まりません…

ERM を導入していくためには、多くの部門の積極的な関与・協力が必要となる。一方で、リスク管理部門やALM 部門の部門長、役員は、数理、資産運用、その他のあらゆる畑の人間が担うことが可能であるため、我が国の組織風土にあっては、ポストを狙った政局的な視点から、なかなか積極的には協力し難い状況、あるいは妨害を行うようなケースすら想定される(そのため、社外の協力よりも、社外の専門団体に名を連ねることを優先することもあると考えられる)。監督当局が保険会社の統合的リスク管理を推進していくためには、このようなことを企図した、いわゆるモンスター部門、モンスター役員の出現(外部からの検証はなかなか困難であるが)を抑制することも重要な視点であると考える。

モンスター部門にモンスター役員!ぜひとも使ってみたい単語です。しかし、「いわゆる」と言われても、こんな単語は聞いたことがないのですが、コメント者の周囲では日常語なのでしょうか。

統合的リスク管理の整備に限った話ではないかもしれないが、我が国の組織文化においては、残念ながら、取締役会メンバー自身が、取締役会の場では特に発言をせず、発言しやすい(自分より下のメンバーしかいないような)非公式な場において、取締役会の決定内容を否定したり、あるいは覆したりするような発言をし、取締役会の指示・決定が一部の取締役メンバーによって実体的に覆される等、取締役としての自覚に欠ける発言・行動がとられることも想定される。このような状況は、有効な統合的リスク管理態勢の整備に著しい支障を来すものであるため、各取締役の日常的な発言や指示について、取締役会との整合性を重点的に検証することが監督上、有効であると考える。監督指針の統合的リスク管理への記載の検討をお願いしたい。

「俺は本当はあの案件には反対だったんだ!」 議事録では「全会一致で決議」となってますが…

新商品の数理認可申請における監督上の指針はあまり明確でなく、比較的、担当数理専門官の考えに依存しがちである。このため、担当数理専門官が変わるごとに、保険会社の対応も大きく変わることを余儀無くされている。この度、監督指針の改正において、統合的リスク管理態勢の下に保険引受リスク管理態勢が位置付けられるようになったことを契機として、新商品の数理認可申請における監督上の指針の明確化についても検討をお願いしたい。また、グループレベルでのガバナンスを含む、新商品のリスク収益検証の態勢についても、認可申請のプロセスも含めた上で、オンオフ一体的な監督の中に位置づけることも重要と考える。

ここらへんに来ると統合的リスク管理あんまり関係ないんちゃうの、という気もしますが、よほど強い思いがあったのでしょう。心中お察しします。

ちなみに、金融庁のサイトには

なお、本件と直接関係しないコメントもお寄せいただいておりますが、これについての回答は差し控えさせて頂いております。

とあります。上記のコメントを見ると「無関係なコメントも載せてるやんか」と一瞬思いますが、コメントを数えてみると151件しかありません。総数は「延べ156件」だったそうなので、本当に回答の対象外になったコメントが5件あったということですね。どんだけ無関係だったんだか逆に気になります。

それにしても、こういった自由なコメントは、従来はあまり見られなかったように思います。パブリックコメントに意見を提出するよりは、業界内で事前に意見調整をすることのほうが多かったからです。各社が多様な経営政策をとるようになり、横並びでの意見調整が難しくなってきたことの証左かもしれませんね。

(なお、いつもは暗黙の了解として書いていませんでしたが、念のため。上記はあくまでも私の個人的なコメントです。)

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