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2014年4月 7日 (月)

標準利率設定ルール改正(案)(その3)

思いのほか長くなってしまいましたが、「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の内容の第3回です。

これまで、今回の告示改正案に関して、(1)商品によって異なる標準利率が適用されること、(2)異なる標準利率が適用される商品がどのようなものか、について述べてきました。今回は、その「異なる標準利率」が一体何か、について述べます。

前々回の繰り返しになりますが、現在の標準利率は、次のようなステップを年1回、10月に行い、翌年4月からの契約について標準利率を改定するかどうかを決めます。直近のデータを用いて、実際に数値を当てはめてみましょう。

  1. 「対象利率」を決めます。現在のルールでは、対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう。
    2013年10月1日現在のデータでは、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」は0.939%、「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」は1.329%ですので、対象利率は0.939%となります。
  2. 対象利率を元に「基準利率」を決めます。基準利率とは、対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけたものです。
    対象利率が0.939%のとき、基準利率は0.845%となります。
  3. 現在の標準利率と基準利率を比べて、一定の幅以上の乖離がある場合、標準利率を改定します。
    現在の標準利率1%に対して、基準利率は0.845%と、乖離幅は0.155%となっています。
    0.5%以上の乖離があった場合に改定されるルールになっているため、2014年4月からの標準利率は改定されませんでした。

では新しく一時払商品に適用されるルールを、直近のデータに当てはめてみましょう。実際の施行予定は2015年4月の契約からですが、ここでは2014年7月以降の契約に適用されるものと考えて、2014年4月1日現在を基準日にした数値を当てはめてみます。

まずは第一保険契約から。

  1. 対象利率は、「基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値」と「基準日の属する月の前月から過去1年間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値」のいずれか低いほうです。
    2014年1月1日~2014年3月31日までの3ヶ月間のデータでは、
    10年国債の平均が0.629%、20年国債の平均が1.495%、和半は1.062%。
    2013年4月1日~2014年3月31日までの1年間のデータでは、
    10年国債の平均が0.695%、20年国債の平均が1.572%、和半は1.133%。
    したがって対象利率は1.062%となります。
  2. 対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけた基準利率は、0.946%となります。
  3. 現在の標準利率(1%とします)に対して、基準利率は0.946%であり、乖離幅は0.054%となっています。新しいルールでは、一時払商品に関しては0.25%以上の乖離があった場合に改定されるルールになっていますが、乖離幅が0.25%に達しないため、2014年7月以降の契約についても1%が適用されることになります。

次に第二保険契約。

  1. 対象利率は、「基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値」と「基準日の属する月の前月から過去1年間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値」のいずれか低いほうです。
    2014年1月1日~2014年3月31日までの3ヶ月間のデータでは、
  2. 10年国債の平均が0.629%。
    2013年4月1日~2014年3月31日までの1年間のデータでは、
    10年国債の平均が0.695%。
    したがって対象利率は0.629%となります。
  3. 対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけた基準利率は、0.566%となります。
  4. 現在の標準利率(1%とします)に対して、基準利率は0.566%であり、乖離幅は0.434%と0.25%以上の乖離があるため、2014年7月以降の契約については、0.566%を0.25%単位で丸めた0.5%が適用される、ということになります。

対象利率の計算に関して、従来のルールとの違いをまとめると以下のとおりになります。

  • 過去データの使用期間
    現在は過去3年と過去10年のデータを使用、一時払に適用する新ルールでは過去3ヶ月と過去1年のデータを使用
  • 年限
    現在は10年国債のみ、一時払に適用する新ルールのうち一時払終身に適用するものは10年国債と20年国債の和半
  • 使用する利回り
    現在は応募者利回り、一時払に適用する新ルールでは流通利回り

過去データの使用期間の短縮は今回の改正の本質的なものであり、マッチングが比較的容易な一時払商品にはより直近のデータを使用する、という考えに基づくものだと解釈されます。

また年限も、一時払終身のように長期のものについては、超長期国債にマッチングさせることを勘案して、20年国債を基礎データとして取りこんでいます(一時払養老や一時払年金の場合も、保険期間が20年以上のものについては、一時払終身と同じルールを適用することが可能になっています)。ただ、10年と20年の和半(つまり平均15年)というのはちょっと短いんじゃないの? という感覚がぬぐえません。

最後の利回りの違いは更新の頻度であって(過去3ヶ月の応募者利回りでは3つしかデータがない)、本質的な違いではないと個人的には考えています。ちなみに流通利回りは、財務省の国債金利情報のページに載っており、毎営業日更新されています。

次に、上記のステップ2、つまり基準利率の計算で用いられる安全率については、次のような表になっています。

対象利率安全率係数
0%を超え、1.0%以下の部分 0.9
1.0%を超え、2.0%以下の部分 0.75
2.0%を超え、4.0%以下の部分 0.5
4.0%を超える部分 0.25

現在の表は下のとおり。

対象利率安全率係数
0%を超え、1.0%以下の部分 0.9
1.0%を超え、2.0%以下の部分 0.75
2.0%を超え、6.0%以下の部分 0.5
6.0%を超える部分 0.25

見てお分かりのとおり、金利の高いところでの安全率係数が異なっています。このため、

  • 対象利率が5%のとき、現在の安全率係数による基準利率は3.15%、新しい安全率係数による基準利率は2.9%
  • 対象利率が7%のとき、現在の安全率係数による基準利率は3.9%、新しい安全率係数による基準利率は3.4%
  • 対象利率が9%のとき、現在の安全率係数による基準利率は4.4%、新しい安全率係数による基準利率は3.9%

と、金利が上がるほど差が広がっていきます。そして、今回の新しい表は、一時払以外の商品の標準利率にも同様に適用されます。

日経の記事では、今回の告示改正に関して、

金利が上がる際に生保が機動的に保険料を引き下げやすくなる。

と書いていますが、かなり高い水準の金利では逆に現在の制度よりも標準利率が上がりにくい構造になってしまっている、ということです。

(ちなみに記事では「保険料を引き下げやすく」となっていますが、今回の告示改正は保険料そのものを規定するものではありません。この点については11月のエントリ参照。)

次回は、今回の告示改正案についてのまとめとして、個人的に思うところをコメントします。

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