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2014年4月

2014年4月26日 (土)

OpenSSLの脆弱性の件(保険会社編)

私もアクチュアリーのはしくれですので、保険業界での話題を把握するために各保険会社のウェブサイトをときどき巡ったりするのですが、そこで表題の件です。

暗号化プロトコルのライブラリであるOpenSSLのバグである"Heartbleed"については「史上最悪のバグ」「危険度は10段階で11」などと言われております。

OpenSSLの件がやばすぎてどう対応すればいいのかイマイチよく分かりません (Yahoo!ニュース - 山本一郎)

こういった方面に詳しいわけではないのですが、ともかくユーザー側ではこの問題を回避することができず、OpenSSLのバージョンアップなりなんなりでサーバー側が対処をしないとどうにもなりません。この点、ネット大手は対処しているとされています。

Facebook、Google、Yahoo!の代表者はReutersの取材に応じ、ユーザーへの影響を軽減するための措置は既に講じたと語っている。

Googleの広報担当者、ドロシー・シュー氏は次のように語る。「われわれは早期にこのバグを修正した。Googleユーザーはパスワードを変更する必要はない」

Amazon.comの広報担当者、タイ・ロジャース氏は、「Amazon.comには影響は及んでいない」と語っている。

OpenSSLの「Heartbleed」脆弱性、一般ユーザーの自衛は困難 対応は長期戦か

前置きが長くなりましたが、では保険会社のサイトはどうなのか、と思って見てみたら、次の会社がサイトに情報を載せていました。

不思議なことに、損保会社だけなんですよね。生保会社には、この情報を載せているサイトは見当たりませんでした。生保と損保で必要とされるセキュリティレベルに大きな違いがあるとも思えませんし…なぜこうなっているのか不明です。

各社のトップページをざーっと眺めただけなので、ひょっとすると見落としがあるかもしれません。見落としがあったらぜひ教えてください。

(追記:2014.4.22 アクサダイレクト追加しました)

追記:2014.4.26 ようやく生保で1社確認できました。

2014年4月11日 (金)

標準利率設定ルール改正(案)(その4)(完)

さて、長々と解釈してきた「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」ですが、今回はまとめとして全体を通じたコメントを述べたいと思います。

1: 対象商品が分かりにくい。

第一号・第二号保険契約の定義についてはその2で取り上げましたが、けっこう解釈が複雑です。また、その際にも書いたとおり、特に第二号保険契約の

当該保険金の額が保険料の額又は被保険者のために積み立てた金額に比して妥当なもの

というのが不明確です(一応「一時払年金」と類推しているのですが)。監督指針か何かで規定されるのでしょうが、規定としてはちょっと漠然としすぎてますよね。

2: 一時払終身の対象利率が短すぎる。

今回の改正の趣旨は、上記の改正案のページで次のように書かれています。

○ 今般、制度創設当時(平成8年)と比べると、

(1) 一時払い終身保険など貯蓄性の高い商品の取扱いの増加、

(2) 超長期国債の流通量の増加など保険会社の運用手段の多様化、

(3) 貯蓄性の高い商品の負債特性に対応した資産運用手法(ALM)の高度化

等、状況の変化が認められることから、告示を改正し、標準利率の改定方法の見直しを行う。

しかし、一時払終身の対象利率は、10年国債と20年国債を50%:50%で保有するようなポートフォリオを想定していることになります。私の感覚では、これはいかにも短いように思われます。

3: 安全率係数は必要なのか?

標準利率の設定ルールは、「対象利率の決定において、国債の、短期の過去平均と長期の過去平均の低いほうを取る」という部分と、基準利率の決定において安全率係数をかける」という部分で、金利を低く設定する仕組みが二重にかかっています。利率を低く設定するというのは負債(責任準備金)評価としては保守的ということになるのですが、一時払商品においてはマッチングをしてしまえば資産と負債がパラレルに動くことになり、将来の金利変動のリスクは比較的小さく抑えられます。解約の急増などによるデュレーションの変化で金利変動の影響が拡大するリスクはありますが、これは責任準備金を保守的に評価したところでカバーできる類のリスクではないと思います。利率を低く設定することで、むしろ資産の評価利率と乖離した負債評価利率を用いなければならないことになり、ALMが困難になる面もあるのではないか、という気がします。

4: 0.25%刻みは粗すぎるのではないか?

11月に日経がこの改正の記事を載せたときのエントリで述べたとおり、実態として各社は、現在の標準利率(1%)よりも低い予定利率で一時払商品を販売しています。このとき、各社の予定利率は0.1%程度の刻みになっているものが多いようです。

現在のように金利が低いと、0.25%という刻みは相対的に大きすぎます。1%よりも低い水準でありうる標準利率は、(0%は論外としても)0.25%、0.5%、0.75%の3通りしかありません。前回のエントリにも書きましたが、現在の金利水準で新しいルールを適用すると、一時払養老・一時払年金の標準利率は0.5%になってしまいます。そのような環境下で10年国債金利が0.7%になっても、標準利率は改定されず、従って生保会社は0.7%の一時払養老を販売したくてもできません(できなくはないが、初期の生保会社の負担が大きくなります)。現行制度下では10年国債金利が0.7%なら予定利率0.7%の一時払養老を普通に売ることができるので、今回の改正はむしろ制約を強めるものとなってしまっています。

5: 肝心の金利上昇には対応していない。

今回の改正案について、日経の記事はこのように書いています。

一時払い終身保険などの貯蓄性保険が対象で、金利が上がる際に生保が機動的に保険料を引き下げやすくなる。

しかし、前回のエントリで見たとおり、基準金利設定における安全率係数は現行のものよりも高金利に厳しいものになっています。上に述べたとおり、もともと利率を低く設定する方向に強いバイアスがかかっている標準利率のルールにおいて、高い金利水準での安全率係数を厳しく設定するのは、もはや高金利では一時払商品を売るなと言っているのではないかとも思われます。(金利差の分は配当で支払えばいいということなのかもしれませんが、販売時点で標準責任準備金差額の大幅な会社負担が生じるという点は配当では解消されませんし、販売時に将来の期待配当をどこまで説明できるのかという点も疑問が残ります。)

これまた前回のエントリで示しましたが、金利(対象利率)が7%のときには現行ルールでも基準金利は3.9%、新ルールでは3.4%と半分以下になってしまいます。1990年には10年国債・20年国債とも7%を超える利回りとなっていました。そのような金利水準が再来したとき、3.5%程度の予定利率の商品を誰が買うんでしょうね…

結論として、今回の告示改正案はあまり「いい方向」にならないのではないか、という感覚を持っています。4.で述べたとおり、金利が低い時には現在よりも実質的な制約がきびしくなります(一時払養老で言えば、現在:1%以下で自由に決められるvs改正案:0.5%に実質的に固定される)し、かといって、5.で述べたとおり、金利上昇時に効果的に働くルールかというとそうでもありません。現行ルールでは金利上昇の恩恵が標準利率に及ぶのは10年かかりますが、新ルールでは一時払商品は1年で効果が及ぶ、と、部分的によくなっているところはあるものの、この負債評価ルールでちゃんとしたALMをやれ、というのはなかなかに難しい注文のような気がします。

(念のため申し上げますが、あくまでも個人的なコメントということで。)

P.S. ためしに条文のかたちにしてみました。もともと新旧対比表になっているので、こうしたからといってあまり分かりやすくはなっていないのですが、まあご参考に。

2014年4月 7日 (月)

標準利率設定ルール改正(案)(その3)

思いのほか長くなってしまいましたが、「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の内容の第3回です。

これまで、今回の告示改正案に関して、(1)商品によって異なる標準利率が適用されること、(2)異なる標準利率が適用される商品がどのようなものか、について述べてきました。今回は、その「異なる標準利率」が一体何か、について述べます。

前々回の繰り返しになりますが、現在の標準利率は、次のようなステップを年1回、10月に行い、翌年4月からの契約について標準利率を改定するかどうかを決めます。直近のデータを用いて、実際に数値を当てはめてみましょう。

  1. 「対象利率」を決めます。現在のルールでは、対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう。
    2013年10月1日現在のデータでは、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」は0.939%、「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」は1.329%ですので、対象利率は0.939%となります。
  2. 対象利率を元に「基準利率」を決めます。基準利率とは、対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけたものです。
    対象利率が0.939%のとき、基準利率は0.845%となります。
  3. 現在の標準利率と基準利率を比べて、一定の幅以上の乖離がある場合、標準利率を改定します。
    現在の標準利率1%に対して、基準利率は0.845%と、乖離幅は0.155%となっています。
    0.5%以上の乖離があった場合に改定されるルールになっているため、2014年4月からの標準利率は改定されませんでした。

では新しく一時払商品に適用されるルールを、直近のデータに当てはめてみましょう。実際の施行予定は2015年4月の契約からですが、ここでは2014年7月以降の契約に適用されるものと考えて、2014年4月1日現在を基準日にした数値を当てはめてみます。

まずは第一保険契約から。

  1. 対象利率は、「基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値」と「基準日の属する月の前月から過去1年間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値に基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(20年)の流通利回りの平均値を加えて2で除した値」のいずれか低いほうです。
    2014年1月1日~2014年3月31日までの3ヶ月間のデータでは、
    10年国債の平均が0.629%、20年国債の平均が1.495%、和半は1.062%。
    2013年4月1日~2014年3月31日までの1年間のデータでは、
    10年国債の平均が0.695%、20年国債の平均が1.572%、和半は1.133%。
    したがって対象利率は1.062%となります。
  2. 対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけた基準利率は、0.946%となります。
  3. 現在の標準利率(1%とします)に対して、基準利率は0.946%であり、乖離幅は0.054%となっています。新しいルールでは、一時払商品に関しては0.25%以上の乖離があった場合に改定されるルールになっていますが、乖離幅が0.25%に達しないため、2014年7月以降の契約についても1%が適用されることになります。

次に第二保険契約。

  1. 対象利率は、「基準日の属する月の前月から過去3月間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値」と「基準日の属する月の前月から過去1年間の利付国庫債券(10年)の流通利回りの平均値」のいずれか低いほうです。
    2014年1月1日~2014年3月31日までの3ヶ月間のデータでは、
  2. 10年国債の平均が0.629%。
    2013年4月1日~2014年3月31日までの1年間のデータでは、
    10年国債の平均が0.695%。
    したがって対象利率は0.629%となります。
  3. 対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけた基準利率は、0.566%となります。
  4. 現在の標準利率(1%とします)に対して、基準利率は0.566%であり、乖離幅は0.434%と0.25%以上の乖離があるため、2014年7月以降の契約については、0.566%を0.25%単位で丸めた0.5%が適用される、ということになります。

対象利率の計算に関して、従来のルールとの違いをまとめると以下のとおりになります。

  • 過去データの使用期間
    現在は過去3年と過去10年のデータを使用、一時払に適用する新ルールでは過去3ヶ月と過去1年のデータを使用
  • 年限
    現在は10年国債のみ、一時払に適用する新ルールのうち一時払終身に適用するものは10年国債と20年国債の和半
  • 使用する利回り
    現在は応募者利回り、一時払に適用する新ルールでは流通利回り

過去データの使用期間の短縮は今回の改正の本質的なものであり、マッチングが比較的容易な一時払商品にはより直近のデータを使用する、という考えに基づくものだと解釈されます。

また年限も、一時払終身のように長期のものについては、超長期国債にマッチングさせることを勘案して、20年国債を基礎データとして取りこんでいます(一時払養老や一時払年金の場合も、保険期間が20年以上のものについては、一時払終身と同じルールを適用することが可能になっています)。ただ、10年と20年の和半(つまり平均15年)というのはちょっと短いんじゃないの? という感覚がぬぐえません。

最後の利回りの違いは更新の頻度であって(過去3ヶ月の応募者利回りでは3つしかデータがない)、本質的な違いではないと個人的には考えています。ちなみに流通利回りは、財務省の国債金利情報のページに載っており、毎営業日更新されています。

次に、上記のステップ2、つまり基準利率の計算で用いられる安全率については、次のような表になっています。

対象利率安全率係数
0%を超え、1.0%以下の部分 0.9
1.0%を超え、2.0%以下の部分 0.75
2.0%を超え、4.0%以下の部分 0.5
4.0%を超える部分 0.25

現在の表は下のとおり。

対象利率安全率係数
0%を超え、1.0%以下の部分 0.9
1.0%を超え、2.0%以下の部分 0.75
2.0%を超え、6.0%以下の部分 0.5
6.0%を超える部分 0.25

見てお分かりのとおり、金利の高いところでの安全率係数が異なっています。このため、

  • 対象利率が5%のとき、現在の安全率係数による基準利率は3.15%、新しい安全率係数による基準利率は2.9%
  • 対象利率が7%のとき、現在の安全率係数による基準利率は3.9%、新しい安全率係数による基準利率は3.4%
  • 対象利率が9%のとき、現在の安全率係数による基準利率は4.4%、新しい安全率係数による基準利率は3.9%

と、金利が上がるほど差が広がっていきます。そして、今回の新しい表は、一時払以外の商品の標準利率にも同様に適用されます。

日経の記事では、今回の告示改正に関して、

金利が上がる際に生保が機動的に保険料を引き下げやすくなる。

と書いていますが、かなり高い水準の金利では逆に現在の制度よりも標準利率が上がりにくい構造になってしまっている、ということです。

(ちなみに記事では「保険料を引き下げやすく」となっていますが、今回の告示改正は保険料そのものを規定するものではありません。この点については11月のエントリ参照。)

次回は、今回の告示改正案についてのまとめとして、個人的に思うところをコメントします。

2014年4月 4日 (金)

標準利率設定ルール改正(案)(その2)

前回に続いて、「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の内容について取り上げます。

今回、普通の保険商品とは別に標準利率を設定することになった保険(前回は「一時払終身保険」「一時払養老保険」と書いていました)は、告示(案)では「第一号保険契約」と「第二号保険契約」と書かれています。これらの定義を見てみましょう。まずは第一号保険契約から。(原文は漢数字ですが、読みにくいので適宜アラビア数字に直しています)

保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定(法第118条第1項の規定により設ける特別の勘定をいう。以下この表及び第9項において同じ。)を設けるものを除く。)であって、次に掲げる要件の全てを満たす保険契約

一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の死亡(余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む。以下この表において同じ。)又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号。以下「規則」という。)第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。)

二 その保険期間が被保険者の死亡の時又は法第3条第4項第2号イ、ロ、ニ若しくはホに掲げる事由が生じた時までとされるもの

ほぼ呪文ですね。少しずつ解読していくことにしましょう。

保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定(法第118条第1項の規定により設ける特別の勘定をいう。以下この表及び第9項において同じ。)を設けるものを除く。)であって、次に掲げる要件の全てを満たす保険契約

これは一時払保険のことを言っています。ただし変額保険は除くと。

「次に掲げる要件」のうち最初のものは非常にややこしいので後回しにして、まずは第2号のほうから。

二 その保険期間が被保険者の死亡の時又は法第3条第4項第2号イ、ロ、ニ若しくはホに掲げる事由が生じた時までとされるもの

条文にはリンクを張ったので適宜参照してください。

前者の、保険期間が「死ぬまで」というのはまさしく終身保険のことですね。法第3条第4項第2号は第三分野保険のことで、いわゆる三大疾病終身保険や重度疾病終身保険といったものを後者でカバーしています。

では、後回しにした第1号の内容。

一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の死亡(余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む。以下この表において同じ。)又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号。以下「規則」という。)第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。)

カッコが多いのが読みにくい原因の一つなので、カッコで括られた部分を消してみます。

一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険のうち、被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約

「法第3条第4項第1号に掲げる保険」というのは第三分野ではない純粋な生命保険のこと。「同項第2号に掲げる保険」というのは第三分野保険のこと。死亡または第三分野の発生事由に基づく保険が対象(つまり純粋生存保険は対象ではない)ということですね。つまり、これは「生命保険または第三分野保険で、給付要件に死亡または第三分野給付が含まれるもの」と言っていることになります。ただし、傷害死亡のみを給付要件とする保険は対象外です。

以下、カッコを復元しながら要件を確認しましょう。第三分野保険についても「同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る」とあるので、死亡給付または生存給付が必須になります。「余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む」というのは、リビングニーズと高度障害をカバーする文言。

そして対象外の要件がもう一つあります。

被保険者の死亡に関する保険金の額が保険料(保険業法施行規則第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。

要は「保険料(あるいは「保険料+転換価格」)よりも保険金のほうが小さい契約は対象外」ということです。今回の告示改正案は、一時払商品について市中金利との連動性を高めるようにするものですが、保険料よりも保険金のほうが小さい契約というのは、要は契約者にとっては利回りがマイナスになる(つまり掛け捨て要素が強く出る)ため、市中金利への連動が低くても構わない、ということで対象外になっていると思われます。

まとめると、第一号保険契約というものは、

  • 一時払終身保険あるいは一時払第三分野保険(ただし死亡給付が必須で、生存給付のついていないもの)で、
  • 利回りがマイナスではないもの

ということになります。

次に第二号保険契約。

保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定を設けるものを除く。)であって、次の各号に掲げる保険契約のいずれかに該当するもの

一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の生存及びその保険期間の満了前の被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(保険期間の満了後に支払う被保険者の生存に関する保険金の額又はその保険期間の満了前に支払う被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(転換価額を含む。次号において同じ。)の額未満のものを除く。)

二 法第3条第4項第1号に掲げる保険のうち、被保険者の生存に関して保険金を支払うことを主たる目的とする保険に係る保険契約(前号に掲げるものを除く。)であって、当該保険契約に基づき被保険者の生存に関して支払う保険金以外の金銭の支払(契約者配当(法第114条第1項に規定する契約者配当をいう。)又は社員に対する剰余金の分配及び解約による返戻金の支払を除く。)が、当該保険契約で定める被保険者の死亡に関し支払う保険金に限られ、当該保険金の額が保険料の額又は被保険者のために積み立てた金額に比して妥当なもの

こんどは「次の各号に掲げる保険契約のいずれかに該当するもの」になっているので、順番にみましょう。同じようにカッコ内を消してみます。

一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険のうち、被保険者の生存及びその保険期間の満了前の被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約

保険金が支払われる要件が「生存」および「保険期間の満了前の死亡」または「第三分野給付」ということですね。つまり養老保険または生存給付ありの医療保険、ということになります。生存時の保険金支払には制限がないので、こども保険のように保険期間の途中で祝い金が支払われるタイプも含まれるでしょう。

カッコ内は第一号保険契約と同じです。つまり第三分野保険には死亡給付または生存給付が必須ですし、利回りがマイナスになるものは対象外です。

さてもう一つの要件に移りましょう。

二 法第3条第4項第1号に掲げる保険のうち、被保険者の生存に関して保険金を支払うことを主たる目的とする保険に係る保険契約であって、当該保険契約に基づき被保険者の生存に関して支払う保険金以外の金銭の支払が、当該保険契約で定める被保険者の死亡に関し支払う保険金に限られ、当該保険金の額が保険料の額又は被保険者のために積み立てた金額に比して妥当なもの

「主たる目的」とか「妥当なもの」とか、ずいぶんと表現があいまいですが、「妥当」を「近い」と解釈すると、

  • 主に生存給付
  • 生存以外は死亡給付のみ
  • 死亡給付は保険料または責任準備金に近い額

ということになります。「主たる目的」と「妥当」の解釈次第ではありますが、一時払年金がこれに該当するように思われます。

まとめると、第二号保険契約というものは、

  • 生存給付のある一時払保険(ただし利回りがマイナスになるもの以外)、または
  • 一時払年金のように生存給付が中心で死亡給付要素が小さいもの

と考えられます。(ただ、後者は解釈がこれでいいのか、文言だけでは判断がつきません。このため、前回のエントリでは「一時払養老保険」とのみ書きました。)

次回は利率について取り上げます。

2014年4月 2日 (水)

標準利率設定ルール改正(案)

本日(正確には昨日ですが)、とても長い名前の法令改正案がパブリック・コメントに付されました。

「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の公表について

この表題とURLをtweetしようとしたら、なんと140文字を超えてしまいました。長えよ。

それはともかく、この改正は、昨年の11月に日経が報道した「生命保険料 下げやすく」という記事が具体的に法令(告示)の案となったものです。記事になった際、私もエントリとして上げました。(今回の案の公表に合わせて、再度記事が上がってます:金利上昇時、生保保険料下げやすく 金融庁が制度見直し

保険会社は将来の保険金の支払いのために「責任準備金」というものを積み立てますが、今回改正の対象となった告示は、その責任準備金の積み立てについて規定するものです。規定する要素は大きく「積立方式」「予定死亡率」「予定利率」がありますが、今回の改正はこのうち予定利率の規定を見直すというものです。

この予定利率(「標準利率」と言います)は、現在、国債の利回りを基準に、次のようなステップで決められます。

  1. 「対象利率」を決める。現在のルールでは、対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう。
  2. 対象利率を元に「基準利率」を決める。基準利率とは、対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけたもの。例えば対象利率が1%の場合、掛け目は0.9ですので、基準利率は0.9%となります。
  3. 現在の標準利率と基準利率を比べて、一定の幅以上の乖離がある場合、標準利率を改定する。現在は0.5%以上の乖離があった場合、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になります。
  4. 1~3の判定は、現在、年1回、10月に行い、改定は翌年4月からの契約に適用されます。

新しい標準利率設定ルール(平成27年(2015年)4月の契約から適用されます)は、上記1~4のステップが商品によって異なります。

まず一時払終身保険については、次のようなルールになります(太字が今のルールと異なるところ)。

  1. 対象利率は、「『過去3ヶ月の10年国債の流通利回りの平均』と『過去3ヶ月の20年国債の流通利回りの平均』の和半」と、「『過去12ヶ月の10年国債の流通利回りの平均』と『過去12ヶ月の20年国債の流通利回りの平均』の和半」のうち低いほう。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる。
  3. 標準利率は、0.25%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる。
  4. 1~3の判定は、年4回、1月・4月・7月・10月に行い、改定は判定の3ヶ月後からの契約が対象。

次に一時払養老保険は次のようなルール。

  1. 対象利率は、「過去3ヶ月の10年国債の流通利回りの平均」と、「過去12ヶ月の10年国債の流通利回りの平均」のうち低いほう。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる(一時払終身保険と同じものを使う)。
  3. 標準利率は、0.25%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる。
  4. 1~3の判定は、年4回、1月・4月・7月・10月に行い、改定は判定の3ヶ月後からの契約が対象。

ステップのうち1だけが一時払終身保険と違います。ただし、保険期間20年以上の一時払養老保険は、一時払終身保険と同じルールを適用することができます。

一時払保険以外は、次のようなルールになります。

  1. 対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と、「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう(現行と同じ)。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる(一時払終身保険と同じものを使う)
  3. 標準利率は、0.5%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる(現行と同じ)。
  4. 1~3の判定は、年1回、10月に行い、改定は翌年4月からの契約が対象(現行と同じ)。

また、予定利率変動型保険について、予定利率改定時点で適用された上記の標準利率ルールを当てはめることも明記されています。

ところで、上でサラっと「一時払終身保険」「一時払養老保険」と書きましたが、両者の中間的なものや、医療保障・生存保障がくっついたものなどが考えられるため、実際にはもっと細かく規定されています。その規定が非常にわかりにくいのですが、その点は後日ということで、本日はこれまでとさせていただきます。

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