« 保険会社向けの総合的な監督指針が改正されました | トップページ | 標準利率設定ルール改正(案)(その2) »

2014年4月 2日 (水)

標準利率設定ルール改正(案)

本日(正確には昨日ですが)、とても長い名前の法令改正案がパブリック・コメントに付されました。

「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の公表について

この表題とURLをtweetしようとしたら、なんと140文字を超えてしまいました。長えよ。

それはともかく、この改正は、昨年の11月に日経が報道した「生命保険料 下げやすく」という記事が具体的に法令(告示)の案となったものです。記事になった際、私もエントリとして上げました。(今回の案の公表に合わせて、再度記事が上がってます:金利上昇時、生保保険料下げやすく 金融庁が制度見直し

保険会社は将来の保険金の支払いのために「責任準備金」というものを積み立てますが、今回改正の対象となった告示は、その責任準備金の積み立てについて規定するものです。規定する要素は大きく「積立方式」「予定死亡率」「予定利率」がありますが、今回の改正はこのうち予定利率の規定を見直すというものです。

この予定利率(「標準利率」と言います)は、現在、国債の利回りを基準に、次のようなステップで決められます。

  1. 「対象利率」を決める。現在のルールでは、対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう。
  2. 対象利率を元に「基準利率」を決める。基準利率とは、対象利率に一定の安全率(掛け目)をかけたもの。例えば対象利率が1%の場合、掛け目は0.9ですので、基準利率は0.9%となります。
  3. 現在の標準利率と基準利率を比べて、一定の幅以上の乖離がある場合、標準利率を改定する。現在は0.5%以上の乖離があった場合、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になります。
  4. 1~3の判定は、現在、年1回、10月に行い、改定は翌年4月からの契約に適用されます。

新しい標準利率設定ルール(平成27年(2015年)4月の契約から適用されます)は、上記1~4のステップが商品によって異なります。

まず一時払終身保険については、次のようなルールになります(太字が今のルールと異なるところ)。

  1. 対象利率は、「『過去3ヶ月の10年国債の流通利回りの平均』と『過去3ヶ月の20年国債の流通利回りの平均』の和半」と、「『過去12ヶ月の10年国債の流通利回りの平均』と『過去12ヶ月の20年国債の流通利回りの平均』の和半」のうち低いほう。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる。
  3. 標準利率は、0.25%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる。
  4. 1~3の判定は、年4回、1月・4月・7月・10月に行い、改定は判定の3ヶ月後からの契約が対象。

次に一時払養老保険は次のようなルール。

  1. 対象利率は、「過去3ヶ月の10年国債の流通利回りの平均」と、「過去12ヶ月の10年国債の流通利回りの平均」のうち低いほう。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる(一時払終身保険と同じものを使う)。
  3. 標準利率は、0.25%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる。
  4. 1~3の判定は、年4回、1月・4月・7月・10月に行い、改定は判定の3ヶ月後からの契約が対象。

ステップのうち1だけが一時払終身保険と違います。ただし、保険期間20年以上の一時払養老保険は、一時払終身保険と同じルールを適用することができます。

一時払保険以外は、次のようなルールになります。

  1. 対象利率は、「過去3年間の10年国債の応募者利回りの平均」と、「過去10年間の10年国債の応募者利回りの平均」のうち低いほう(現行と同じ)。
  2. 基準利率は、対象利率に掛け目をかける点は同じ。ただし、掛け目は現在のものとは異なる(一時払終身保険と同じものを使う)
  3. 標準利率は、0.5%以上の乖離があった場合に改定することとなり、基準利率を0.25%単位で丸めたものが新しい標準利率になる(現行と同じ)。
  4. 1~3の判定は、年1回、10月に行い、改定は翌年4月からの契約が対象(現行と同じ)。

また、予定利率変動型保険について、予定利率改定時点で適用された上記の標準利率ルールを当てはめることも明記されています。

ところで、上でサラっと「一時払終身保険」「一時払養老保険」と書きましたが、両者の中間的なものや、医療保障・生存保障がくっついたものなどが考えられるため、実際にはもっと細かく規定されています。その規定が非常にわかりにくいのですが、その点は後日ということで、本日はこれまでとさせていただきます。

« 保険会社向けの総合的な監督指針が改正されました | トップページ | 標準利率設定ルール改正(案)(その2) »

アクチュアリー」カテゴリの記事

保険」カテゴリの記事

会計」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
分かりやすいご解説ありがとうございます。ニュースを見て気になって調べていたのですが、本解説が大変参考になりました。

ところで、一つご質問がありコメントに書かせてもらいます。

「一時払保険以外は、次のようなルールになります。」とブログ記事にあり、安全率のかけ目のみ変更となっています。

これは本改正案の第7項に対応して書かれたと思うのですが、第7項では、「第一号保険契約及び第二号保険契約以外」が対象と読める気がします。

第一号と第二号保険契約でかつ、一時払いでない保険に対する記載はどこに該当するのでしょうか?

頓珍漢な質問をしているかもしれませんが、もしよろしければコメント頂戴できたらと存じます。

細かいところは今日のエントリをご覧いただきたいのですが、第一号と第二号保険契約はいずれも最初に「一時払であること」が要件になっています。つまり、「第一号と第二号保険契約でかつ、一時払いでない保険」は存在しません。


ありがとうございます。
新しい記事とあわせて、大変勉強になりました。

新しい方式で、ざっくり計算してみたのですが。
もし、直近(4月頭くらい)の金利水準でずっと推移した場合、一時払終身では現状の1%となるようですが、一時払い養老では0.5%になりそうですね。

金利水準が上がれば、それに応じて標準利率も上がるとのことですが、現状水準のままだと標準利率が下がる可能性もありますね。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 標準利率設定ルール改正(案):

« 保険会社向けの総合的な監督指針が改正されました | トップページ | 標準利率設定ルール改正(案)(その2) »

フォト
無料ブログはココログ
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

最近のトラックバック