4月からの標準利率
ごぶさたしています。このブログで私の生存確認をしている人もいると聞きましたが、なんとか生きています。
さて、前回と同じ話になってしまうのですが、新しいルールの下での標準利率がいよいよ決まります。一時払保険に適用される新しい標準利率は平成27年4月1日以降の契約からとなりますが、「標準利率自体が何%になるか」というのは、その3ヵ月前にあたる平成27年1月1日時点で決まります。
標準利率設定の元データは財務省の公表する流通利回りですから、年内最終日である12月26日に決定することとなります。その意味では今日を含めてあと2日ほどデータが足りないのですが、まあ確定と言っていいでしょう。すなわち、
- 第1号保険契約(一時払終身保険等)については、標準利率は1%
- 第2号保険契約(一時払養老保険等)については、標準利率は0.5%
となります。
そもそも機動的に標準利率が変更されるような仕組みを導入したにもかかわらず、安全率係数のかけ方が平準払商品と同じというのがどうにも解せません。「予定利率を保証している期間は平準払と一時払で変わらない」という意見もありますが、だとしたら保険期間別に安全率係数を設けるべきです。あるアクチュアリーの方とは、「一時払保険は安全率係数なくっていいんじゃね?」という話をしました。
法令上、責任準備金は「標準基礎率によって計算された責任準備金と、プライシング上の予定基礎率によって計算された責任準備金の大きい方」となります。したがって、標準利率より低い予定利率を設定することに問題は生じません。
逆に標準利率より高い予定利率を使用した場合、保険会社は追加の積立負担を負うことになります。つまり、標準利率とは、実質的に「保険会社が設定できる予定利率の上限」を規定していることになるのです。
このこと自体は標準利率の意義そのものではあるのですが、たとえば今後10年国債金利が0.8%に戻ったとしても、標準利率は0.5%のままとなります(安全率係数を加味すると、改定のトリガーである0.25%を超えないため)。マッチング運用がきちんとできていてALMリスクをちゃんとコントロールしている会社であっても、市中金利に追随した利率設定をするのに大きな制約を受ける、というのは、やはり制度として何かおかしいでしょう。「ちゃんとしたALMができる会社ばかりではない」という反論も考えられますが、そもそも商品のプライシングは個別審査を受けるので、その際に会社の特質を考えればよい話です。事前に中途半端な「しばり」をかけるのはいかがなものかと。
いずれにせよ賽は振られてしまいましたし、現下の金利水準では「高い予定利率をつけたい」という会社もないでしょうから、私の感じているモヤモヤは当面は杞憂に過ぎません。ただし、金利が反騰したときに何が起こるか…気になります。
2015.1.5追記:すみません、「12月26日に決定」と書きましたが、マーケットは12月30日まで開いているので、12月30日に決定の誤りでした。最終的に決まった標準利率は上記のとおりなのですが。
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