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2015年1月 2日 (金)

書評「システム障害はなぜ起きたか」

サブタイトルに「みずほの教訓」とあるとおり、みずほフィナンシャルグループが起こしたシステム障害の原因を考察するものです。

といっても、実はこれ、2002年の出版です。みずほは過去に2度、大規模なシステム障害を起こしていますが、これは最初のシステム障害に関するものです。

日経コンピュータの連載をまとめたとあって、他の単なる批判本とは一線を画しています。そのことは、本書の出版の趣旨に如実に表れています。

水に落ちた犬を皆でたたくのは、日本のメディアの悪い癖である。 過去の例を見ると、事故や障害の最中は報道が加熱するが、収束するとなんとなくうやむやになっていく。読者もまた、自分にも同じトラブルが起こりかねないことを忘れがちだ。将来に備えた教訓を引き出していないから、数年後に同じことがまた繰り返される。

こうした事態を避けるために、情報化の総合誌である『日経コンピュータ』編集部は、本書を緊急出版する。

内容は、いわゆるメインフレームに詳しくない者にも分かりやすく書かれています。例えば銀行システムの肝となる勘定系システムについて、その複雑さ・膨大さは次のように書かれています。

本稼働から15年あまりが経過した勘定系システムは都市銀行の場合、利用しているコンピューター・プログラムを見ると、全体で1億行(ライン)に迫るまで膨らんでいる。1人のエンジニアが1カ月仕事をしたとして、開発できるプログラムは、500〜800行と言われる。単純計算すると、1億行を開発するには、1000人のエンジニアが10年間開発を続けないといけない量である。

このような大規模なシステムの統合に関して、日経コンピュータの記者は、会見の場面で、経営トップのシステム統合を現場任せとする認識の低さに危機感を持ちます。案の定、現場では3行による綱引きが起こっていました。旧富士銀のシステムのほうが旧第一勧銀のシステムよりも優れていることが認識されながら、旧第一勧銀の勘定系システムを残すことについて、行司役を求められたコンサルティング会社がレポートを書きます。

確かに両行の勘定系システムには若干の差はあるものの、この差は2002年4月に新銀行を作るまでに解消できる。つまり、第一勧銀の勘定系システムを機能強化して、富士銀と同等の機能を盛り込めばよい。よって、「第一勧銀と富士銀のシステムに有意差はない」という理屈を作ったのである。A.T.カーニーは、こうした主旨の報告書を提出した。(略)

三行はこの報告書作成料として4000万円を予定していたが、割り勘にできないという理由で、3900万円に値切った。

そして2002年4月1日のシステム稼働を迎え、障害が発生します。システム部門は不眠不休で作業を続けたものの、口座振替の未処理データが完全になくなるまで18日を要することとなりました。

このあたりのトラブルの詳細は本書を読んでいただければいいのですが、本書の白眉は、みずほの事例にとどまらず、成功事例をきちんと取り上げていることです。

成功事例の筆頭に上がっているのは北洋銀行です。この銀行は、破綻した北海道拓殖銀行の事業継承に伴い、なんと旧拓銀のシステムに一本化します。事務とシステムは分かちがたく結びついているので、このことは、社内用語から事務のやり方から何から、北洋銀行側がすべて旧拓銀方式に合わせるということを意味しています。このことが可能になったのは、統合を率いたのが経営トップ(当時副頭取、出版時点で頭取)であったこと、それにシステム以外の部門の理解を得られたこととされています。

この他にも東京三菱銀行(システム部門と利用部門からなるプロジェクトチームを組成し、両者の意思疎通をスムーズに実現)やUFJ銀行(事務部門が事務変更の受け入れを早期に表明)といった事例が挙げられています。

このように成功事例と失敗事例の双方を取り上げることで、実務に携わる人間にとっては何を抑えておかなければならないかがより明確になっています。

けっこう古い本(図書館で借りたのですが、ちょっと手が痒くなるくらい)だったのですが、いや、とても実践的で参考になる良書でした。

こちらは2度目のシステム障害の際に書かれた本。同じく担当者目線という点でとても参考になる本です。

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