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2015年3月10日 (火)

映画「アメリカン・スナイパー」

映画評サイトというのは、合う合わないということもあって、参考にするということは少ないです。しかし、評者に同意するかどうかは別にしてもついつい見てしまうという映画評サイトがいくつかあります。

個人的には毎年「この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞」(誰映)を主宰している破壊屋さんのサイトが大好きですが、「前田有一の超映画批評」もよく見ます。残念ながら前田氏の評価と意見が合うことはあまり多くないのですが、この「アメリカン・スナイパー」で100点満点をつけていたのはまったく同意です。

本作は実在のスナイパー、クリス・カイルの実話を元にした作品です。彼はスナイパーとして米国随一の実績を残し、「伝説」と呼ばれるのですが、実話が元になっていることもあり、この映画はいわゆるヒーロー物とは一線を画しています。何よりも作中で「伝説(レジェンド)」がクリスを揶揄する言葉としてしばしば出てくるのです。

クリスは米国海軍の特殊部隊であるSEALSの隊員です。SEALSはその名称の中に"SEa" "Air" "Land"が含まれるとおり、海軍所属でありながら陸・海・空なんでもこなします。実際、映画の中では海軍らしい活躍場面は何一つ出てくることはなく、クリスが活躍するのはもっぱら地上戦であり、近くの建物の屋上から物陰のテロリストを狙撃することによって仲間を援護します。ただしそれだけでなく、突入に参加することもしばしばです。

しかし、狙撃する(狙う)ということは狙われることと表裏一体です。狙撃実績に優れたクリスは、テロリストから賞金首をかけられ、狙われる立場になります。そしてそのことは精神的に過剰な負荷を生み、米国に戻ってきて家族と生活する中でも歪みとして現れます。テキサス男として育てられたクリスは、父から「世の中には羊と狼と番犬がいる。お前たちは羊を狼から守るヒーローたる番犬となれ」と聞かされて育つのですが、彼は自分が誇りある番犬になれたのかに苦悩します。そして、彼は同じように歪みを抱えた元軍人を支援する活動を行いますが、最後にはその活動が悲しい結末を引き起こします。

これまでは米国の戦争映画と言えば、太平洋戦争あるいはベトナム戦争が主な題材でした。これらの戦争を経験した人もまだ多くいますが、少なくとも私にとっては「歴史上の出来事」でしかありませんでした。それに対し、この「アメリカン・スナイパー」は9.11同時多発テロ事件を契機としたイラク戦争が主な場面であり、歴史上の出来事のように感じられた「戦争」というものが未だに身近で起こっている(そしてそれはベトナム戦争の泥沼ぶりを繰り返しているようにしか思えない)という事実が、何とも言えないやるせなさを感じさせるものでした。

軍人であるクリス・カイル本人が述べた内容を原作とするため、これは反戦映画ではないのでしょう。しかし、多くの関係者にとって記憶が新しすぎるためか、演出については非常に抑制された印象を受けます(特にラストシーンとエンドロール)。そのことが逆にとても強い「反戦」の印象を残すように感じられました。

いい映画です、おすすめです、でも、2回観るのはつらい。そんな映画です。

原作の文庫版です。もともと「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」という書名で単行本が出ていたのを、文庫版で改題したものです。本文は基本的にクリス本人によるものですが、ところどころにクリスの妻タヤの述べた部分が挿入されており、戦地にいる者とその家族との意識のすれ違いを見ることができます。

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