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2016年2月 9日 (火)

マイナスの標準利率はありうるか

日銀が金融政策の一環としてマイナス金利を導入しました。

この発表を受けて国債金利が大幅に低下し、10年国債は0.1%を割ってしまいました。9年物までマイナス金利となっており、10年金利がマイナスとなる事態もあながち荒唐無稽とは言えない状況になってきています。

さて、このマイナス金利の保険会社への影響といえば標準利率がどうなるかということでしょうが、そもそも標準利率がマイナスになることはあるのでしょうか。

標準利率の決定プロセスは以下のようになっています。

  • 対象利率を決定する。
  • 対象利率に安全率係数を適用し、基準利率を決定する。
  • 基準利率と現在の標準利率を比較し、一定以上の乖離があった場合は標準利率を変更する。

最初の「対象利率」については、平準払の保険については、10年国債金利の応募者利回りの3年平均と10年平均のいずれか低い方とされています。一時払の保険については、財務省が公表する流通利回り(10年、あるいは10年と20年の平均)の直近3ヶ月平均と直近1年平均のいずれか低い方とされています。いずれにしろ、この平均を計算する段階ではマイナスがあり得ます。

次に基準利率の計算は、対象利率を区分した上で、以下の安全率係数を掛けます。

対象利率 安全率係数
0%を超え、1.0%以下の部分 0.9
1.0%を超え、2.0%以下の部分 0.75
2.0%を超え、4.0%以下の部分 0.5
4.0%を超える部分 0.25

この基準利率を計算する段階でマイナス金利部分には安全率係数が存在しないため、マイナスの基準利率は生じない、ということになります。したがってマイナスの標準利率は(少なくとも現行法令上は)あり得ないということになります。

さて、それでは標準利率がゼロという状態はあり得るでしょうか。これは起こりえます。

上のとおり計算された基準利率と現在の標準利率が0.5%以上乖離しているとき(一時払保険の場合は0.25%以上乖離しているとき)は標準利率が改定されますが、標準利率は0.25%単位で決定されるため、基準利率が0.125%を下回るときには改定後の標準利率が0%となってしまいます。上の安全率係数から逆算すると、対象利率が0.13888....%を下回ると、標準率が0%ということになります。

現在の10年国債金利は0.02%。対象利率は一定期間の平均をもとに計算するため、このことが直ちに標準利率の改定となるわけではありませんが、少なくとも標準利率0%というのがまったくの絵空事とは言えないような環境になってしまっています。

(2016.2.11追記)

「対象利率区分に金利がマイナスのときの安全率係数が設定されていないから、対象利率がマイナスのときには基準利率は定義できないのでは」という意見がちらほら見られるので補足です。

基準利率は対象利率を「0%を超え、1.0%以下の部分」「1.0%を超え、2.0%以下の部分」「2.0%を超え、4.0%以下の部分」「4.0%を超える部分」というそれぞれの「部分」に分けて安全率係数を適用するので、対象利率がマイナスの場合はいずれの「部分」もゼロということになり、結果として基準利率はゼロである、というのが自然な解釈ではないでしょうか。そもそも「対象利率がマイナスのときには基準利率は定義できない」のだとすると、対象利率区分が「0%を超え」るところからしか始まっていないため、対象利率がゼロのときの基準利率も定義できない理屈になりますが、これは直感的におかしいでしょう。

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コメント

長期金利がマイナスになる直前の、まさにこのタイミングでとは!

ご高承の通り、某ブログから追放処分を受け、Twitterで激しい批判を受けているものです。(こちらのブログは隙がないので、変なコメントはしないと思います)

巷では、3月の長期国債応募利回りがマイナスとなり、意見書の取扱が議論になってるようですが、こちらのネタは取り上げないでしょうか?

今、リスク管理を考える さん
意見書については、ネタとして取り上げようにも情報が出てきていないですからね。実務基準改正のパブコメもありませんし。

コメントありがとうございます。標準利率告示も特段改定があったわけではなく、マイナス金利に対応してそれをどう解釈・執行するかという意味では、取り上げられた標準利率の設定も意見書も本質的な違いがないとの気もしますが、いずれにしても仰るご説明、よくわかります。単なるドーズ・レスポンス的なコメントで失礼しました。

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