« 令和の官報第1号 | トップページ | 標準利率の改定 »

2019年8月21日 (水)

無選択失効取消

ソニー生命が興味深い制度を発表されました。

と思ったら、ひまわり生命がもうすでに導入していたんですね。

リリースを見る限り両社の制度はほぼ同じで、

  • 猶予期間満了の翌月末まで失効取消が可能
  • 失効取消期間内(つまり猶予期間満了後)に発生した保険事故についても支払対象
  • 既契約にも遡及適用

ということのようです。

通常、猶予期間が満了して失効した場合に保障を継続するには「復活」という手続きになりますが、復活の場合にはその時点で再度健康状態の診査が必要になるのに対し、この「失効取消」はそのような診査は不要とされています。(失効取消期間も満了した場合には復活手続きをとることとなる)

この制度、上述のとおりひまわり生命は導入済み、ソニー生命は9月1日以降に失効した契約から導入されるそうです。

さてこういった保険料が払われていない契約の責任準備金の取り扱いですが、保険業法施行規則の規定によって未収保険料を資産計上することができず、負債である責任準備金(未経過保険料)を減額することになります。

保険業法施行規則第69条第3項
決算期までに収入されなかった保険料は、貸借対照表の資産の部に計上してはならない。

しかし、猶予期間満了前の契約については保障はしているので、その保障分に対応する危険保険料に関して責任準備金を積み立てることが必要になります。これを「限度積立」といいます。

保険業法施行規則第69条第2項
決算期以前に保険料が収入されなかった当該決算期において有効に成立している保険契約のうち、当該決算期から当該保険契約が効力を失う日までの間に保険料の収入が見込めないものについては、当該決算期から当該保険契約が効力を失う日までの間における死亡保険金等(死亡又は法第3条第4項第2号イからホまでに掲げる事由に関し支払う保険金をいう。)の支払のために必要なものとして計算した金額は、前項第2号の未経過保険料として積み立てるものとする。

今回の失効取消は猶予期間満了の翌月になっても保障をします、というものなので、その部分に関しても限度積立が追加で必要になりますね。

…というより、この「失効取消」って猶予期間の延長なのでは?

そう思ってひまわり生命の約款を見たのですが、どうも猶予期間に関する約款上の規定は変わっていないようなのです(例えば、月払であれば猶予期間は「払込期月の翌月初日から末日まで」となっており、他社と同じです)。したがって、保険料が払い込まれなくなった場合、

猶予期間
→失効取消可能期間(猶予期間の翌月末まで)
→復活可能期間(猶予期間満了から3年以内)

という経過をたどると思われます。

では、この「失効取消」というのはどういう意味を持つのでしょうか?

失効と復活に関して、山下友信『保険法』には以下のとおり書かれています。

復活は、上記の損害保険における未払分割保険料の払込による保険休止状態の解消とは異なり、いったんは消滅した保険契約の効力を再び発生させるものであることから、復活に際しては告知義務による危険選択があり保険者の承諾が要件とされる。したがって、元の保険契約とは別個の保険契約が成立すると考えてもよさそうであるが、復活が承諾される限りで元の保険契約が継続していたのと同じ状態で保険契約が継続していくので、たとえば、元の保険契約における無効、取消、解除事由などの瑕疵は復活後の保険契約にそのまま引き継がれるとされる。このことから、学説は、復活は、失効した保険契約の消滅の効力を失わせて契約失効前の状態を回復させることを目的とする特殊な契約であるとし、失効についても、失効により保険契約は完全に消滅するのではなく、復活の成立を解除条件として消滅しているという説明をしてきた。しかし、自殺免責期間については元の保険契約の責任開始時から計算するのではなく、復活時から改めて計算するという約定がおかれるのが通例であり、契約失効前の状態を回復するという原則が一貫されているわけではない。(P352)

失効が「復活の成立を解除条件とした消滅」であるならば、失効取消可能期間は復活の成立を条件としないため、従来の意味での「失効」とは違ったものだ、という解釈もできそうです。そして失効取消を行うことによって単純に元の保険契約の保障内容での給付を受けることが可能であるとすると、やはりそれは猶予期間と何ら変わらないように思われます。何か他の法的性質の違いがあるのでしょうか…?

ところでソニー生命は以前、「保険料を払い込まずに失効したのは消費者契約法に反し無効」と主張する訴訟を提起されたことがあります(最高裁でソニー生命勝訴)。この件については私も以前にブログエントリをあげました。この最高裁判決では反対意見があり、保険料未納に関する督促について意見が出されています。このとき、私はこう書きました。

あとはまあ、猶予期間を多少延長することも考えられなくはないですが、例えば猶予期間を2ヶ月にすると、3ヶ月分の保険料の払い込みが必要になります。つまり猶予期間を延ばしても、後で払い込む負担が大きくなるだけの話なので、それによって大きく改善することはないように思います。

このときはそう思っていたのですが、今回の失効取消制度の導入により、実質的に猶予期間を延長する取扱いを導入したということですよねえ。

まずはソニー生命の9月1日以降の約款がこの部分に関して変更されるのかが注目です。そして、この制度が他の各社にも広がっていくのかも要注目ですね。

 

« 令和の官報第1号 | トップページ | 標準利率の改定 »

アクチュアリー」カテゴリの記事

保険」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 令和の官報第1号 | トップページ | 標準利率の改定 »

フォト
無料ブログはココログ
2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック