新型コロナウイルス関連の動き(2020年度第1四半期)
生命保険各社から、2020年度第1四半期報告が公表されています。
- コロナ禍で細る収益源 大手生保の4~6月期、新規が急減(2020年8月12日 日本経済新聞)
- 生保9社すべてが減収 コロナで営業自粛響く 4~6月(2020年8月13日 朝日新聞デジタル)
報道では緊急事態宣言に伴う営業自粛によって新契約獲得が大幅に落ち込んだことを中心に取り上げられていますが、このブログでは以前のエントリで保険金の支払いに関することを取り上げましたので、そちらを追ってみることにしましょう。
この第1四半期で新型コロナウイルス感染症に関する保険金や給付金の支払いがどれくらいあったかをいくつかの会社が公表していますので、以下にまとめてみました(いずれもグループ内の国内会社のみ)。
日本生命グループ | 第一生命グループ | 明治安田生命グループ | 合計 | |
死亡保険金(件数) | 約100件 | 55件 | 48件 | 約200件 |
死亡保険金(金額) | 約14.8億円 | 約3.8億円 | 約2.7億円 | 約21.3億円 |
入院給付金(件数) | 約620件 | 520件 | 372件 | 約1,500件 |
入院給付金(金額) | 約1.2億円 | 約0.7億円 | 約1.0億円 | 約2.9億円 |
新型コロナウイルス感染症に関する支払状況を公表していたのは私の見た限りではこの3社(3グループ)だけでしたが、いずれも収支への影響は限定的、といってよさそうです。
さて、以前のエントリでも書いたとおり、多くの会社が今回の新型コロナウイルス感染症による死亡を災害死亡保険金の対象とするように災害死亡関係の特約の約款を改定しました。通常であれば「どのようなときに保険金が支払われるか」は契約したときに決定され、契約後に変更されることはありません。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症に関する災害死亡保険金の支払いについては、既存の契約にも遡及適用されました。保険料は変更されていませんから、この「新型コロナウイルス感染症による災害死亡」は、保険料を設定した時点では想定されていなかったものです。アクチュアリー的にはこの部分の金額がどれだけあったのかが気になるところなのですが、それを開示しているのは明治安田生命だけでした(2020年4~6月で9件、約0.2億円)。
まあ、災害死亡保険金かどうかは業界アクチュアリーのマニアックな興味に過ぎないのですが、新型コロナウイルス感染症に関して保険金や給付金がちゃんと支払われたということは、契約者や被保険者の経済的サポートがきちんと行われたということでもあるので、開示する会社がもっと増えればいいのに、と思います。
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