金融庁が日本のIAIGsを公表
昨日、金融庁が「IAIGs等向けモニタリングレポート」を公表し、その中で日本のIAIGsとして該当する会社を指定しました。
IAIGsとは「国際的に活動する保険グループ(Internationally Active Insurance Groups)」のことです。銀行には国際的な監督規制としていわゆるバーゼル規制がありますが、保険については国ごとに規制を行うことが主であり、複数の国をまたいだグローバルな規制はあまり行われていませんでした。しかし近年、保険業界においてもグローバルに展開する保険グループに対する規制が整備されてきており(ComFrameと呼ばれます)、その規制を適用する対象としてIAIGsというものが定義されました。
ComFrameの中ではIAIGsは次の条件を満たす保険グループとして定義されています。
- 国際的活動要件
- 3以上の国または地域で保険料が計上されており、かつ
- 本国外のグロス収入保険料が、グループ合計のグロス収入保険料の10%以上あること
- 規模要件
- 総資産が500億米ドル以上、または
- グロス収入保険料が100億米ドル以上
そして、この要件を満たす保険グループとして、日本では以下の4グループが指定されました。
- 第一生命グループ
- 東京海上グループ
- MS&ADグループ
- SOMPOグループ
ComFrameでのIAIGsの要件は以前から公表されていたので上記の4グループが該当することはわかっていたのですが、上記の要件を満たさない場合でもIAIGsとする、あるいは上記の要件を満たしてもIAIGsとしない、という裁量権を監督当局が持つ旨が規定されていたため、上記4グループがIAIGsとなるかどうかは確定したものではありませんでした。それが今回確定した、ということになります。(ちなみに、IAIGsの指定は随時見直されますので、永続的にこの4グループだけ、というわけではありません。)
さて、IAIGsに指定されると何があるのか、ですが、まずはICS(Insurance Capital Standard)という資本規制がかかります。とは言っても、現在のICSはモニタリング期間(いわば試行期間)と位置付けられており、2024年までは資本が規制水準を下回ったとしても監督上の措置はとられません。しかし金融庁への報告義務はあるので、日本のローカルな資本規制(つまりソルベンシー・マージン基準)とは別に、ICSベースでの資本計算やリスク計算などの対応を行う必要があります。また、金融庁は金融庁で日本のソルベンシー・マージン基準を経済価値ベースにバージョンアップすることを検討しているので、それへの対応も進めないといけません。つまり、IAIGsは
- 現行のソルベンシー・マージン基準(日本のローカルな資本規制)→やらなきゃいけない(報告しなければならないし、監督措置もある)
- ICS(国際的な資本規制)→やらなきゃいけない(監督措置はしばらくないが、報告しなければならない)
- 経済価値ベースのソルベンシー規制(日本のローカルな資本規制)→2025年までにやらなきゃいけない
ということで、3つの資本規制に対応する必要が出てきています。なお最後の「経済価値ベースのソルベンシー規制」については金融庁にまとめページがあります。
ComFrameとICSについてはこちら。
また金融庁からは、IAIGsの指定と合わせて、グループベースの統合リスク管理に関するセクションを新設した「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案が公表されていますね。
今後、日本の経済価値ベースのソルベンシー規制の検討がどのように進むのか、またICSがモニタリング期間中にどのような見直しがなされるのかについては引き続き要注目ですね。
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