映画・テレビ

2016年12月30日 (金)

今年観た映画(私的)ランキング

ここ数年、わりとこまめに映画を観るようにしています。今年は48本の作品を劇場で観ました。(複数回観ているものがあるので、劇場に足を運んだ回数はそれより多いですが)

で、年末でもあり、備忘を込めて、個人的な年間ランキングです。ランキングといっても、作品の良し悪しについて云々できるほどの映画眼もありませんので、多分に個人の感覚によるものです。そもそも今もこのランキングを眺めながら「こっちのほうが上位じゃないか…」みたいなことを悩み出していたりもするのですが、きりがなさそうなので暫定版ということで。

  1. シン・ゴジラ
  2. 映画 聲の形
  3. 海よりもまだ深く
  4. この世界の片隅に
  5. ちはやふる 下の句
  6. オデッセイ
  7. 永い言い訳
  8. ガールズ&パンツァー 劇場版
  9. ヒトラーの忘れもの
  10. 君の名は。
  11. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
  12. ハドソン川の奇跡
  13. マネー・ショート 華麗なる大逆転
  14. 64 ロクヨン 前編
  15. ブリッジ・オブ・スパイ
  16. スポットライト 世紀のスクープ
  17. ヤクザと憲法
  18. 湯を沸かすほどの熱い愛
  19. ちはやふる 上の句
  20. 機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起
  21. アイアムアヒーロー
  22. 何者
  23. 奇蹟がくれた数式
  24. 劇場版 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ
  25. ズートピア
  26. 怒り
  27. 葛城事件
  28. 高慢と偏見とゾンビ
  29. 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜
  30. ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
  31. 完全なるチェックメイト
  32. 帰ってきたヒトラー
  33. クリーピー 偽りの隣人
  34. マネーモンスター
  35. 二重生活
  36. 聖の青春
  37. ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
  38. インデペンデンス・デイ:リサージェンス
  39. エクス・マキナ
  40. X-MEN:アポカリプス
  41. さらば あぶない刑事
  42. ピンクとグレー
  43. 四月は君の嘘
  44. アズミ・ハルコは行方不明
  45. バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
  46. 蜜のあわれ
  47. 64 ロクヨン 後編
  48. 超高速!参勤交代 リターンズ

今年は、原作を知っている/知らない で、映画を観た時の感想が大きく違いそうな作品がいくつかみられました。例えば「聲の形」、「この世界の片隅に」、「何者」などはそんな印象を持っています。先入観が入ると楽しめないだろうと考え、私はなるべく原作を知らない状態で観るようにしていたのですが、原作を知った上で観ることによってまた異なった楽しみ方ができる、というのは新たな発見でした。

来年も素晴らしい作品に数多く出逢えますように。

2016年8月15日 (月)

シン・ゴジラにおける生保保険金支払い(ネタバレ全開)

大評判の映画「シン・ゴジラ」、観に行ってきました。いやーすごいです。ここんとこずっと頭の中でこの映画の音楽が流れっぱなしです。

で、このブログであれば当然「ゴジラによる被害に伴う保険会社の保険金支払いはどの程度になるか?」ということをエントリにしたくなります。

これはとりもなおさず「ゴジラがどのように暴れ回るか」を明らかにすることですので、ネタバレ全開です。まだ観ていない方は観てからこのエントリを読んでください。

第1形態

ゴジラ(ここではまだ「巨大不明生物」)のしっぽが東京湾アクアライン付近に現れる場面です。アクアラインで崩落事故が発生しますが、大河内首相が「死者は出ていないんだろう?」ということから、人的被害は軽微であることが分かります。災害入院給付が多少あるかもしれませんが、とりあえず金額軽微とします。海上保安官に重軽傷者が出ていますが、これは職務上の傷病のため民間保険会社の出番はないものとしましょう。

第2形態~第3形態

ゴジラ(ここでもまだ「巨大不明生物」)が多摩川に入り、呑川を遡上して蒲田から上陸、品川まで行ったところで急に東京湾に戻るまでです。この上陸に関しては翌日のニュースで「死者・行方不明者は100人を超え」たと報じられていますので、死者100名とします。

生命保険協会の統計によれば、2015年3月末保有契約ベースでの東京都の平均保険金額(個人保険)は619.4万円。ただし、1人で複数加入しているケースがあります。2015年3月末の東京都の保有契約数が1,730万件であるのに対して、2014年10月末の東京都の人口は1,339万人であるため、おおむね1人あたり1.3件加入していることになります。この分を考慮すると、東京都の人口1人あたりの保険金額は約800万円。したがって100人だと約8億円となります。

上記は個人保険の金額なので、団体保険を加えます。団体保険に関しては、東京都は被保険者数178百万人に対して保有保険金額が252.6兆円なので、1件あたり約140万円。団体保険の重複加入は考えにくいのでこれの100人分として1.4億円。

ここまで災害関係の特約が含まれていませんので、その金額を加味する必要があります。2015年3月末時点での個人保険保有契約(全国)は857兆円、それに対する災害死亡保障の金額は148兆円(災害保障特約+災害割増特約+傷害特約)、したがって個人保険の保険金1あたりの災害死亡保険金額は0.17となります。つまり上記の8億円の0.17倍で、災害死亡保険金額は約1.4億円となります。

次に災害入院保障です。災害入院者数は死亡者数の1.5倍程度、入院日数は10日と見積もってみます。1件あたりの災害入院日額は約6,000円ですので、災害入院による給付金支払見積額は1,200万円程度となります。

以上を合計すると、ここでの支払総額は約11億円ということになります。

第4形態

さて、ここから先はケタが変わります。とりあえず、鎌倉上陸から都心部へ向うまでは避難がそれなりになされ、人的被害は軽微とします。

被害が大規模に発生するのはやはり熱焔と熱線の放出からでしょう。ゴジラは東京駅近くで活動を停止しますが、それまでの熱焔と熱線の放出によって、新橋、虎ノ門、永田町、銀座(少なくとも4丁目)が火の海と化します。東京駅を中心に半径2km以内に致命的な被害が生じるものとします。区でいえば千代田区・港区・中央区にわたります。

これらは特に人の集まる地域であるため、人口比では、実際の面積よりも多めに、千代田区の7割、港区の5割、中央区の9割が被害を受けるとします。ここで被害想定は実際の人口ではなく昼間人口を用いるべきです。少し古いですが、東京都については平成22年(2010年)の区別昼間人口のデータがあり、

  • 千代田区:819,247人(夜間人口47,115人)
  • 港区:886,173人(夜間人口205,131人)
  • 中央区:605,926人(夜間人口122,762人)

となっています。この昼間人口の半分がすでに避難していたとしても、被害対象者総数は78万人となります。この半数が生存していたとして死亡者は39万人。保険金支払額は約4.2兆円となります。2015年度中の業界全体の死亡保険金支払額(災害保険金を含む)が約2.9兆円と比べてみるとその金額の大きさが分かります。

もうこれ以上は計算しませんが、上記の試算ではまだ足りません。被災地域にいて生き残った残りの半数に対する入院給付が発生します。特にゴジラは放射線を発するため、急性放射線障害の発生により治療が長引くことも考えられます(映画では半減期が20日程度であることが判明する場面が出てきますが、そこは今後の除染等への影響であって、急性被爆の影響が小さいことにはなりませんからね)。


さて、ゴジラによる保険金支払の想定をざっくりとしてみました。ここまでで想定していない被害想定として、次のような運用面への影響があります。

  • 投資用不動産の損害(被災地域はオフィス地域であり、生命保険会社の持ちビルも多数あると思いますので、これらの賃料収入の喪失と修復費用が大規模に発生します。一方で東京地域以外の不動産価格が上昇していることがほのめかされてもいます)
  • 経済環境の影響(劇中でも国債や為替が暴落しているというセリフが出てきます。国債価格の下落は生保の経済価値的にはプラスかもしれませんが、その前にバランスシートの傷みが大変なことになります)

そして何より、被災地域には生命保険会社の本社が集中しています。その意味では、そもそも本社が機能を喪失した状態で保険金支払ができるのか、というBCP的観点が最も重要ですね。

最近「エマージング・リスク」ということがたびたび言われます。現在は起こることが思いもつかないが、起こる可能性がある事象で、ひとたび起こると大きな影響があるリスクのことであり、要するに「想定外を想定せよ」ということです。さすがにゴジラが東京を襲うことを想定するのは荒唐無稽に過ぎますが、こういった作品をきっかけにしてリスクのヒントにする、というのはあり得ると思うのですが、いかがでしょうか。

2015年3月10日 (火)

映画「アメリカン・スナイパー」

映画評サイトというのは、合う合わないということもあって、参考にするということは少ないです。しかし、評者に同意するかどうかは別にしてもついつい見てしまうという映画評サイトがいくつかあります。

個人的には毎年「この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞」(誰映)を主宰している破壊屋さんのサイトが大好きですが、「前田有一の超映画批評」もよく見ます。残念ながら前田氏の評価と意見が合うことはあまり多くないのですが、この「アメリカン・スナイパー」で100点満点をつけていたのはまったく同意です。

本作は実在のスナイパー、クリス・カイルの実話を元にした作品です。彼はスナイパーとして米国随一の実績を残し、「伝説」と呼ばれるのですが、実話が元になっていることもあり、この映画はいわゆるヒーロー物とは一線を画しています。何よりも作中で「伝説(レジェンド)」がクリスを揶揄する言葉としてしばしば出てくるのです。

クリスは米国海軍の特殊部隊であるSEALSの隊員です。SEALSはその名称の中に"SEa" "Air" "Land"が含まれるとおり、海軍所属でありながら陸・海・空なんでもこなします。実際、映画の中では海軍らしい活躍場面は何一つ出てくることはなく、クリスが活躍するのはもっぱら地上戦であり、近くの建物の屋上から物陰のテロリストを狙撃することによって仲間を援護します。ただしそれだけでなく、突入に参加することもしばしばです。

しかし、狙撃する(狙う)ということは狙われることと表裏一体です。狙撃実績に優れたクリスは、テロリストから賞金首をかけられ、狙われる立場になります。そしてそのことは精神的に過剰な負荷を生み、米国に戻ってきて家族と生活する中でも歪みとして現れます。テキサス男として育てられたクリスは、父から「世の中には羊と狼と番犬がいる。お前たちは羊を狼から守るヒーローたる番犬となれ」と聞かされて育つのですが、彼は自分が誇りある番犬になれたのかに苦悩します。そして、彼は同じように歪みを抱えた元軍人を支援する活動を行いますが、最後にはその活動が悲しい結末を引き起こします。

これまでは米国の戦争映画と言えば、太平洋戦争あるいはベトナム戦争が主な題材でした。これらの戦争を経験した人もまだ多くいますが、少なくとも私にとっては「歴史上の出来事」でしかありませんでした。それに対し、この「アメリカン・スナイパー」は9.11同時多発テロ事件を契機としたイラク戦争が主な場面であり、歴史上の出来事のように感じられた「戦争」というものが未だに身近で起こっている(そしてそれはベトナム戦争の泥沼ぶりを繰り返しているようにしか思えない)という事実が、何とも言えないやるせなさを感じさせるものでした。

軍人であるクリス・カイル本人が述べた内容を原作とするため、これは反戦映画ではないのでしょう。しかし、多くの関係者にとって記憶が新しすぎるためか、演出については非常に抑制された印象を受けます(特にラストシーンとエンドロール)。そのことが逆にとても強い「反戦」の印象を残すように感じられました。

いい映画です、おすすめです、でも、2回観るのはつらい。そんな映画です。

原作の文庫版です。もともと「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」という書名で単行本が出ていたのを、文庫版で改題したものです。本文は基本的にクリス本人によるものですが、ところどころにクリスの妻タヤの述べた部分が挿入されており、戦地にいる者とその家族との意識のすれ違いを見ることができます。

2014年12月28日 (日)

映画「寄生獣」

Wikipediaのエントリ以上のネタバレはしていないつもりです)

今さらではありますが、映画「寄生獣」を観てきました。

映画『寄生獣』公式サイト

ご存知のとおり原作は1980年代に連載されたマンガです。映画化の権利は一度ハリウッドが取得したらしいのですが、結局ハリウッドでの映画化はなされず、日本で山崎貴監督によって映画化されました。

有名マンガの実写映画化というのは残念な評判になることが多く、この作品も、前田有一氏の「超映画批評」では失敗作と評されていたりします。まあ、マンガがアニメになったときに「声が違う」と感じたりするのと同じようなもので、有名作品だとなおさら思い入れが強かったりして、想像していたイメージとの乖離を不快に感じる人が多かったりするのでしょうね。

で、マンガ「寄生獣」は私の大好きな作品の一つではありますが、映画の方はそれほどダメ評価をつける感じでもないんじゃないの、というのが私の感想です。原作は全10巻という長い話で登場人物も多く、かつ全部の話がつながっているため、これを映画として可能な長さの脚本にするのは大変だっただろうと思います。その点でうまくまとまった作品だと思います。ただ、やはり不満の残るところもあります。原作との比較を含め、いくつか感想を書いてみたいと思います。

  1. ミギーがコミカルすぎる
    これは至るところで言われていますが、声の役が阿部サダヲという時点でどうしてもコミカルな印象が拭えず、ミギーの無機質さが感じられないのは残念でした。このあたりはアニメ版のほうが雰囲気が出ています。
  2. なぜ田宮良子の父親が出てくるのか
    パラサイト田宮良子のもとに、実家から親がやってきます。このシーンは原作でもあります。
    Tamiyaryoko_mom
    ところがこのシーン、原作では母親のみが上京してくるのに対し、映画では両親が出てきます。
    でも、ここは田宮良子が「母親」というものについて考えることになる大事な場面なんですよ(「母親」はこの作品の重要なテーマで、原作でも映画でもその重要性は強調されています)。なんで父親を一緒に出して、重要なテーマをわざわざ薄めるようなことをしたのか? 謎です。
  3. 新一の母親はなぜ出て行ったのか
    映画では泉新一の家は母子家庭になっています。登場人物を絞り込んで話をうまくまとめるという意味ではよい方法だとは思ったのですが、その結果、母親が新一を刺した後、わざわざ家を出て行く理由が分からなくなってしまっています。ここは原作をなぞるのではなくて、もう少しストーリーに工夫がほしかったと思うところでした。
  4. イヌはちゃんと埋めよう
    原作「寄生獣」の中で、最も印象的なセリフの一つはこれでしょう。
    Inunokatachiwoshitaniku
    死んだ子犬をゴミ箱に捨てた時に吐くセリフです。パラサイトの無機質さと、それに感化された新一をたったこれだけで表しているのは素晴らしい。当然ながら、映画でも同じセリフが出てきます。
    しかし、原作の新一はこの後に子犬の死骸をゴミ箱から取り出し、木の根元に埋葬してやります。新一が人間としてどう行動すべきだったかを反省する大事なシーンですが、映画ではそのシーンがないので、このセリフのもつ意味が中途半端に途切れちゃってます。
と、批判ばかり書いていますが、全体としての脚本はよくまとまっていたと思いますし、特にAの役割の変化と、クライマックスの母親との対決の場面はよかったと思います。俳優陣もよかったし、完結編も観ちゃうんだろうなあ。

2013年9月22日 (日)

「半沢直樹」での金融庁検査

大人気ドラマ『半沢直樹』、本日最終回を迎えてしまいました。その意味では手遅れ感の漂うタイトルではありますが、最終回を観る限り続編フラグ立ちまくりなのでエントリ上げることにしました。

このドラマについては視聴率の高さもあって、いろいろなところで記事やコラム、ブログエントリなどが見られますがが、金融専門雑誌「金融財政事情」の今週号(2013.9.23号)でも『「半沢直樹」にみる金融庁検査の虚実』という見出しで取り上げられていました。

(2013.9.27追記:「きんざいデジマガ」にこの記事が載っているのに気付いたので、リンク張りました)

まあ、当初からTwitterの金融クラスタでは、放送と同時進行でさまざまなツッコミが入っていたのですが、週刊金融財政事情の記事はその総まとめのようなものが、しかも真面目に語られており、笑いが止まりませんでした。中でも笑ったのは、金融庁検査に関係する資料を半沢が自宅に隠し(ドラマでは「疎開」と言っています)、それを金融庁が探しに行くというシーンについての次のくだり。

現実には金融庁の検査官が銀行の職員の自宅にまで出向くことはない。完全に任意であればどうかとも思われるが、検査官に確認したところ、「そもそも自宅にいくために職員に協力を求めることすらありえない」とのことだった。

いやあ、「検査官に確認したんかい!」と、思わず声に出してツッコミ入れそうになりました(ちなみに記事にも書いていますが、この疎開という行為は「検査忌避」に相当する犯罪行為です)。

で、つい、こんなツイートを。

しかし、冷静になってみると、実際、金融庁の方々にとっては忸怩たる思いを感じるドラマのかもしれないな、と思うところがあります。

というのも、このドラマの原作である「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」の単行本が発行されたのが、それぞれ2004年と2008年。つまり、ドラマの最初は、ほぼ10年前の話なわけです。原作者の池井戸潤氏が銀行に勤務していたのはもっと前になります。当然ながら、その頃とは金融庁のスタンスも大きく違うと思われます。

特に最近、金融庁は検査に対する方針を大きく変えています。その一つの例として、従来は1年間の検査の方針を「検査基本方針」として公表していたのを、今年度からはオンサイト・オフサイト一体のものとして「金融モニタリング基本方針」として公表するようになりました。それに関する金融庁のスタンスを端的に表す言葉が、麻生金融担当相の9月13日の記者会見に現れています。(太字は引用者)

(前略)こういった問題に的確に対応していくというためには、少なくとも今までのようなモニタリングと称する実態把握とか、検査とかいろいろやっていて、「金融処分庁」とかというようなありがたくない名前も頂戴していたわけですから、そういったものを抜本的に見直して、いわゆる「金融育成庁」というような意味で、少なくとも内容を、少し基本方針の内容というものをそういった方向で考えていかないといけないのではないかということで、私共としてはああいった基本方針を発表させていただいたというのが経緯です。

ドラマ「半沢直樹」で描かれている金融庁はまさに銀行の揚げ足を取る「金融処分庁」なので、そこから脱しようとしている金融庁にとっては、このドラマは「金融庁はイヤな奴らの集まり」みたいなイメージを植え付ける存在として、どうにも微妙に感じられたかもしれません。

大蔵省時代は金融機関と監督当局のコミュニケーションがあったのですが、それはノーパンしゃぶしゃぶのような歪んだ形の部分がありました。その反動もあって、その後は金融機関と監督当局のコミュニケーションがほとんどない状態が長く続いてきました。その結果、ミスコミュニケーションから生じる認識の食い違いが、お互いに過剰な反応を引き起こしてきた面がいろいろとあったように思います。そこが最近は再び修正されつつある状況になってきているのではないでしょうか。

当局から民間に転職した人がまた金融庁に戻るという人事も最近になって発表されました。

これをもって「民間の考え方を金融庁が聞こうとしている態度の表れだ」と即断するつもりはありませんが、風向きの変化は何か感じられるように思います。

2011年10月22日 (土)

書評:ラストマネー

ドラマ「ラストマネー」もあと1話。第5話と第6話について書こうと思ったが、あんまり保険のテクニカルな話題は出てこないし、今さら
「定食屋で大声で個人情報漏らしまくり」とか、
「開催中にペーペーが乱入できる役員会議室って何?」とか、
「役員会で専務が真ん中に座ってるけど、社長はどこ行ったの?」とか、
そういうことを挙げてもしょうがないので、小説のほうを取り上げる。

この小説は「原作本」ではなく、テレビドラマ以前の主人公・向島が描かれている。ストーリーは4話。

  • ケース1 両親殺傷事件で残された二つの保険金
  • ケース2 事故か? 自殺か? 婚約者ビル転落死の真相
  • ケース3 疑惑の保険金殺人
  • ケース4 家族に残す愛の生命保険金

ケース1~3は2005年の話、ケース4は2011年の話だ。2005年…ドラマを見ている方には分かる、「あの事件」がどうやって起こったのかが語られている。

テレビドラマのほうはいろいろとネタにしてきたが、もともとドラマとしては面白いし、映像になっていない分だけ逆にアラが出てこない(ただ、調査結果を定食屋で話すシーンは出てくる)。

奥付を見ると、保険考証・法律考証・警察考証・医療考証をそれぞれ専門家が行なっていることから、生命保険についての知識を深めることにもなるのではないだろうか(少なくとも私が読んでいて取扱いに違和感を覚えるところはなかった)。

特に最後のケース4は、ここに書くとネタバレになるので書かないが、「そう来るか!」と感心してしまった。確かに普通は知らないよな…

テレビドラマを見ていてもいなくても、どちらが先でも、おもしろく(というと語弊があるのだが)読める本である。

2011年10月 9日 (日)

ラストマネー(第4話)

全7話のこのドラマ、この回で半分。物語も第1章の終わりということで、本編は大いに盛り上がっている。

が、このエントリでは相変わらず枝葉末節の話を。

第4回は告知義務違反がテーマ。清和生命の保険に加入してからわずか1週間で入院し、ステージIVの膵臓ガンと診断された山之内信夫(ただし山之内本人にはガンと伝えず、胃潰瘍と言ってある)。主人公の向島は、保険の加入時点で山之内が病気を知っていたのではないかと疑う。

疑問に思ったのは、「山之内氏はいったいどういう保険に入っているのか?」だ。

ドラマの中では、告知義務違反でなければ5000万円が支払われるような話になっている。ガンにかかったら保険金が出る、といえばガン保険だろう。三大疾病保険だったり五大疾病保険だったり七大疾病保険だったりするかもしれない。

が、これらの商品の多くは、加入から90日以内にガンと診断された場合には保険金が支払われない(これを「待ち期間」とか「不担保期間」という)。したがってそのような保険であれば、加入後たった1週間でのガン罹患による給付請求とか、査定するまでもなく不支払いとなる。

ただ、会社や商品によっては、「乳ガンだけ」加入から90日以内は支払いません、としているものもある。乳ガンはしこりの有無によって自分である程度診断できるので、ガンになったことを知った上で加入するリスクがあるためだ。ひょっとすると、清和生命の売っているのはそういう保障内容なのかもしれない。

ただそれにしても、本人がガンと知らない中でガン保険に意図的に加入するというのもおかしい。仮に入っていたとしても、山之内本人がガンと知らないのだから、請求しようがない(ドラマでは山之内の妻が、本人から給付金の請求をせっつかれている、と語るシーンがある)。

すると、胃潰瘍でも支払われるような給付、ということになるので、普通の入院給付金なのだろうか。山之内の妻も「給付金はまだでしょうか?」とわざわざ言ってるし。しかしそれでは給付金額は数十万円だ。ストーリーは別に数十万円が緊急に必要、という状況には見えなかったのだが…

結局、もっともらしいのは以下のような想定だろうか。

  • 山之内は自分が余命いくばくもないことを知った上で保険に加入した。
  • ただ、自分が死んだ時に保険金がちゃんと支払われるかどうか不安になったので、入院給付金の請求を通じて、告知義務違反がバレているかどうかを確かめることにした。

でもそもそも、死亡保険金5000万円って、告知書で加入できる金額か? ふつう、医師の診査が必要じゃないか?

うーむ、清和生命の事業方法書が見てみたい…

2011年10月 8日 (土)

ラストマネー(第3話)

さてドラマ「ラストマネー」も第3回。今回は愛人が保険金受取人になって、焼死した夫の保険金を受け取る話。

まず愛人を保険金受取人に変更できるのか。保険金受取人の変更は被保険者の同意がなければダメなのだが(保険法第45条)、今回のケースでは保険契約者=被保険者=夫、ということで、この点は問題ない。保険契約者が保険会社に保険金変更の意思表示をすれば(必要書類を提出すれば)保険金受取人の変更は成立する。

ドラマはもう一つ、契約の有無の確認の話が同時並行で進む。契約者不明、担当者不明、保険証券も存在せず、保険金受取人だけが分かっている契約を探すという話だ。

こういう話が実際にあるのかどうかは知らないが、ドラマで言っているように、保険料の横領が考えられるので、まあ調査の対象にはなるのかもしれない(たとえそうだとしても、普通は保険契約者が言ってくるものだが)。ただ、話を持ってくる先が「査定部」というのがおかしい。

保険契約は普通「入口」と「出口」がある。「入口」は保険に加入するとき、「出口」は支払請求のときの話だ。当然「査定部」は出口の部署に属するので、そのような部署に入口の問題が持ち込まれることはちょっと考えにくい。

まあともかく、主人公の向島と新人の大野は、その「入口」の状況を確認するため営業部に向かう。これがまたおかしい。

通常、契約にあたって記入した申込書は、支店(会社によっては支部とか営業部という)から、契約加入管理の部署に直接送られる。これは営業職員の手を離れた書類は契約管理事務を行う部門がチェックする(営業関係の人間を介在させない)ことで不正を防止する側面がある。通常、支店から営業部を経由するなどということはない。
ところがドラマでは、営業部の人間が机の上の書類をガサガサ探して、申込書類を出してくる。しかもそれを営業部で処理しているようなのだ。

これは…架空契約、作りたい放題ではないのか。

清和生命、大丈夫なのか…まあ大丈夫だったらドラマにならないのだが。

P.S.

ちなみに毎回、枝葉末節にしばかりツッコミを入れるのは、ミステリー仕立てのこのドラマでネタバレを避けようとすると、こういうことしか書けないからです。

(追記)

今回の話では愛人に保険金受取人を変更するところが肝腎なので、「そもそもそんなことができるのか」という疑問が出るだろう。

と思って調べてみたら、「文研保険事例研究会レポート」というものの中に、こういうのがあった。

不倫相手を保険金受取人とした指定の公序良俗違反による無効(PDF)

ドラマの中では、妻と離婚してからの受取人変更なので、公序良俗違反に問うのは難しいように思う。保険法でも、受取人変更に際して保険会社の承諾は必要とされていない。

ただしこの保険法の規定は任意規定なので、約款で制限をかけている会社があるかもしれない。

2011年9月24日 (土)

ラストマネー(第2話)

「ラストマネー」の第2話。今回は自殺免責か災害死亡か、という話。

清和生命の場合、契約してから2年以内の自殺は保険金が支払われない。今回の被保険者は、加入から17ヶ月で交通事故により死亡なので、自殺と判定されるかどうかが保険金受取人にとっては大きく違ってくる。

で、まずこの「2年以内の自殺が免責」というものだが、今となっては少々古い感がある。現在の自殺免責は3年が一般的だ。

生命保険会社は、自殺免責は長らく1年としていたが、1999年ごろに保険金取得目的と思われる自殺が増加したことから、2年、3年と延長してきた。この点については前にも述べたことがある

シナリオライターの人が、自分の保険契約を見ながら書いたのかもしれないな、などと想像してみる。

閑話休題。

ドラマの冒頭は、「保険月」の説明から始まる。新人の大野が「保険月?」と聞くところから始まるのだが、いくらなんでもこれはない。自分の会社の保険月を知らないのは、せいぜい入社1ヶ月程度だろう。(ドラマに出てくる新人が入社1ヶ月程度だとしたら、今度はお客様のところに同行させるのが非常識。)

それに、この月に査定部が支払い調査を急ぐというのはまずないだろう。不払い問題以降、支払いをないがしろにすると大変なことになる、という認識は各社が持っている。

それにしても何より変なのは、役員会(?)でいきなり「今月はノルマを3倍にします」と言い出して、しかも営業部の部長がびっくりするところ。

まず、生命保険の契約を挙げるのにはそれなりに時間がかかる。「保険月」というのを設定している会社は多く、かつその月はノルマが確かに跳ね上がるのだが、それがこなせるのも、事前に(つまり前の月から)見込み客へのアプローチをちゃんとやっているから。当月になって「ノルマ3倍にします!」とか言われてもできっこない。しかもそれを営業部の部長に知らせることなく言い出すってどうなの、と。

と、本題ではないところは少々ツッコミどころはあるものの、本筋はなかなかよかった。

なんだかんだ言いながら、来週も期待。

2011年9月23日 (金)

ラストマネー(第1話)

NHKのドラマ「ラストマネー」、第2話まで見たので、まずは第1話についてコメント。

主人公は清和生命保険株式会社の査定部特殊案件グループに勤める。査定調査に厳格なことで、部内でもやや煙たがられる存在のようだ。

第1話は自動車事故で一家全員が死亡し、保険金を夫と妻それぞれの両親が取り合うケース。同時死亡であれば妻の両親が全額、妻が先に死亡していれば夫の両親と妻の両親が等分に権利がある。

同時死亡における保険金の帰属については判例があるようだ。一方、妻が先に死亡した場合、保険法に規定がある

第46条(保険金受取人の死亡)

保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。

ということでドラマの骨格になっている法律解釈には問題ないようだ(何様)。

ところが、この第1話で非常に残念なところがある。主人公の向島が、よく依頼する調査員の如月と食事をするシーンで、如月がこういう。

オレだって保険に入ってるけどさ、ひと月の保険金が2万だろ、

アウト。

およそ保険に携わる人間で、保険料と保険金を間違える人間はいない。これは完全にダメだ。

そうは言いながら、「新版 生命保険入門」の初刷でも、表紙折り返しに「保険料不払い問題」と書いてあったりするので、よくある間違いなのかもしれないが。
(なお著者の出口氏の名誉のために言っておくと、その部分は完全に編集者が書いたもので、出口氏はノータッチだそうだ)

さて「ラストマネー」に話を戻すと、未見の方のために結末は書くのを控えるが(といいながらオフィシャルサイトのあらすじにはしっかり結末まで載っていたりする)、なかなか興味深いドラマである。とりあえず第2話のエントリに続く。

追記。

第1話の保険金の帰属については、このドラマのオフィシャルサイトの「よくある質問とお答え」にも載っていた。言及されている平成5年9月7日の最高裁判例とはこれ

一方、上で言及した、同時死亡の場合の最高裁判決の全文はこちら

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