前回に続いて、「保険業法第百十六条第二項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成八年大蔵省告示第四十八号)の一部を改正する件(案)」の内容について取り上げます。
今回、普通の保険商品とは別に標準利率を設定することになった保険(前回は「一時払終身保険」「一時払養老保険」と書いていました)は、告示(案)では「第一号保険契約」と「第二号保険契約」と書かれています。これらの定義を見てみましょう。まずは第一号保険契約から。(原文は漢数字ですが、読みにくいので適宜アラビア数字に直しています)
保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定(法第118条第1項の規定により設ける特別の勘定をいう。以下この表及び第9項において同じ。)を設けるものを除く。)であって、次に掲げる要件の全てを満たす保険契約
一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の死亡(余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む。以下この表において同じ。)又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号。以下「規則」という。)第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。)
二 その保険期間が被保険者の死亡の時又は法第3条第4項第2号イ、ロ、ニ若しくはホに掲げる事由が生じた時までとされるもの
ほぼ呪文ですね。少しずつ解読していくことにしましょう。
保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定(法第118条第1項の規定により設ける特別の勘定をいう。以下この表及び第9項において同じ。)を設けるものを除く。)であって、次に掲げる要件の全てを満たす保険契約
これは一時払保険のことを言っています。ただし変額保険は除くと。
「次に掲げる要件」のうち最初のものは非常にややこしいので後回しにして、まずは第2号のほうから。
二 その保険期間が被保険者の死亡の時又は法第3条第4項第2号イ、ロ、ニ若しくはホに掲げる事由が生じた時までとされるもの
条文にはリンクを張ったので適宜参照してください。
前者の、保険期間が「死ぬまで」というのはまさしく終身保険のことですね。法第3条第4項第2号は第三分野保険のことで、いわゆる三大疾病終身保険や重度疾病終身保険といったものを後者でカバーしています。
では、後回しにした第1号の内容。
一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の死亡(余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む。以下この表において同じ。)又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号。以下「規則」という。)第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。)
カッコが多いのが読みにくい原因の一つなので、カッコで括られた部分を消してみます。
一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険のうち、被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約
「法第3条第4項第1号に掲げる保険」というのは第三分野ではない純粋な生命保険のこと。「同項第2号に掲げる保険」というのは第三分野保険のこと。死亡または第三分野の発生事由に基づく保険が対象(つまり純粋生存保険は対象ではない)ということですね。つまり、これは「生命保険または第三分野保険で、給付要件に死亡または第三分野給付が含まれるもの」と言っていることになります。ただし、傷害死亡のみを給付要件とする保険は対象外です。
以下、カッコを復元しながら要件を確認しましょう。第三分野保険についても「同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る」とあるので、死亡給付または生存給付が必須になります。「余命が一定の期間以内であると医師により診断された身体の状態及び重度の障害に該当する状態を含む」というのは、リビングニーズと高度障害をカバーする文言。
そして対象外の要件がもう一つあります。
被保険者の死亡に関する保険金の額が保険料(保険業法施行規則第53条第1項第4号に規定する既契約の責任準備金、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てられている額(以下この表において「転換価額」という。)を含む。)の額未満のものを除く。
要は「保険料(あるいは「保険料+転換価格」)よりも保険金のほうが小さい契約は対象外」ということです。今回の告示改正案は、一時払商品について市中金利との連動性を高めるようにするものですが、保険料よりも保険金のほうが小さい契約というのは、要は契約者にとっては利回りがマイナスになる(つまり掛け捨て要素が強く出る)ため、市中金利への連動が低くても構わない、ということで対象外になっていると思われます。
まとめると、第一号保険契約というものは、
- 一時払終身保険あるいは一時払第三分野保険(ただし死亡給付が必須で、生存給付のついていないもの)で、
- 利回りがマイナスではないもの
ということになります。
次に第二号保険契約。
保険料を一時に払い込むことを内容とする保険契約(特別勘定を設けるものを除く。)であって、次の各号に掲げる保険契約のいずれかに該当するもの
一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険(同項第1号に掲げる保険に併せて引き受けるものに限る。)のうち、被保険者の生存及びその保険期間の満了前の被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約(保険期間の満了後に支払う被保険者の生存に関する保険金の額又はその保険期間の満了前に支払う被保険者の死亡に関する保険金の額(その締結の日から一定期間を経過した後保険金の額が増額又は減額されることが定められる場合にあっては、増額又は減額後の保険金の額)が保険料(転換価額を含む。次号において同じ。)の額未満のものを除く。)
二 法第3条第4項第1号に掲げる保険のうち、被保険者の生存に関して保険金を支払うことを主たる目的とする保険に係る保険契約(前号に掲げるものを除く。)であって、当該保険契約に基づき被保険者の生存に関して支払う保険金以外の金銭の支払(契約者配当(法第114条第1項に規定する契約者配当をいう。)又は社員に対する剰余金の分配及び解約による返戻金の支払を除く。)が、当該保険契約で定める被保険者の死亡に関し支払う保険金に限られ、当該保険金の額が保険料の額又は被保険者のために積み立てた金額に比して妥当なもの
こんどは「次の各号に掲げる保険契約のいずれかに該当するもの」になっているので、順番にみましょう。同じようにカッコ内を消してみます。
一 法第3条第4項第1号に掲げる保険又は同項第2号に掲げる保険のうち、被保険者の生存及びその保険期間の満了前の被保険者の死亡又は同項第2号イ、ロ、ニ及びホに掲げる事由に関し保険金を支払うことを約する保険に係る保険契約
保険金が支払われる要件が「生存」および「保険期間の満了前の死亡」または「第三分野給付」ということですね。つまり養老保険または生存給付ありの医療保険、ということになります。生存時の保険金支払には制限がないので、こども保険のように保険期間の途中で祝い金が支払われるタイプも含まれるでしょう。
カッコ内は第一号保険契約と同じです。つまり第三分野保険には死亡給付または生存給付が必須ですし、利回りがマイナスになるものは対象外です。
さてもう一つの要件に移りましょう。
二 法第3条第4項第1号に掲げる保険のうち、被保険者の生存に関して保険金を支払うことを主たる目的とする保険に係る保険契約であって、当該保険契約に基づき被保険者の生存に関して支払う保険金以外の金銭の支払が、当該保険契約で定める被保険者の死亡に関し支払う保険金に限られ、当該保険金の額が保険料の額又は被保険者のために積み立てた金額に比して妥当なもの
「主たる目的」とか「妥当なもの」とか、ずいぶんと表現があいまいですが、「妥当」を「近い」と解釈すると、
- 主に生存給付
- 生存以外は死亡給付のみ
- 死亡給付は保険料または責任準備金に近い額
ということになります。「主たる目的」と「妥当」の解釈次第ではありますが、一時払年金がこれに該当するように思われます。
まとめると、第二号保険契約というものは、
- 生存給付のある一時払保険(ただし利回りがマイナスになるもの以外)、または
- 一時払年金のように生存給付が中心で死亡給付要素が小さいもの
と考えられます。(ただ、後者は解釈がこれでいいのか、文言だけでは判断がつきません。このため、前回のエントリでは「一時払養老保険」とのみ書きました。)
次回は利率について取り上げます。
はじめまして。私はとある生保に入社し、地方勤務し始めて数年の内勤職員です。
私は普段本社の方の話を直接聞くことがほとんどなく、ぜひ本社で数理をやっている方に国内生保の経営についてお聞きしたいことが2つありまして、
1つは円安と外債配当の関係ですが、生保は外債投資にあたり元本の大部分ないし全部(住友?)にヘッジをかけていますが、配当に対してはある程度オープンであり円安はプラスだという話を記事で見ました。これは株の増配や国債の金利水準の変化に比べると些末な影響でしょうか?
2つ目は保険料収入に関してですが、私はここ数年の決算を見ていると保有・新規ともに第三分野ANPの進展は限界が近づいているのかなという気がしていますが、内部からだとまだまだ次のタマ(商品)はいくらでもあるくらいの楽観的な考えなのでしょうか?